公務員試験の論文は、字数も時間も配点も受験案内に出ています。東京都と特別区は1,000字以上1,500字程度、国家総合職の専門記述は2題3時間で配点5/15。条件から逆算すれば、やることは絞れます。
私は特別な対策をせずに、財務専門官試験の経済学の記述で8割を取りました。平均は5割5分です。財務専門官試験を独学で通った元公務員の経験です。
論文は対策しようがない、とよく言われます。採点基準が見えないからです。それでも受験案内を読むと、字数も時間も配点も、どの順番で採点されるかまで書いてあります。
そこから逆算すると、やることはかなり絞れます。教養論文と専門記述をまとめて扱います。
この記事でわかること
- 論文と記述式の字数や時間や配点が、受験案内に公表されていること
- 東京都は教養試験が基準未達だと論文と専門記述を採点しないこと
- 必要なのは作文技術と論証法、それに頻出テーマの知識で、この順に積むこと
- 予備校の添削が前提ではない理由と、順番を間違えると効かないこと
- 専門記述は必要な科目数より1つか2つ多く用意しておく理由
この記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれています。紹介しているのは私が実際に使った本か、受験案内と出版社の情報で現行版を確認した本だけです。リンクの有無で順番を変えてはいません。
条件は公表されている
東京都と特別区の論文はどちらも1,000字以上1,500字程度、国家総合職の専門記述は2題で3時間。条件はすべて受験案内に載っています。
まず、何を何分で何字書くのかを並べます。ここを知らないまま練習すると、本番で分量が合いません。
| 試験 | 種目 | 条件 | 配点 |
|---|---|---|---|
| 国家総合職(春) | 専門試験(記述式) | 2題・3時間 | 5/15 |
| 国家総合職(春) | 政策論文試験 | 1題・2時間 | 2/15 |
| 総合職 教養区分 | 総合論文試験 | 1題・2時間30分 | 6/24 |
| 国家一般職 | 一般論文試験 | 1題・1時間 | 1/9 |
| 国税専門官 | 専門試験(記述式) | 1題・1時間20分 | 2/10 |
| 財務専門官 | 専門試験(記述式) | 1題・1時間20分 | 2/9 |
| 東京都Ⅰ類B 一般方式 | 論文(課題式) | 1題必須・1時間30分 1,000字以上1,500字程度 | 非公表 |
| 東京都Ⅰ類B 一般方式 | 専門試験(記述式) | 10題中3題選択・2時間 | 非公表 |
| 特別区Ⅰ類 春試験 | 論文(課題式) | 2題中1題選択・1時間20分 1,000字以上1,500字程度 | 非公表 |
目を引くのは国家総合職の専門記述5/15と、教養区分の総合論文6/24です。どちらもその試験でいちばん重い種目で、基礎能力試験の2倍から3倍あります。
総合職を受けるなら、択一より記述に時間を割くのが配点どおりの判断です。
東京都と特別区の論文は字数条件が同じで、1,000字以上1,500字程度。時間は東京都が1時間30分、特別区が1時間20分。ほぼ同じなので、両方を受けるなら練習は共通で足ります。
人事院「2026年度 総合職試験(春)受験案内」5〜7ページ、「一般職試験(大卒程度)受験案内」5ページ、「国税専門官採用試験受験案内」3ページ。東京都人事委員会「令和8年度 Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」7〜8ページ。特別区人事委員会「令和8年度 Ⅰ類採用試験案内【春試験】」4〜5ページ。
採点されない可能性を先に潰す
東京都は、教養試験が一定基準に達しなければ論文と専門記述を採点しません。特別区の春試験も同じ構造です。
東京都の受験案内には、配点より重要なことが書いてあります。
第1次試験の合格は全科目の総合成績で決まるが、一つでも一定基準に達しない科目があれば他がよくても不合格。さらに教養試験が一定基準に達しない場合、論文と専門試験は採点されない。
特別区の春試験も同じ構造で、五肢択一の成績が一定点に達しない場合は他の試験が採点されません。
論文と専門記述をどれだけ仕上げても、択一で基準を割ったら読まれずに終わります。
逆に言えば、論文にかける時間の上限もここで決まります。択一が安全圏に入っていない段階で論文に何十時間も注ぐのは、順番が合っていません。
この採点順を知っているかどうかで、直前期の時間配分が変わります。
論文に必要なものは3つしかない
論文は「意見を述べて議論する文章」です。目的は、読み手を納得させること。感想文でもレポートでもないので、書き方が違います。
必要な技術は、大きく分けて3種類あります。この分け方をしておくと、自分に足りないものが特定できます。
- 作文技術。一文を明快に書く力、段落を組み立てる力
- 論証法。結論が正しいことを筋道立てて示す方法
- 頻出テーマの知識。行政課題の現状と原因と打ち手
世の中の論文対策は3番目に集中しています。頻出テーマ集を読んで知識を入れる、というやり方です。
ただし1と2がないまま3だけ積むと、知識はあるのに読みにくい答案になります。知識を入れる前に、書き方を整えるほうが順番として自然です。
私は公務員試験の論文でも、まず大学受験の小論文と同じように文章の書き方から学ぶと決めました。他のサイトは知識だけの勉強をすすめていることが多かったのですが、そこから入っても頭でっかちになるだけで、文章は書けるようにならないと思ったからです。
作文技術
手本になる本があります。木下是雄『理科系の作文技術』です。理系向けに見えますが、中身は文章を書く人全員に効きます。文庫で読める『レポートの組み立て方』も同じ著者で、内容は重なります。
この本が言っていることを、論文向けに要約すると4つです。
- 必要なことは漏らさず書き、必要でないことは一つも書かない
- 事実と意見を区別する。どこまでが資料の話で、どこからが自分の主張かを分ける
- 読み手がまず知りたいことから並べる
- 一義的に読める文にする。ぼかさない。普通の言葉で、短く書く
当たり前に見えますが、時間制限のある試験でこれを守るのは難しい。だから練習する価値があります。
論証法
論証とは、自分の結論が正しいことを筋道立てて示すことです。ここを外すと、内容が合っていても点になりません。
形は決まっています。問いが「この場合どうなるか」なら、「なぜなら◯◯だから□□。さらに××だから△△。したがって◇◇」と組み立てる。前提と理由を書かずに「◇◇である」とだけ書くと、それは意見の表明であって論証ではありません。
戸田山和久『論文の教室』、野矢茂樹『論理トレーニング101題』あたりが手本になります。1冊やれば形は身につきます。
頻出テーマの知識
3つ目でようやく知識です。少子高齢化、防災、地域経済、デジタル化といったテーマについて、現状の数字、原因の構造、自治体が取り得る打ち手を持っておく。
ここで効率がいいのは、集団討論の対策と完全に重なるという点です。集団討論のテーマも行政課題から出ます。別々に準備する必要はありません。
もう一つ、志望先の政策評価を読んでおくと、論文にも面接にも使えます。「自治体名 政策評価」で公式サイトの該当ページが出ます。
書影と書誌は楽天ブックスのデータです。
添削は前提ではない
論文だけは予備校に通うべきだ、という言い方があります。私はそうは思いません。
理由は単純で、書き方を学ばないまま書いた文章を添削してもらっても、直される場所が多すぎて身につかないからです。
添削が効くとき
- 作文技術と論証法を先に入れたあと
- 自分で設定したテーマや過去問で組み立てたあと
順番を間違えると効かない
添削が無くてもできること
- 自分で書いたものを翌日に読み返す
- 論理の飛びを自分で見つける
見てもらえる環境があるなら使えばいい。ただ、なければ受からないというものではありません。順番が逆だと、赤字の量に一喜一憂して終わります。
専門記述は足切り回避から考える
専門記述に過剰な労力を割く必要はありません。東京都では択一で基準を割った時点で採点されないからです。落ちる人の多くは択一で落ちていて、記述で落ちるのはそのあとに残った層です。
私は専門記述のために特別な対策をせず、財務専門官試験の経済学の記述で8割(平均5割5分)を取りました。専門記述があるからその試験はやめよう、記述のために予備校に通おう。そこまで心配しなくていいと思います。
とはいえ無対策でいいわけでもなく、白紙や大幅な不足で基準を割ることだけは避ける必要があります。ここが対策の目標地点です。
当時の専門記述(経済学)で、私が実際に書いた答案はこういう水準です。「無差別曲線とは、等しい満足度を達成する消費計画の組み合わせである。消費者理論において原点に対して凸型の無差別曲線を考える場合、一般的に2財と単調性・推移性の仮定を置く。(中略)今、無差別曲線が交わるという仮定を加えた場合、推移性の仮定により点Aと点Bは無差別であり、同じく点Bと点Cも無差別となる。しかし、同時に点Bの消費計画は点Cの消費計画より右上に位置する事から単調性の仮定に反する事になる。こうした矛盾が生じたのは、無差別曲線が交わるという仮定を加えた事による。背理法により題意は示された。」定義づけから始めて、背理法で矛盾を示して結論に戻る。特別な知識は要らず、択一で入れた定義と論証の型を組み直しただけです。
必要な科目数より1つか2つ多く用意する
選択の条件はこうなっています。
- 東京都Ⅰ類B 一般方式は10題中3題選択。範囲は憲法、行政法、民法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、会計学、経営学
- 国税専門官は1科目選択。憲法、民法、経済学、会計学、社会学から選ぶ
- 財務専門官も1科目選択。憲法、民法、経済学、財政学、会計学から選ぶ。私はここで経済学を選びました
問題は、毎年どこかの科目で難易度の高い出題が出ることです。科目間の有利不利は得点調整である程度ならされますが、書けるものが何もなかった場合は調整以前の話になります。
だから東京都なら5科目前後、国税や財務なら2科目か3科目を用意しておく。当日に開いてみて、書ける科目を選ぶ。この余裕があるかどうかで安定感が変わります。
択一の勉強がそのまま土台になる
専門記述のために特別な勉強はほとんど要りません。択一で入れた知識を、論文の形に組み直すだけです。
作文技術と論証法は教養論文と共通。追加で必要なのは、その科目の論点を定義から順に説明できる状態にすることくらいです。
過去問を見て、聞かれ方の幅を把握しておけば足ります。
総合職だけ扱いが違う
ここまでは「記述に過剰投資しない」という話でしたが、国家総合職は例外です。専門記述が5/15で最も重く、基礎能力試験の2.5倍あります。教養区分も総合論文が6/24で最重量です。
5/15
総合職(春)専門記述の配点
2.5倍
基礎能力試験に対する専門記述の重さ
6/24
教養区分 総合論文の配点
総合職を第一志望にするなら、記述が本体で、択一が足切りという構造だと考えたほうが配点に合っています。同じ「公務員試験の論文対策」でも、総合職とそれ以外では投入すべき時間がまるで違います。
手をつける順番
とくに「基準に達しない場合は採点しない」という記述を探す
入っていないなら、論文より択一が先
ここは1週間で終わります
前提と理由を書いてから結論に行く、という型だけでも効きます
少子化、防災、デジタル化あたりは両方で使えます。片方のために別々に調べません
1,000字以上1,500字程度を1時間20分から1時間30分。時間内に収まるかを先に確かめる
当日に手が出ない論点を引く場合があります。3題選択なら4科目か5科目を持っておきます
論文は、書き方の部分が完全に技術です。センスではありません。技術である以上、短期間で上がります。
採点基準が見えないと思われている場所ほど、条件が公表されている。受験案内を読むところから始めるのが、結局いちばん早い道でした。
とはいえ、論文が得意になったという実感は最後まで持てませんでした。技術の部分は上がっても、手応えのほうは曖昧なままです。
制度全体の形は 公務員試験の全体像 2024年改正後の現在地、面接と集団討論は 公務員試験の面接 配点・面接カード・集団討論・プレゼンテーション にまとめています。
条件と配点は2026年度(令和8年度)実施分です。2027年度は改めて公表されます。出願前には必ず各実施機関の受験案内で確認してください。
掲載内容は人事院および各人事委員会の公表資料に基づきます。学習方法については個人の受験経験に基づくもので、合格を保証するものではありません。
