元公務員の私は、財務局にいた1年3か月のあいだ、国家公務員の副業は「基本的にできない」ものだと思っていました。
例外として耳に入ったのは、親から不動産などを継いだ人や馬主として馬を継いだ人が副業として続けている、という話くらいです。
その国家公務員の副業が、2026年4月から変わりました。「解禁」と書かれることが多いのですが、人事院と内閣人事局の資料を読むと、禁止が外れたのではなく、承認される事業の種類が増えた、というのが正確なところです。
この記事でわかること
- 国家公務員の副業が「解禁」ではなく「承認基準の追加」である理由
- 2026年4月から承認できるようになった2つの事業と、これまでの対象との違い
- 2017〜2018年に財務局で聞いていた副業の話
- 承認を取らずに始めたときの処分と罰則
- ブログ・動画の広告収入が認められる条件と、年20万円という目安
- 承認を取るまでの順番と、元職員が受験生に言いたいこと
国家公務員の副業は承認制のまま。増えたのは承認される事業の種類
国家公務員の副業は、2026年4月以降も承認が前提で、禁止そのものは外れていません。新しく承認の対象になったのは、「職員の有する知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」の2つです。
人事院が令和7年12月に公表した自営兼業制度の見直しでは、令和8年4月からの施行が示されました。それまでの承認対象は、農業等(家業を継承した場合のみ)、不動産等賃貸、太陽光電気の販売の3つです。ここに2つが加わりました。
| 事業の種類 | 2026年3月まで | 2026年4月から |
|---|---|---|
| 農業等 | 家業を継承した場合のみ | 変わらない |
| 不動産等賃貸 | 一定規模以上で承認が必要 | 承認が必要な規模を見直し。小規模は承認不要に |
| 太陽光電気の販売 | 一定規模以上で承認が必要 | 同上 |
| 知識・技能をいかした事業 | 対象外 | 承認基準を満たせば承認可能 |
| 社会貢献に資する事業 | 対象外 | 承認基準を満たせば承認可能 |
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ここで通説を一つ直しておきます。「国家公務員の副業が解禁された」という見出しは多いのですが、国家公務員法第103条は、営利企業の役員を兼ねることと、自分で営利企業を営むことを制限したままです。役員兼業は名義だけでも該当し、報酬の有無も問われません。自営兼業も、人事院の承認基準を満たして所轄庁の長等の承認を得たときだけ行えます(内閣人事局「国家公務員の兼業について」令和8年4月)。
財務局で聞いていた国家公務員の副業は「基本的にできない」だった
私が在職していた2017〜2018年は、副業を許可されることはまずない、と受け止めていました。許可制ではあるものの、特別な事情がない限り下りないだろう、という理解です。副業ができないことは、入庁の説明や先輩の一言で知ったのではなく、元から知っていました。
当時の私の受け止め
- 基本的に副業はできない
- 許可制だが、よほどの理由がないと下りない
- 例外は親から不動産などを継いだ人くらい
周囲で話題になった副業は例外の人だけ
2026年3月までの制度
- 自営兼業は人事院の承認基準を満たせば可能
- 対象は農業等・不動産賃貸・太陽光の3つ
- 家業の継承は、農業等では承認の条件に入っている
例外の話を聞いたのは、職場での雑談のなかです。副業は禁止だが、親から受け継いだものがある場合は許可を受ければ続けられる、という話で、不動産などの例も同じ会話で出てきました。
同期にも、副業のようなことをしている人はいました。ただ周りにはあまり知られていなかったようで、職場で話題になることはありませんでした。
国家公務員が副業を承認なしで始めたときの処分と罰則
私が「できない」と聞いていた話を制度の側から見ると、こうなります。承認を得ずに自営兼業を行うと、懲戒処分の対象になるだけでなく、刑事罰を受ける場合があります。人事院のQ&Aには、国家公務員法第109条第13号により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられることがある、と明記されています。
1年以下
拘禁刑
50万円以下
罰金
20万円超
「自営」と判断され得る年間収入の目安
3つ目の20万円は、人事院がQ&Aで示した判断の目安です。確定申告が必要になるのは、給与以外の年間所得が20万円を超える場合です。それを踏まえて、経費を引く前の事業収入が年20万円を超える見込みなら、規模の面から「自営」と判断され得る、とされています。
「少額だから届け出なくていい」とは書かれていません。規模は判断の一要素にすぎず、独立した実店舗を構えて屋号を掲げるような場合は、収入の予定を待たずに自営と判断されることもあります。さらに府省によっては、自営に当たらない場合でも事業を行う際に届出を求めています。始める前に、所属の担当に確認するのが先です。
国家公務員の副業でブログや動画の広告収入は認められるか
認められる可能性はあります。人事院のQ&Aは、ブログの投稿や動画の配信で広告収入を得る事業についても、自営の形で行うことが一概に否定されるものではない、と答えています。
承認の可否は、次の3点で判断されます。
- 官職と事業との間に、特別な利害関係またはその発生のおそれがない
- 週休日のみに行うなど、職務の遂行に支障が生じないことが明らかである
- 公務の公正性と信頼性の確保に支障が生じない
そのうえで、Q&Aは慎重さを求めています。記事や動画の一部が切り取られて短期間に拡散するおそれがあるため、承認の判断は慎重に行われる、とあります。承認されても、組織の肩書きを使ってはいけないといった制限が付くことがあります。他人や組織への中傷、公序良俗に反する内容は、当然認められません。
一方で、承認の対象として想定していないものもはっきり書かれています。アプリなどに登録して定型化されたサービスを個人で提供する形や、安く仕入れた商品に付加価値を付けずそのまま高く売る形は、今回の見直しで承認可能とする事業としては想定していない、とされています。想定されている典型例は、ハンドメイド品や絵画・写真・音楽の販売、スポーツや芸術の教室、自費出版などです。
国家公務員が副業の承認を取るまでの順番
承認は、事業を始める前に取ります。事業計画書に書く内容が決まっているので、先に自分の事業を紙に落とせるかを確かめると早いです。
自分の官職と事業の間に、特別な利害関係やその発生のおそれがないか。ここで引っかかる事業は、最初から対象になりません。迷ったら、この段階で所属の担当に相談します
原則は週休日のみです。やむを得ず勤務日に行う場合も勤務時間外で、目安は週8時間または1か月30時間、勤務日は1日3時間までとされています
経費を引く前の金額です。見込みの根拠となる資料を求められることがあります
開業届は所得税法第229条に基づくものです。事業計画書には、事業の目的と業務内容、営業日と営業時間、収入の予定年額を書きます
判断は各府省で行われます。事前に所属の担当へ相談するよう、Q&Aでも繰り返し書かれています。新しく加わった2つの事業の承認は、2年を超えない期限付きで、期限後は再承認が必要です(Q&A問17)
承認を得るまでのこの手間は、2026年4月の見直しでもなくなってはいません。新しいのは、対象になり得る事業の幅だけです。
なお、営利を目的としない団体での兼業は別の条文で、第104条に基づく許可が必要です。非営利団体での役員や事務に報酬を得て継続的に従事する場合が対象で、単発の講演や雑誌への執筆は、継続的でも定期的でもないため該当しません。
国家公務員の副業が認められても、私は辞めていた
当時から副業が認められていたとしても、私は財務局を辞めていたと思います。
副業ができなかったことは辞めた理由の一つにすぎず、元から辞めるつもりだった。そのため、認められていたかどうかで、私の結論は変わりません。 辞める手続きと転職先は国家公務員の転職に書きました。
副業ができないことは、窮屈でした。収入になる活動を大学生のときに始めていたので、報酬を受け取るだけで禁止されるのは納得しにくかったのです。副業は自分のスキルを磨く行為でもあるのに、という気持ちがありました。
辞めたあとに一番違ったのは、気持ちの面です。副業を気兼ねなくできるようになり、それだけで感じ方はまったく変わりました。
2026年4月の見直しは、意外でした。角が立つ行為は基本的に推奨されない職場だと思っていたからです。ただ、運用は慎重になりそうです。許可制だと、申請するだけで角が立ってしまうのではないか、と感じます。在職していたのは2017〜2018年なので、新しい承認基準で実際に申請が通るのかは、私には見えていません。
公務員を目指す人に、副業の観点で言えることは一つです。副業をやりたいと思うほど事業に意欲があるなら、民間のほうが向いています。2026年4月の見直しで道は開きましたが、承認制のなかで、利害関係と時間の制約を満たす形に限られます。
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制度の内容は2026年10月時点で確認した人事院・内閣人事局の資料に基づきます。承認の可否は官職・府省ごとに個別に判断されるので、申請を考えるときは所属の担当に確認してください。
体験は2017〜2018年の財務局勤務のものです。現在の運用とは異なる可能性があります。
