私は大学生のときに公認会計士を目指していません。文学部で、会計の勉強をしたことがなく、当時は難関資格というと一部の天才が受けるものというイメージがあって、文系の自分には無縁だと思っていたからです。そのうえで言えるのは、可能なかぎり大学生のうちに受かっておいたほうがいい、ということです。
この記事は、大学生のうちに受かる側のメリットとデメリットを、公認会計士・監査審査会の統計と、私の経験から書いたものです。私には大学在学中に合格した経験がありません。社会人として働きながら受けた側から、学生がどれだけ有利かを書きます。在学中に受かったあと、登録まで何年かかるかは、金融庁と会計教育研修機構の資料で数えました。
この記事でわかること
- 大学生のうちに受かったほうがいいと私が考える理由(社会人になってからの壁)
- 令和7年の合格者のうち、大学在学者の人数と合格率
- 大学生のメリット(勉強に使える時間と年齢)とデメリット(大学生活の時間、不合格だった場合の就活と休学)
- 3年次までに短答式、4年の8月に論文式、という学年ごとの動き方
- 在学中に合格したあと、実務経験・実務補習・修了考査を経て登録するまでの流れと年数
- 私が大原で払った予備校の費用(2020年目標のオータムコースで約70万円)
- 公務員試験の勉強が公認会計士試験で役に立った科目と、立たなかった科目
- 予備校各社が案内する大学生の勉強期間の目安と、働きながらだった私の勉強時間との比較
公認会計士は大学生のうちに受かったほうがいい。社会人になると勉強の環境が作りにくい
公認会計士は、可能なかぎり大学生のうちに受かっておくのが有利です。社会人になると、お金と仕事の問題が出てきて、勉強に集中できる環境を用意しにくくなるからです。
私自身は、遠回りしました。大学を出て財務省の財務局に入り、1年3か月で辞め、税理士法人を経て公認会計士試験を目指しました。
| 時期 | 立場・できごと |
|---|---|
| 大学4年の在学中(公務員試験の最終合格後、財務局に入る前) | 簿記2級を取る(会計士試験の勉強ではない) |
| 2017年4月〜2018年6月 | 財務局に勤務。2018年6月に退職 |
| 2018年7月〜2019年10月 | 税理士法人に勤務。2018年12月に公認会計士の勉強を始める |
| 2019年10月 | 税理士法人を退職 |
| 2019年12月 | 無職の状態で短答式試験を受験(合格発表は2020年1月) |
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簿記2級は、会計士試験の勉強として取ったものではありません。大学4年の在学中、公務員試験の最終合格のあとに、内定をもらった財務局から「簿記3級を取っておいてくれ」と言われ、ついでに2級まで取りました。
公認会計士の勉強を始めたのは、財務局を辞めて税理士法人に勤めているあいだです。仕事をしながらのスタートで、そのあと2019年10月に辞めて、無職の状態で短答式に臨みました。
大学生のうちに受けたほうがいいと私が考える中心の理由は、社会人として働きながら勉強して、時間と体力の確保に非常に苦労したことです。学生の「1日中勉強にフルコミットできる環境」は、圧倒的に有利だと痛感しました。大学在学中に合格した経験は私にはないので、これは働きながら受けた側から見た話です。
理由を分けると、次の3つです。
- 社会人は、平日の大半の時間と体力を仕事に奪われる。相対試験の会計士試験では、圧倒的に不利になる
- 記憶の定着や、大学で学んだ学問との関連でも、大学時代のほうがスムーズに進む
- 大学生なら、落ちても休学するという選択肢がある
公認会計士試験に合格する大学生は、令和7年で653人
令和7年の合格者1,636人のうち、大学在学(短大を含む)は653人(39.9%)です。論文式試験を受けた人に対する合格率は50.6%で、大学卒業の35.7%を上回っています。
| 学歴 | 論文式受験者 | 合格者 | 合格率(対受験者) |
|---|---|---|---|
| 大学在学(短大含む) | 1,291 | 653 | 50.6% |
| 大学卒業(短大含む) | 2,144 | 765 | 35.7% |
| 会計専門職大学院在学 | 63 | 22 | 34.9% |
| 高校卒業 | 328 | 78 | 23.8% |
横にスクロールできます。主な区分のみ
この表には注意があります。審査会の注記では、大学の「卒業」に卒業見込みの人が含まれます。大学4年生で合格した人の一部は「卒業」の側に入っているので、在学中に受かった人は、「大学在学」の653人より多い可能性があります。
50.6%と35.7%は、どちらも論文式を受けた人に対する割合です。短答式に受かった人どうしの比較なので、受験者全体の合格率ではありません。在学の人と卒業の人は母集団も違い、専念できる層の割合などが違う可能性があります。この数字だけで「在学が有利」とは言い切れません。私が大学生のうちを勧めるのは、数字よりも、働きながら受けた体験のほうからです。
合格者の年齢の分布は、公認会計士試験の合格者の年齢・学歴・職業の統計に詳しくまとめています。
公認会計士を目指す大学生のメリットは勉強に使える時間、デメリットは大学生活と不合格のリスク
メリットの核は、1日中勉強にフルコミットできる環境です。デメリットは、大学時代の時間を勉強に回すことと、落ちたときに就活とぶつかることです。
大学生のうちに受かるメリット
- 時間と体力を、仕事に取られない
- 20代半ばでスタッフとして入所できる(私の見方)
- 若いと大目に見てもらえることが多い(私の見方)
払うのは大学時代の時間
大学生のうちに受かるデメリット
- サークル、アルバイト、飲み会の時間を削って、勉強漬けになる
- 不合格だった場合、就活との両立が難しくなる
メリットは、私が働きながら受けたときの苦労の裏返しです。平日の昼間は仕事に時間と体力を取られ、勉強に回せるのは仕事のあとだけでした。会計士試験は相対試験なので、この差は合否に響くと感じました。私の1日の時間は、勉強期間の節に書いています。
年収の話は、統計ではなく私の見方です。20代半ばでスタッフとして入所すれば、30代前半でシニアマネージャーに昇進したり、独立したりすることも可能で、年収1000万円に届くのが早まる。私はそう見ています。この記事の根拠にしているのは、年収よりも時間と体力のほうです。
年齢については、私が入った監査法人の同期は20代前半が多く、20代後半も3割ほどいました。30代の同期もいて、私が最年長ではありませんでした。「スタッフは22〜30歳くらい」という感覚は、新人研修の自己紹介と、配属後のチーム内の会話から得たものです。「若いと大目に見てもらえる」も、同じ現場での私の実感です。
デメリットのうち不合格のリスクには、受け皿があります。落ちたあとに休学して、もう一度受けるために時間をとる、という選択です。私は大学を休学していないので、学費や年限など休学の中身は書きません。大学ごとの規定で決まります。
公認会計士を目指す大学生の勉強スケジュールは、3年次までに短答式、4年の8月に論文式が理想
理想は、3年次までに短答式に合格して、4年の8月に論文式を受けることです。ただし4年の夏は、卒論と一般企業の就活に時期が丸被りして、過密になります。
| 時期 | 理想の動き | 試験の日程 |
|---|---|---|
| 大学が決まった高校生のうち | 勉強を始める。ここから始めて2年か3年で合格するのが、いちばん余裕がある形 | 短答式は年2回(12月と5月)。令和9年試験は2026年12月13日と2027年5月23日 |
| 3年次まで | 短答式に合格しておく | 合格発表は、12月の回が翌年1月、5月の回が6月 |
| 4年の8月 | 論文式を受ける。卒論と一般企業の就活が重なる | 論文式は8月の3日間。令和9年試験は8月20日〜22日 |
| 4年の11月 | 論文式の合格発表を待つ | 令和9年試験の発表は11月19日 |
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8月は論文式を受ける月で、合格発表は11月です。「4年の8月に合格する」ではなく、8月に受けて11月に結果が出る形になります。短答式も同じで、私が短答式を受けたのは2019年12月、合格発表は2020年1月でした。
公認会計士試験に在学中に合格しても、登録までには実務経験3年と実務補習3年がかかる
在学中に合格しても、すぐには公認会計士になれません。実務経験3年以上、3年の実務補習、修了考査の合格がそろって、日本公認会計士協会に登録してからです。
| 必要なもの | 中身 |
|---|---|
| 実務経験(業務補助等) | 3年以上。監査法人などでの業務補助か、財務諸表の監査・分析に関する事務(実務従事)。常勤・非常勤を問わず、試験合格の前でも後でも算入できる |
| 実務補習 | 試験に合格した人が申し込む。修業年限は3年で、学年は原則11月1日から翌年10月31日。講義等270単位以上、考査10回、課題研究6回を修める |
| 修了考査 | 実務補習の内容を理解しているか確かめる筆記試験。毎年12月に2日間。令和8年度は12月12日・13日で、合格発表は翌年4月の予定 |
| 登録 | 修了考査に合格したあと、協会に申請して名簿に登録される |
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実務経験は金融庁の資格取得Q&A、実務補習は会計教育研修機構の実務補習の手引、修了考査は協会の公表資料に基づきます。実務経験が3年以上に引き上げられたのは令和5年4月1日からです。
最短の並びを、この日程から数えます。4年の11月に論文式の合格発表があり、その11月に実務補習へ入ったとします。卒業後の春から実務経験を積み始めれば、3年がたつのは卒業の3年後です。実務補習は3年後の10月末に修業年限が終わり、その12月に修了考査、翌4月に合格発表です。登録は、合格発表から約3年半、卒業から約3年後の春になる計算です。これは私の計算で、実務経験の積み始めが遅れれば、その分ずれます。
私は令和4年に合格し、実務補習は修了し、修了考査にも2025年12月に合格しました。それでも、実務経験の年数が確定しておらず、まだ登録していません。時間がかかるのは補習より実務経験のほうでした。詳しくは公認会計士試験の合格後にやることに書いています。
公認会計士の予備校費用は、私が大原で払ったのは2020年目標のオータムコースで約70万円
私が大原で払ったのは、2020年目標のオータムコース(短答式と論文式)で約70万円です。大学生としてではなく、大学を出たあと、社会人になってからの受講でした。
| 年 | コース | 費用 |
|---|---|---|
| 2020年目標 | オータムコース(短答式と論文式) | 約70万円 |
| 2021年 | 経験者論文コース(通信) | 約30万円 |
| 2022年 | 経験者論文コース(通信) | 約30万円 |
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大学生が予備校に通う場合も、70〜80万円ほどは必要になるというのが私の見方です。各校の料金を比べたわけではありません。親の支援があれば恵まれていますし、アルバイトだけで出すのはかなりきついと思います。費用は私が受講していたころのもので、今の金額は各校の案内で確かめてください。
大学時代に勉強した公務員試験の科目は、公認会計士試験で役に立つか
役に立ったのは、経営学と民法です。経済学は、選択科目に選ばなかったので、役立つ場面がありませんでした。公務員試験は大学時代に勉強したもので、それが社会人になってからの会計士試験に効いた、という私なりの実例です。
| 公務員試験の科目 | 公認会計士試験での使いどころ |
|---|---|
| 経営学 | 選択科目で使った。役に立った |
| 民法 | 必修科目には出ない(選択科目に民法はあるが、私は選ばなかった)。企業法(会社法)の基礎になった |
| 経済学 | 選択科目に選ばなかったので使っていない |
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民法は、必修科目には出てきません。論文式の選択科目(経営学・経済学・民法・統計学から1科目)には民法がありますが、私は選びませんでした。それでも会社法は民法の特別法なので、民法の勉強が企業法の土台になりました。
私は大学在学中に会計士の勉強をしていないので、在学中に受かった人の話ではありません。ただ、学生のうちに勉強した範囲が、選ばなかった科目の土台として後から効く、という点は、大学で学んだ学問との関連が大学時代のほうがスムーズだという、前述の理由と同じです。
公認会計士を目指す大学生の勉強期間は、予備校の案内で1.5〜2年
予備校各社の案内では、大学生が合格するまでの期間は1.5〜2年、1日の勉強時間は6〜8時間が目安とされています。
| 区分 | 合格までの期間 |
|---|---|
| 専念する人 | 1〜1.5年 |
| 大学生 | 1.5〜2年(1日6〜8時間) |
| 社会人 | 2〜3年 |
| 私(2018年12月〜2019年10月は税理士法人に勤めながら、その後は無職で、短答式まで) | 約1年(約1,000時間) |
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税理士法人に勤めていたあいだの勉強は、平日は予備校が終わって帰ってから2時間くらい、行きと帰りの電車で講義動画を1.5時間くらい見る形でした。予備校の授業の時間は、これとは別です。
私の場合、公認会計士の勉強を始めたのが2018年12月で、2019年12月に短答式を受けるまでが約1年、勉強時間は約1,000時間でした。2019年10月に仕事を辞めてからは、無職で専念しています。その後、論文式は3回受けて、令和4年に合格しています。間の2年は、ほとんど勉強していません。
予備校の目安は、大学生で1日6〜8時間です。私の平日は、予備校の授業とは別に、帰宅後の2時間と電車の1.5時間で、合わせて3.5時間ほどでした。授業を含めればもう少し増えますが、予備校の案内の6〜8時間に授業が入っているかは分からないので、単純に倍とは言えません。それでも、この時間を毎日勉強に回せるのが学生です。私の約1,000時間は短答式までで、目安の期間は合格までなので、並べて比べられるのは1日の時間のほうです。この差が、私が大学生のうちを勧める理由です。
それでも社会人になってから受ける場合は、公認会計士試験に働きながら受かるにはを、次の1本として読んでください。私が時間と体力をどう確保したかを書いています。
合格後にやること(実務補習・修了考査・登録)は 公認会計士試験の合格後にやること、合格者の年齢や学歴の統計は 公認会計士試験の合格者の年齢・学歴・職業の統計 にまとめています。
統計は公認会計士・監査審査会の令和7年「合格者調」に基づきます。勉強期間と勉強時間の目安は予備校各社の案内で、公的な数字ではありません。
体験は私が受験していたころのものです。私は大学在学中に合格した経験はありません。
