公務員試験の専門科目は11科目に収束します。国家一般職16科目、特別区11分野、東京都の記述10科目を重ねると、共通するのは憲法から経営学までの11科目。解答するのは8科目でも、11科目そろえます。
私は大学3年の11月に勉強を始めて、翌年の春の試験で財務専門官、特別区、国家一般職に合格しました。財務専門官は総合19位で、そのまま財務局に入りました。1年3か月働いて辞めた元公務員として、専門の数え方を書きます。
専門科目を何個やればいいのかは、当時の自分にも数字で答えが出せました。各試験の選択ルールを並べて、重なっている科目を数えるだけです。2024年の改正で壊れたのは教養側であって、専門側の作りは変わっていません。10年前に自分が組んだ計画が、ここだけはまだ通用します。
そして私は、専門択一で稼げる試験を優先して受けました。教養は範囲が広くて点がぶれますが、専門は仕上げた分がそのまま出ます。記事の中ほどで人事院の公表値を使って計算していますが、財務専門官は専門択一6割・基礎能力5割・人物Cで、最終合格点を156点上回る計算になりました。
この記事でわかること
- 国家一般職16科目・特別区11分野・東京都記述10科目のリストを重ねると11科目に収束すること
- 8科目しか解答しないのに11科目を用意する理由
- 法律と経済と行政系で性質が違うこと、そして着手する順番
- 国家一般職でしか使えない科目(国際関係・心理学・教育学・英語)の扱い
- 財務専門官は11科目がそのまま乗るが、同じ日程の国税専門官は会計学が必須で別枠が要ること
選択ルールを並べる
まず、どの試験が何科目から何科目を選ばせるのかを確認します。
国家一般職は16科目から8科目、特別区は11分野から8分野、東京都の専門記述は10科目から3題。財務専門官だけ少し毛色が違って、28題が必須で、残り12題を8科目から2科目選びます。
| 試験 | 出題 | 解答 | 選択の形 |
|---|---|---|---|
| 国家一般職(行政) | 80題 | 40題 | 16科目(各5題)から8科目 |
| 特別区Ⅰ類 春試験 | 55題 | 40題 | 11分野(各5題)から8分野 |
| 東京都Ⅰ類B 一般方式 | 10題 | 3題 | 記述式。10科目から3題 |
| 財務専門官 | 76題 | 40題 | 必須2科目28題+8科目48題から2科目12題 |
| 国税専門A(法文系) | 58題 | 40題 | 必須4題+選択必須24題+選択12題 |
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国家一般職の16科目はこうなっています。政治学、行政学、憲法、行政法、民法(総則及び物権)、民法(債権、親族及び相続)、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学・経済事情、経営学、国際関係、社会学、心理学、教育学、英語(基礎)、英語(一般)。
特別区の11分野は、憲法、行政法、民法①[総則・物権]、民法②[債権・親族・相続]、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、経営学、政治学、行政学、社会学。
東京都の専門記述10科目は、憲法、行政法、民法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、会計学、経営学。
財務専門官の必須28題は「憲法・行政法」14題と「経済学・財政学・経済事情」14題です。選択できる8科目は民法・商法、統計学、政治学・社会学、会計学(簿記を含む)、経営学、英語、情報数学、情報工学。
人事院「2026年度 一般職試験(大卒程度)受験案内」12ページ別表、「財務専門官採用試験受験案内」2ページ、「国税専門官採用試験受験案内」3ページ。東京都人事委員会「令和8年度 Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」8ページ。特別区人事委員会「令和8年度 Ⅰ類採用試験案内【春試験】」5ページ。
重なりを数えると11になる
3つの科目リストを重ねます。すると特別区の11分野は、すべて国家一般職の16科目に含まれています。東京都の記述10科目も、会計学を除けば同じ顔ぶれです。
つまり、この11科目を用意すれば3つの試験に出せます。
| 科目 | 一般職 | 特別区 | 都記述 |
|---|---|---|---|
| 憲法 | ○ | ○ | ○ |
| 行政法 | ○ | ○ | ○ |
| 民法①(総則・物権) | ○ | ○ | ○ |
| 民法②(債権・親族・相続) | ○ | ○ | ○ |
| ミクロ経済学 | ○ | ○ | ○ |
| マクロ経済学 | ○ | ○ | ○ |
| 財政学 | ○ | ○ | ○ |
| 政治学 | ○ | ○ | ○ |
| 行政学 | ○ | ○ | ○ |
| 社会学 | ○ | ○ | ○ |
| 経営学 | ○ | ○ | ○ |
解答するのが8科目なら8科目でいい、という計算をよく見ます。専門科目では通りません。
ひとつは難易度の振れです。どの年も、どこかの科目で手が出ない出題が混じります。8科目ちょうどしか準備していないと、そこで逃げ場がなくなる。3科目の余裕があれば、当日に問題冊子を開いてから選べます。
もうひとつは試験ごとの構成の違いです。国家一般職の16科目には国際関係や心理学が含まれますが、特別区にはありません。逆に特別区で使う分野は一般職にも全部あります。重なりの大きい11科目に寄せるほど、併願の幅が広がります。
私は11科目を全部やりました。大学3年の11月から始めて、春の試験まで半年あったので、行政系まで手を回す時間が取れています。逆に言えば、この11科目を全部そろえるには半年近くかかるということでもあります。
- どの本をどの順で買うかは公務員試験の独学におすすめの参考書に現行版でまとめました
- 経済学だけは入り方に順番があるので、公務員試験の経済学 ミクロの前にもう一段あるに分けて書きました
- 法律科目は憲法から始めます。理由と、憲法だけ導入本を省ける話は公務員試験の憲法は導入本を省けるに書きました
- 出題数が最大の民法は10題あるので、ここを切ると残りの科目で埋めるのが苦しくなります
科目の性質で順番を決める
11科目は等価ではありません。学習にかかる時間と、点の安定しやすさが違います。
| 区分 | 科目 | 性質 |
|---|---|---|
| 法律 | 憲法、行政法、民法①② | 理解に時間がかかるが、いったん入ると安定する。憲法がいちばん軽く、民法が重い |
| 経済 | ミクロ、マクロ、財政学 | 数式に慣れるまでが壁。越えると得点源になる。財政学は経済の知識を前提にするので後ろに置く |
| 行政系 | 政治学、行政学、社会学、経営学 | 暗記中心で学習時間が短い。ただし満点は取りにくく、一定の得点で頭打ちになりやすい |
順番としては、法律と経済を先に始めて、行政系を後ろに置くのが合理的です。法律と経済は仕上がるまでの時間が読めないのに対し、行政系は短期間で一定の水準まで持っていけます。直前期に残すべきは、短時間で伸びるほうです。
優先順位をつけるなら、憲法から入ります。法律科目の中でいちばん軽く、行政法と民法の土台にもなります。
経済はミクロから。マクロはミクロの考え方を前提にする部分があります。ただし私は、いきなりミクロには入りませんでした。経済学の基礎的な考え方やツールを知らないままミクロやマクロに進むとつまずくと思ったので、手前に経済原論にあたる基礎を挟んでいます。遠回りではありますが、経済を嫌いにならずに済んだ実感はあります。
大学の講義の取り方で、法律科目はかなり楽になります。私は憲法や行政法を、公務員試験を受ける前提で意図的に履修しました。講義に出て指定教科書を読んでいる時間が、そのまま試験対策になります。3年生までに時間割を組める人は、ここを先に使ってください。3年の11月から始められたのも、法律科目の下地が講義でできていたからです。どの科目が教養枠で取れて、どこから他学部履修が要るかは大学ごとに違います。自分の大学で確かめる3点は公務員試験の専門科目は大学の講義と重なるにまとめました。
財政学は「財政学・経済事情」という科目名です。経済事情の部分は時事に近く、最新のデータが問われます。古い版の参考書だと数字がずれるので、ここだけは新しいものを使ってください。版の見極めは 過去問は人事院が公開している に分けて書きました。
専門択一で6割取ると、教養が半分でも最終合格に届く
私が専門択一で稼げる試験を優先したのは、配点が高いからだけではありません。専門のほうが再現性が高いからです。
教養は範囲が広く、点がぶれます。人文科学や自然科学は出題される分野そのものが年によって動きますし、数的推理や判断推理も、当日たまたま手が止まる問題に当たるかどうかで数問は変わります。対して専門は、憲法なら憲法の範囲が決まっていて、過去問で見た論点がそのまま出る。仕上げた分がそのまま点になります。
最高点が高いのではなく、下振れしない。専門で稼ぐというのは、そういう話です。
それが数字の上でどう効くかを、標準点の算出式に当てはめて確かめました。国家公務員試験の成績は素点ではなく、試験種目ごとの平均点と標準偏差で標準化した標準点で決まります。算式は 標準点 = 10 ×(配点比率)×(15 ×(素点 − 平均点)÷ 標準偏差 + 50) です。
| 試験 | 条件 | 標準点合計 | 最終合格点 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 財務専門官 | 基礎15/30・専門24/40・記述平均・人物C | 462 | 306 | 合格 |
| 財務専門官 | 基礎を10/30まで下げた場合 | 417 | 306 | 合格 |
| 一般職 行政(関東甲信越) | 基礎15/30・専門24/40・論文平均・人物C | 494 | 480 | 合格 |
| 一般職 行政(関東甲信越) | 同じ条件で人物をDにした場合 | 447 | 480 | 不合格 |
| 一般職 行政(北海道・東北・中国) | 同じ条件で人物D | 447 | 362〜404 | 合格 |
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財務専門官はかなり余裕があります。全種目が平均で人物Cの人の標準点が485なのに対し、最終合格点は306しかありません。基礎能力を10題(3割)まで落としても、専門択一が6割あれば届きます。
ただし、財務で効いているのは専門の1問の重さではありません。1題あたりの標準点は、専門択一が6.79点、基礎能力が9.03点。基礎能力1題のほうが3割ほど重いのが実際のところです。しかも専門択一の平均点は23.79点で、6割にあたる24点はほぼ平均ちょうど。専門で6割取っても、それ自体では差はつきません。
それでも成立するのは、最終合格点が低いからです。専門で稼ぐ意味は、点を伸ばすことよりも、崩れないことにあります。
一般職は人物試験の扱いが違うので、同じようには言えません。人物Dでも最終合格の対象には残りますが、標準点が55まで落ちるため、関東甲信越(480)や近畿(535)には届きませんでした。届いたのは北海道・東北・中国のように合格点が低い区分だけです。面接が下位でも受かるかどうかは、地域区分で変わります。地域ごとの合格点を素点に直した表は国家一般職のボーダーの記事に載せています。
出典 人事院「2026年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)合格者の決定方法」(標準点の算式・配点比率・人物試験の標準点)、PDF。同「2026年度 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)合格点及び平均点等一覧」(令和8年8月12日)、PDF。同「2026年度 財務専門官採用試験 合格点及び平均点等一覧」、PDF。標準点は小数点以下切り捨て。
特別区と東京都については、同じ検証ができません。両方とも配点比率を公表していないためです。専門択一で稼ぐ形は同じだと思っていますが、それは私の推測であって、数字で裏を取れたのは国家系だけです。
用意しない科目
11科目に入らなかったのは、国際関係、心理学、教育学、英語(基礎)、英語(一般)の5つです。
これらは国家一般職でしか使えません。特別区にも東京都の記述にもない。国家一般職が第一志望で、かつ得意な分野が含まれている場合にだけ検討する、という位置づけになります。
例外があるとすれば、英語がもともと得意な人です。国家一般職では英語(基礎)と英語(一般)で合計10題。さらに国家総合職には外部試験による加算があり、TOEFL iBT、TOEIC L&R公開テスト、IELTS、実用英語技能検定のスコアに応じて総得点に15点または25点が加算されます。すでにスコアを持っているなら、勉強せずに手に入る点です。
5科目
11科目に入らなかった科目の数
10題
国家一般職の英語(基礎+一般)の出題数
25点
国家総合職のみにある外部試験加算の上限
私は英語をやりませんでした。得意ではなかったので、その時間を他の11科目に回しています。
財務専門官と国税専門官は、同じ日に片方しか受けられない
ここは併願先を決めるときに効いてくるので、先に書いておきます。財務専門官と国税専門官の第1次試験は同じ日です。どちらか一方しか受けられません。
私は財務専門官を選びました。理由は単純で、11科目がそのまま乗るからです。財務の必須28題は「憲法・行政法」と「経済学・財政学・経済事情」で、どちらも一般職と特別区のために用意した科目です。選択する2科目も、民法・商法、政治学・社会学、経営学あたりから取れる。新しく足す科目がありません。専門記述も憲法、民法、経済学、財政学、会計学の5科目から1科目選ぶ形で、私は経済学を選びました。
国税専門A(法文系)は形が違います。58題出題・40題解答で、内訳はこうです。
- 必須問題4題。民法・商法2題、会計学(簿記を含む)2題
- 選択必須問題。民法・商法6、会計学6、憲法・行政法6、経済学6、英語6の計30題から4科目24題
- 選択問題。上で選ばなかった1科目6題に加えて、財政学6、経営学6、政治学・社会学・社会事情6、商業英語6の計30題から12題
重要なのは1行目です。会計学が必須問題に入っているため、完全に捨てることができません。当時の私は簿記を持っていませんでした(簿記2級を取ったのは合格後、4年の秋です)。会計学のために別枠の時間を作るくらいなら、必須が憲法・行政法と経済で済む財務に寄せたほうが早い。そう判断しました。
逆に、すでに簿記の知識がある人にとっては、国税は他の受験者と差がつく場所です。会計学を捨てても最終合格点は超えられる、というのが私の判断でした。
ただし、受かったあとに簿記から逃げられるとは限りません。財務専門官で採用が決まったあと、入庁までに簿記3級を取るよう言われました。私はそれが面白くなって2級まで取っています(大学4年の秋です)。国税を選んだ場合に研修でどこまで求められるかは、実際に行っていないので分かりません。
会計学を試験で捨てるかどうかと、入ってから簿記が要るかどうかは別の話です。試験の計算としては捨てて正解でも、内定後に戻ってきます。財務専門官の配点比率と、入ってからの仕事の中身は財務専門官の仕事内容を扱った記事にまとめました。
手をつける順番
専門科目は、志望先が決まらないと選べません
多くの場合、先に挙げた11科目に収束します
次に行政法とミクロ経済学
ここがいちばん時間を食います
問題集の改訂版が出るのが年末から2月なので、時期の面でもここに来ます
直前期でも間に合う側なので後ろに置く
必須問題に入っているので完全には捨てられません。11科目の外側にもう1冊増えます
専門科目を決めてから併願先を探すと、まず合いません。受ける場所を決めてから、その重なりで科目を決める。順番はこちらです。
制度全体の形は 公務員試験の全体像 2024年改正後の現在地、併願の制約は 公務員試験の併願 申し込んだ時点で消える選択肢、記述式の対策は 教養論文と専門記述 条件から逆算する書き方 にまとめています。個別の科目は 行政法は全体像から 判例とセットで覚える と 財政学は最新版で ミクロ・マクロの後に置く にあります。
科目構成は2026年度(令和8年度)実施分です。2027年度は改めて公表されます。出願前には必ず各実施機関の受験案内で確認してください。
掲載内容は人事院および各人事委員会の公表資料に基づきます。学習方法については個人の受験経験に基づくもので、合格を保証するものではありません。
