特別区Ⅰ類(事務)のボーダーは公表されていません。公表されているのは実施状況で、令和8年度は第1次試験を5,919人が受けて4,781人が通り、通過率は約8割でした。最終の倍率は2.5倍です。
私は2016年度に特別区を受けて最終合格しました。自己採点は教養26題、専門34題です。特別区の専門は科目ではなく問題を選んで解く形なので、11科目を用意していたことがそのまま効きました。財務専門官にも受かって財務局に入った元公務員の記録です。
特別区のボーダーは非公表。択一の「一定点」で論文の採点が決まる
特別区人事委員会は、国家一般職のような合格点を公表していません。受験案内に書かれているのは、五肢択一式(教養と専門)の成績が一定点に達しない場合、論文は採点の対象にならない、という決まりです。 国家一般職の地域別の合格点は国家一般職のボーダーにまとめました。
特別区人事委員会「令和8年度 特別区職員Ⅰ類採用試験案内【春試験】」
事務(一般事務)及び事務(ICT)は五肢択一式試験の成績が一定点に達しない場合、その他の試験は採点の対象となりません。
この「一定点」が実質的な足切りで、数字は出ていません。ネットで見かける特別区のボーダーは、予備校などが出している推定です。公式の数字ではないので、目安として見るくらいがちょうどいいと思います。
自分の位置は、試験のあとに知ることができます。第1次試験で不合格だった人は希望すれば総合得点と順位を、第2次試験まで受けた人は第1次と第2次の総合得点と順位を通知してもらえます。希望の有無は、第1次試験の解答用紙にマークします。
数字が出ない以上、目安は次の節の通過率から考えるしかありません。第1次は受験者の8割以上が通っているので、平均的な受験者が落ちる試験ではありません。私の自己採点は教養26題・専門34題で、教養は6割台、専門は8割台でした。この点数で最終合格まで進んでいるので、専門で8割前後取れていれば、筆記で止まる心配はまず要らないと思います。
特別区の倍率 令和6〜8年度の実施状況
特別区Ⅰ類(事務・一般事務)の倍率は、令和6年度から令和8年度まで2.3倍、2.4倍、2.5倍と少しずつ上がっています。ただ、どの年も第1次試験は受験者の8割以上が通っています。
| 年度 | 採用予定数 | 申込者 | 第1次受験者 | 第1次合格者 | 第2次受験者 | 最終合格者 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和8年度 | 1,039 | 6,744 | 5,919 | 4,781 | 3,527 | 2,363 | 2.5 |
| 令和7年度 | 1,095 | 6,728 | 6,080 | 5,119 | 3,950 | 2,541 | 2.4 |
| 令和6年度 | 1,312 | 7,580 | 6,868 | 6,323 | 4,965 | 3,035 | 2.3 |
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数字は特別区人事委員会が公表している各年度の「Ⅰ類採用試験【春試験】実施状況」から取りました。倍率は第1次試験の受験者を最終合格者で割ったもので、人事委員会の表と同じ出し方です。
81%
第1次の通過率(令和8年度)
67%
第2次受験者のうち最終合格
2.3倍
最終合格者 ÷ 採用予定数
令和8年度で見ると、第1次の通過率が81%、第2次を受けた人のうち最終合格したのが67%です。人数が大きく減るのは、第1次合格から第2次を受けるまでの間(4,781人から3,527人)と、第2次の面接です。第1次の段階で厳しくふるい落とされる試験ではありません。
もう一つ目を引くのは、最終合格者が採用予定数の2.3倍いることです。これは試験の倍率(受験者÷最終合格者の2.5倍)とは別の数字で、最終合格したあとに区で選ばれる段がまだあることを示しています。ここは最後の節で書きます。
私は受験当時、倍率を見て判断を変えたことはありません。考えていたのは、問題を解けるか解けないかだけでした。
特別区の択一は問題選択制。ボーダーを越えるには解ける問題を拾う
特別区の専門試験は、11分野から各5題、計55題が出て、そのうち40題を選んで解きます。科目を選ぶのではなく問題を選ぶので、分野をまたいで解けそうな問題から拾っていけます。
| 種目 | 出題と解答 | 時間 |
|---|---|---|
| 教養試験 | 48題中40題。知能分野28題は必須、知識分野は20題から12題を選ぶ | 2時間 |
| 専門試験 | 55題中40題。憲法、行政法、民法①②、ミクロ、マクロ、財政学、経営学、政治学、行政学、社会学の11分野・各5題 | 1時間30分 |
| 論文 | 課題式。2題中1題を選び、1,000字以上1,500字程度 | 1時間20分 |
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私の自己採点は教養26題、専門34題でした。専門でどの問題を選んだかは覚えていません。分野ごとに決めて解いたのではなく、ばらばらに、解けそうな問題を選んでいったからです。
この形だと、用意した科目が多いほど選べる問題が増えます。11分野を全部やっておけば、難しい問題に当たっても別の分野の易しい問題で埋められます。特別区は、専門11科目をそろえる勉強のやり方がいちばん素直に効く試験だと思います。私が特別区を受けたのも、教養も専門もこのやり方で対応できて、楽に合格できる区分だと考えたからでした。
教養の知識分野も20題から12題を選ぶ形で、自然科学が8題といちばん多く出ます。知識分野の選び方は知識科目は捨てていいかの記事、専門の科目のそろえ方は専門科目は何科目必要かの記事に書いています。
特別区の論文 形式と、採点されるための条件
特別区の論文は、80分で2題から1題を選び、1,000字以上1,500字程度で書く課題式です。採点されるのは、さきほどの五肢択一式で一定点に達した人だけです。
論文といっても、専門科目の知識を書く記述式ではありません。行政の課題について自分の考えを書く、政策論文のような、いわゆる小論文です。私が受けたときも専門記述は無く、書いたのはこの小論文だけでした。
専門試験と論文の問題は、第1次試験のあとに特別区人事委員会のホームページで公表されます。直近3年の課題は次のとおりです。
| 年度 | 課題1 | 課題2 |
|---|---|---|
| 令和8年度 | SDGs達成に向けた、特別区と様々な団体との連携による地域の課題解決 | 安全で安心なまちづくりに向けた防犯対策の強化 |
| 令和7年度 | カスタマーハラスメントの防止 | 地震に対する防災力の強化 |
| 令和6年度 | 地方行政のデジタル化 | いじめといじめによる不登校対策 |
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課題文の組み立ては、どの年もよく似ています。最初に背景が示され(たとえば令和7年度の防災は、東京都の被害想定と能登半島地震の災害関連死)、次に特別区が抱えている課題が書かれ、最後は6題とも「特別区(の)職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい(ください)」で終わります。問われているのは一般論の賛否ではなく、区の職員になったら何をするかです。
テーマも、防災・防犯・デジタル化・子どもの問題・事業者との関係と、区役所の仕事に直結するものばかりです。課題文の中に背景がかなり書かれているので、知識の量より、それを踏まえて区の職員としての取組を組み立てられるかが見られていると読めます。過去の問題は区役所や特別区自治情報・交流センターでも閲覧できます。
私が受けたときの論文は、特に変わったところのない、ふつうの課題だったと記憶しています。何が出たかまでは覚えていません。論文の準備の仕方は国家一般職や東京都と共通するところが多いので、公務員試験の論文対策の記事にまとめました。
特別区の面接 口述試験と面接カード
特別区の第2次試験は、人物と職務に関連する知識などを見る個別面接(口述試験)です。参考資料として使う面接カードは、申込みのときに入力します。受験案内の言い方は「人物及び職務に関連する知識等についての個別面接」で、人物だけでなく、特別区の仕事についての知識も見る建前になっています。
令和8年度は、第2次試験が6月29日から7月10日のうち人事委員会が指定する1日で、日時の変更はできません。最終合格は、第1次と第2次の結果を総合して判定されます。
私のときの面接も、論文と同じく、特別なことを聞かれた記憶はありません。ふつうの面接でした。面接の準備は大学のキャリアセンターで済ませています。面接カードの書き方や準備の順番は公務員試験の面接対策の記事にあります。
最終合格のあとにある、区への提示と区面接
特別区は、最終合格しても採用が決まるわけではありません。最終合格者は点数の高い順に採用候補者名簿に載り、本人の希望区を考えながら、高い順に各区へ提示されます。提示を受けた区が面接をして、内定を出します。
- 最終合格者は、試験区分ごとの採用候補者名簿に点数の高い順で載る
- 人事委員会が、希望区を考慮しながら高い順に各区へ提示する(希望どおりにならないこともある)
- 提示を受けた区が面接をし、その結果で内定を出す
- 区で選ばれなかった場合は、採用予定数の埋まり具合に応じて別の区へ提示される。提示されずに終わることもある
流れは特別区人事委員会の受験案内(令和8年度)にある図のとおりです。名簿の有効期間は原則1年で、区から合格の連絡を受けたあとに辞退するときは「名簿削除申出書」を出します。辞退した場合、ほかの区への提示を希望することはできません。
私は希望した区に提示されましたが、区面接は受けずに辞退しました。「なぜ区役所なのか」は、特別区の第2次試験の個別面接で聞かれています。国家志望だったので、区役所で働く理由を自分の言葉で持っていなかったからです。試験の形だけで特別区を選ぶと、ここで詰まります。辞退のいきさつと東京都との比べ方は都庁と特別区の比較記事に、最終的に入った財務局の話は官庁訪問の記事に書きました。
特別区の合格点(一定点)は公表されていないので、ボーダーの数字は載せていません。私が受けた2016年度の論文の課題と当時の実施状況は、公式サイトで確認できる範囲に無く、書いていません(論文の課題は令和6〜8年度、実施状況は令和3年度以降が公開されています)。試験の形式と日程は令和8年度の受験案内に基づくもので、私が受けた当時とは違う部分があります。
都庁との比べ方は 都庁と特別区どっちを受ける? 日程・採用・試験の違い、専門科目のそろえ方は 公務員試験の専門科目は何科目必要? 選び方と勉強の順番、国家一般職の合格点は 国家一般職のボーダーは何点? 地域別の合格点と必要な正答数 にまとめています。
試験の形式・日程・採用の流れは特別区人事委員会「令和8年度 特別区職員Ⅰ類採用試験案内【春試験】」、人数は同委員会「特別区職員採用試験(選考)実施状況」(令和6〜8年度)の公表値です(2026年10月13日に確認)。年度ごとに変わるため、受験する年の受験案内で確認してください。
学習方法および進路に関する記述は個人の経験に基づくもので、合格や採用を保証するものではありません。
