財務専門官の仕事内容を人事院の説明で読むと、国有財産、財政投融資、予算執行調査、金融機関の検査・監督などが並びます。私は2017年4月から2018年6月まで財務局にいて、配属は金融監督の系統でした。1日の時間の大半は、データの集計と決裁文書の管理に消えていました。財務専門官の枠で入り、1年3か月で辞めた元公務員の記録です。
専門を使う仕事が無かったわけではありません。金融機関の財務諸表を集計してリスクを見る作業はありました。それでも1年3か月で辞めています。
辞めた理由は、専門の仕事そのものではなく、そこに付いてくる手続きの量でした。この記事は、公式の職務説明に書かれていないその部分を書きます。
この記事でわかること
- 人事院が挙げている業務は8つで、よく見る「4つに大別」は予備校側の整理であること
- 金融監督の系統に配属されて、実際に専門を使った作業と、使わなかった作業の内訳
- 電子決裁があるのに紙も回す、押印欄を定規で区切る、といった手続きの実際
- 残業は多くて月10時間程度、転勤は若いうちに1回だがポストは関東に偏っていること
- 配点比率は専門択一が3/9で単独最大。2026年度の平均点と合格点の実数
- 第1次試験は1,032人が受けて971人が合格している(94.1%)という構造
- 採用の最後は財務局側の職場訪問で、そこで内々定と言われたこと
この記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれています。紹介しているのは私が実際に使った本か、受験案内と出版社の情報で現行版を確認した本だけです。リンクの有無で順番を変えてはいません。
財務専門官の仕事内容は、公式には8つ挙がっている
人事院のページに書かれている業務は8つで、4つではありません。
財政に関する業務が3つ。国有財産の有効活用、財政投融資資金の供給、予算執行調査。金融に関する業務が3つ。地域金融機関の検査・監督、証券取引等の監視、企業内容等の開示。このほかに、地域経済情勢の調査・分析と、財務省・金融庁の施策の広報。
検索すると「予算執行調査・国有財産・金融機関の検査監督・財政投融資の4つに大別される」という説明が何件も出てきますが、この4分類は人事院の整理ではありません。予備校や職業紹介サイト側のまとめ方です。間違いとまでは言えませんが、予算執行調査は組織としてはそこまで大きくないですし、内部的には金融か管財かという感じです。
| 区分 | 業務 |
|---|---|
| 財政 | 国有財産の有効活用 / 財政投融資資金の供給 / 予算執行調査 |
| 金融 | 地域金融機関の検査・監督 / 証券取引等の監視 / 企業内容等の開示 |
| その他 | 地域経済情勢の調査・分析 / 財務省・金融庁の施策の広報 |
私がいたのは、この表の金融の行です。出先機関を系統で数えた記事でいう財務局の、金融監督の側でした。
専門を使った作業と、使わなかった作業
先に分けて書きます。専門を使う作業はありました。時間の配分で言うと、少なかったのはそちらです。
使った側は、各金融機関の財務諸表を集めて集計し、リスクを見る作業です。そのための集計表をExcelで組むこともありました。経済学や財政学の理論をそのまま使うわけではありませんが、数字を読んで異常を見つける仕事は確かにありました。財務専門官の仕事内容として想像していたものに、いちばん近いのはここです。
使わなかった側が、文書の管理と、上司に頼まれる作業です。1日の流れを正直に書くと、上司に言われたことをやる時間が中心で、その中身の大半はデータの集計か文書の管理でした。
専門を使っていた作業
- 各金融機関の財務諸表を集計する
- 集計からリスクを分析する
- 分析用の集計表をExcelで組む
時間の大半は右側だった
専門と関係のない作業
- 決裁文書の作成と保管
- 押印をもらうために席を回る
- 上司の出張計画書を作って経理課へ持参
- 電子決裁と紙の二重運用
仕事の種類が違ったのではなく、想像していた仕事に、想像していなかった手続きが大量に付いてきました。
決裁文書の押印欄を、定規で区切っていた(2017〜2018年当時)
公式の職務説明には出てこない部分です。ここは在籍していた2017年4月から2018年6月までの話で、現在の運用とは違う可能性が高いことを先に書いておきます。理由はこの章の最後に挙げます。
当時の手続きは、だいたい次の4つに分かれていました。
作る
決裁文書をひたすら作成して、保管する
1件ごとに様式と保存年限が決まっている
印をもらう
押印欄を定規で区切り、係長全員の席を回る
印影の位置がずれていると指摘される
二重に回す
電子決裁があるのに、同じ内容の紙も並行して回す
どちらかに寄せれば半分で済む
運ぶ
上司の出張計画書を作って経理課へ持っていく
この類の用事がここに入る
個々の作業はどれも5分や10分です。ただ積み上がると1日の形が決まります。規則の面でも、効率を落としてでも手順を守る側に倒れる。私はここが合いませんでした。
この話は押印見直しより前の時期にあたります。国が行政手続の押印原則を本格的に見直したのは2020年です。同年11月に当時の規制改革担当大臣が認め印の全廃を表明し、約15,000の手続のうち実印など83を除いて押印を廃止する方針になりました。内閣府と総務省の資料では、職員が決裁で押す印も見直しの対象とされ、電子決裁システムの整備が代替手段に挙げられています。デジタル庁の発足は2021年9月です。
私が見たのは、その2年以上前の運用です。紙と電子の二重運用はすでに解消されている可能性が高い。現在どうなっているかは、官庁訪問で直接聞いてください。
「公務員は非効率」という一般論にしたいわけではありません。言えるのは、専門職試験という名前で入っても、若手のうちは専門と無関係な手続きが時間の大半を占める場合がある、ということだけです。しかも一つの局の、最初の1年3か月の話にすぎません。年数を重ねれば裁量が増えるのかもしれないし、局や課によっても違うはずです。見るには短すぎる期間でした。
残業は多くて月10時間、転勤は若いうちに1回
労働条件の面は、むしろ良いほうでした。ここも2017〜2018年当時の体感です。
10時間/月
残業が多い月でもこの程度
1回
若いうちに地方へ、という説明
3都県
配置はほぼ埼玉・東京・千葉
転勤については、子どもがいる時期などは配慮されるようです。ただ地方のポストは数が少なく、全国転勤を覚悟する試験という前提で身構える必要はありませんでした。
給与は、受験生のときに調べた印象より良いほうでした。勤務地が埼玉で地域手当が大きかったことが効いています。当時の給与明細が残っていたので、支給と控除の全項目は国家公務員の給与明細 1年目の手取りは199,135円だったに出しました。
配点は専門択一が単独で最大
試験の側に話を移します。財務専門官を選ぶ判断に直接効くのは配点比率です。
人事院が公表している配点比率は、基礎能力試験 2/9、専門試験(多肢選択式)3/9、専門試験(記述式)2/9、人物試験 2/9。専門択一が単独で最大です。
財務専門官採用試験の配点比率(9分の内訳)
専門択一だけが3で単独最大。「専門択一で稼げる試験を優先する」という受験先の選び方は、この配点に裏づけられている。
| 種目 | 配点比率 | 満点 | 基準点 | 平均点 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基礎能力試験 | 2/9 | 30 | 9 | 17.779 | 3.693 |
| 専門試験(多肢選択式) | 3/9 | 40 | 12 | 23.793 | 7.360 |
| 専門試験(記述式) | 2/9 | 100 | 30 | 51.571 | 21.160 |
| 人物試験 | 2/9 | A=172 / B=137 / C=97(標準点)。D・Eは不合格 | |||
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私がこの試験を主軸にしたのは配点が理由です。専門科目を11科目そろえたので、いちばん重い場所に積んだものがそのまま乗りました。教養が振るわなくても届きます。私が取った点数とボーダーの読み方は財務専門官のボーダーの記事に書きました。
残り2種目の読み方を2つだけ。
人物試験
C→Bで40点、B→Aで35点。合格点306点に対して1割超の幅
ただしCでも不合格にはならない。基準点を割らないことが先で、Aを狙うのは次
専門記述
平均51.571・標準偏差21.160。8割なら偏差値63台に相当
平均が5割前後まで落ちるので、1科目仕上げるだけで差がつく
私は経済学を選んで8割ほど取りました。当日の論点は無差別曲線まわりで、教材はスー過去だけです。書き方は専門記述の記事にまとめています。
第1次試験は1,032人が受けて971人が通っている
実施状況の数字を見ると、この試験で落ちる場所は第1次試験ではありません。
人事院が公表している2026年度の実施状況は、申込1,852人、第1次試験の受験者1,032人、第1次試験の合格者971人。通過率は94.1%です。そこから第2次試験を受けたのが645人で、最終合格は511人でした。
94.1%
第1次試験の通過率
3.6倍
申込者ベースの倍率
50.5%
最終合格者の女性比率
| 区分 | 人数 | うち女性 | 前段からの残り |
|---|---|---|---|
| 申込者数 | 1,852 | 888 | ー |
| 第1次試験 受験者 | 1,032 | 501 | 55.7% |
| 第1次試験 合格者 | 971 | 469 | 94.1% |
| 第2次試験 受験者 | 645 | 312 | 66.4% |
| 最終合格者 | 511 | 258 | 79.2% |
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実際に減っているのは、申込んだのに受験しない段(1,852→1,032)と、第1次に合格したのに第2次を受けない段(971→645)です。併願先が決まった人が抜けていきます。
第1次が広く通るのには理由があります。記述式を第1次試験の合格者だけに評定する仕組みだからです。第1次は多めに通して、記述と人物で絞る。「1次で大きく絞られる試験」という前提で択一だけに寄せると、配分を間違えます。
比較として国税専門官は申込9,693人・最終合格3,385人。申込者数は財務の5.2倍です。財務と国税は第1次試験が同じ日なので、どちらか片方しか受けられません。
採用の最後は財務局の職場訪問だった
最終合格は採用そのものではありません。財務局側の職場訪問があります。
職場訪問(財務局)
1回。聞かれたのは併願先の状況で、その場で内々定と言われた
試験の面接というより、来るのかどうかを確かめる場
人事院面接
面接官3人。うち1人は財務局の面接にいた人と同じだった
制度上は別の選考でも、現場では人が重なる
官庁訪問
財務省の一般職・金融庁・経済産業局・特許庁の4か所
終えた時点で財務局が1位になった
面接そのものは特別ではなく、民間の就活で受けるものと大きく違う印象はありませんでした。対策は大学のキャリアセンターで足りています(
面接の型)。
志望順位の決め方も正直に書いておきます。経済産業局は倍率が高そうで、金融庁や特許庁は忙しそうだった。きれいな志望動機ではありませんが、実際はこうやって決まりました。
2026年度は、最終合格発表の後に個人の試験結果(成績)をパーソナルレコードからダウンロードできます(9月2日から11月2日まで)。私のときは順位が書かれた紙を受け取った記憶があるので、提供の形は変わっています。自分の素点と標準点を確認できるので、併願先を決め直す材料になります。
官庁訪問の日程や、財務専門官の職場訪問との違いは官庁訪問の記事にまとめました。
入庁までに簿記3級を言われ、研修は2か月の合宿だった
受かったあとに簿記が来ます。
採用が決まってから、入庁までに簿記3級を取るよう言われました。私はそれが面白くなって2級まで取っています(大学4年の秋です)。受験当時は簿記を持っておらず、会計学は捨てていたので、順番が逆になった形です。
採用後は2か月、全国の同期と合同の合宿研修がありました。会計、法律、国有財産関連。同期は関東だけで50人くらいいました。ほかに取得を勧められたのはビジネス会計検定くらいです。
簿記
入庁までに3級を指示され、2級まで取得(大学4年の秋)
受験当時は無資格。会計学は試験では捨てていた
研修
2か月の合宿研修。会計・法律・国有財産関連
全国の同期と合同
同期
関東だけで50人くらい
ほかに勧められたのはビジネス会計検定くらい
試験の計算としては捨てて正解でも、内定後に戻ってきます。
1年3か月で辞めた 同期50人で最速だった
2017年4月に入って、2018年6月に辞めました。同期のなかでは最速でした。在職中に聞いた副業の話は国家公務員の副業はできる?2026年4月の見直しと承認の手順に書いています。
辞める前に、職場で居づらくなった時期があります。そこから1年3か月で区切りをつけました。専門知識を使って効率的に働けるのは資格職のほうだろうと考えて、公認会計士試験に移っています。
財務局を選んだ理由
- 専門択一の配点が高い試験だった
- 教養が振るわなくても届く計算が立った
選ぶ基準と辞める基準は同じ軸
財務局を辞めた理由
- 専門知識を使って効率的に働きたかった
- 実際は手続きの量のほうが合わなかった
辞めた判断そのものについては、合格した後の話に書きました。試験には受かりましたが、実務経験の年数が足りていないので、まだ公認会計士として登録はしていません。辞める判断をしているときに見えていなかったのは、合格と資格取得のあいだにもう一段あることでした。
受ける前に確かめる順番
財務専門官を志望先に入れるなら、この順番で確かめてください。
ここがいちばん大事です。財政側(国有財産・財政投融資・予算執行調査)か金融側(検査監督・証券監視・開示)かで、日々向き合う相手が変わります。職種の名前だけで決めると、入ってから比率がずれます
所管業務は調べれば出てきますが、時間の配分は聞かないと分かりません。官庁訪問がそれを聞ける唯一の機会です
必須28題は憲法・行政法と経済学・財政学・経済事情。配点のいちばん重い場所なので、ここを仕上げれば教養が弱くても届きます
平均が51.571まで落ちる種目です。1科目に絞って8割を取れば、標準点で大きく前に出られます
第1次の通過率は94.1%で、絞られるのはその後です。最終合格してから財務局側の職場訪問が残っています
最後にもう一度書きます。財務専門官の仕事内容として調べられるのは所管業務までで、時間の配分は調べても出てきません。私が受験生に戻れるなら、業務の説明を読む時間を減らして、行きたい部門を先に決めて、そこの若手が1日何をしているかを官庁訪問で聞きます。
出先機関の系統ごとの違いは 公務員の職種一覧 府省庁14・出先機関12系統を数えた、専門科目の積み方は 専門科目は11科目に収束する 併願先の重なりから決める、記述の書き方は 教養論文と専門記述の書き方、面接の型は 公務員試験の面接 配点・面接カード・集団討論 にまとめています。制度全体の形は 公務員試験の全体像 2024年改正後の現在地 から。
配点比率・平均点・実施状況は2026年度(令和8年度)の人事院公表値です。年度ごとに変わるので、受験する年の受験案内と公表資料で確認してください。在職中の経験は2017年4月から2018年6月までの1つの財務局でのもので、他の局や現在の運用を代表するものではありません。
学習方法および進路に関する記述は個人の経験に基づくもので、合格や採用を保証するものではありません。
