公務員試験の財政学には、他の科目に無い制約があります。参考書が古いと、そもそも載っていない論点から出題されます。
最新の財政事情が範囲に入るからです。だから着手できる時期が決まっていて、勉強の順番でいちばん後ろに置くことになります。
そして私にとっては、就職先を決めた科目でもあります。受験先は専門択一で稼げるかどうかで選んだのに、就職先は科目の中身で選びました。財務局で1年3か月働いた元公務員として、その選び方を書きます。
この記事でわかること
- 財政学が3つの性質の違う分野でできていること
- 参考書が改訂版でないと使えない理由と、着手できる時期
- ミクロ・マクロの後ろに置かないと暗記で詰まる理由
- 出題数は5題。それでも併願先で重なると無視できなくなる
- この科目が面白かったので、就職先を財務局にした話
この記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれています。紹介しているのは私が実際に使った本か、受験案内と出版社の情報で現行版を確認した本だけです。リンクの有無で順番を変えてはいません。
公務員試験の財政学は、3つの別な科目が同居している
財政学は1つの科目に見えて、中身は性質の違う3つの分野に分かれています。
- 前年度の予算や財政事情といった時事的な分野
- 日本の税制度や租税理論など、財政学に固有の分野
- 公共財や外部性など、経済学の各論にあたる分野
学問としての財政学は経済学の1分野で、公共経済学とほぼ同じものを指します。つまり本来は③が本体です。ところが公務員試験の財政学は、本来の財政学が扱わない①を大きく抱えているという特殊な作りになっています。
私の感覚では、5題のうち2題から3題がこの①から出ます。ただしこれは受験した当時の見立てであって、いまの出題比率を数え直したわけではありません。断定はしません。分野の構成そのものは変わっていないので、①が軽くない科目だという前提で組んで損はありません。
国家一般職での科目名が、この性質をそのまま表しています。「財政学・経済事情」です。経済事情が科目名に入っている科目は他にありません。
参考書は改訂版しか使えない。だから着手は冬以降になる
財政学は、古い参考書で勉強すると落ちます。載っていない論点から出るからです。
①の分野は前年度の予算や財政事情を扱うので、中身が毎年入れ替わります。そして私が探した範囲では、最新の財政事情まで載せている問題集はスー過去とクイマスしかありませんでした。他の科目なら版が1つ古くても困りません。この科目では成立しません。
その程度なら古い版でいいか、と思った人がいたらそれだけはやめてください。財政学だけでも予備校に金を払ったほうがまだましです。独学で勝てる科目を、版の選び方だけで落とすのは一番もったいない。
スー過去の財政学は、改訂のサイクルが他の科目と別です。実際にいまも、他の科目が新スーパー過去問ゼミ8に上がっているのに財政学だけ7のままです。間違いではないので、見つからないと思って探し回らないでください。発売時期は年末から2月あたりに寄ります。版と価格は参考書の記事にまとめています。
ここから学習計画の制約が1つ出ます。秋に勉強を始めても、財政学だけは着手できません。私は大学3年の11月に始めたので、ちょうどこれに当たりました。11月の時点で手元に置ける財政学の問題集は、本番で使えない版です。
これは困ったことではなく、むしろ順番を決めてくれる制約でした。後述のとおり財政学はミクロ・マクロの後ろに置く科目なので、最初の数か月で経済学を立ち上げておけば、改訂版が出る時期にちょうど順番が回ってきます。逆算の全体像は試験日から逆算するにあります。
逆に言えば、②の租税理論を早めにやりたいという理由だけで秋に財政学の本を買うのは馬鹿らしい。その1冊は、春にもう一度買い直すことになります。
公務員試験の財政学は、ミクロとマクロの後ろに置く
財政学はミクロ経済学とマクロ経済学を終えてから始めます。順番を逆にすると、③の分野が暗記になって崩れます。
③は公共経済学にあたる分野で、ミクロ・マクロで扱う公共部門の話を掘り下げた内容です。つまり土台のほうを先にやっていないと、結論だけ覚える形になります。財政学は暗記科目だと言われることがありますが、その理解でいけるのは②までです。
経済学そのものにも前段があります。ミクロの前に経済原論にあたる一段を挟んだ話は経済学 ミクロの前にもう一段あるに書きました。財政学から見ると、前段が2つある科目ということになります。経済原論、ミクロ、マクロ、そして財政学です。
財政学に入るまでの積み上げ
財政学から見ると前段が2つある。ここを飛ばすと、3分野のうち経済学の各論にあたる部分が暗記になる。
逆に言えば、経済学を仕上げた人にとって財政学は軽い科目です。③は既習の延長で、②は分量が少なく、残るのは①の読み込みだけになります。
この軽さをもって、財政学を楽勝科目に数える記事をよく見ます。条件つきで同意します。ミクロとマクロを終えた人には楽勝です。終えていない人にとっては、半分が意味不明な暗記で埋まる科目になります。同じ科目が、前提の有無で難易度が二段変わる。だから経済学をやらないと決めた人が財政学だけ拾う組み方は、成立しにくいと思っています(捨て科目は志望先で変わる)。
出題数は5題。それでも併願先で重なると無視できない
財政学の出題数は多くありません。国家一般職で5題、特別区で5題です。
単体で見れば小さい科目です。ただし併願先を重ねると、置かれている場所が増えます。東京都Ⅰ類Bの一般方式は専門試験が記述式で、10科目から3題を選ぶ形ですが、その10科目に財政学が入っています。国税専門官では選択問題のなかに財政学6題が置かれています。
| 試験 | 形式 | 財政学の扱い |
|---|---|---|
| 国家一般職(行政) | 択一・16科目から8科目選択 | 「財政学・経済事情」で5題 |
| 特別区Ⅰ類(春・事務) | 択一・11分野55題から40題選択 | 1分野5題 |
| 東京都Ⅰ類B(一般方式) | 記述式・10科目から3題選択 | 選べる10科目のひとつ |
| 国税専門官(法文系) | 択一・選択問題 | 6題 |
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私は専門11科目をそろえたので、財政学も用意しています。ただし周回を多めに配ったのは憲法・行政法・民法・ミクロ・マクロの5科目で、財政学はそこに入っていません。数周で止めています。どこを受けても10題ぶん乗る民法と、5題の財政学に、同じ回数を配る理由がありませんでした。
この配り方の原資は教養を削って作っています。教養で時間を割いたのは数的処理と時事だけです。そして時事に使った本は、財政学の①でそのまま効きます。速攻の時事は時事科目のためだけの本ではありません。重なりを拾うとこういう形になります(専門科目は11科目に収束する)。
公務員試験の財政学が面白かったので、就職先を財務局にした
この科目については、受験テクニックより先に書いておきたいことがあります。財政学と経済学が面白かったので、私は就職先を財務局にしました。
受験先の選び方と、就職先の選び方は、自分でも軸が違っていました。受験先は専門択一で稼げるかどうかで選んでいます。国家総合職以外は専門択一の平均点が低いので、スー過去を仕上げれば教養が振るわなくても合格ラインに届く、という計算です。特別区を選んだのも、都庁の専門試験が記述だけだったからでした。
就職先はそうではありませんでした。国家一般職と財務専門官の両方に最終合格したうえで、財務局を選んでいます。理由は、試験勉強で財政学と経済学を学んで面白いと感じ、その知識を生かして国に貢献したいと思ったからです。科目の中身で進路を決めた形になります。
財務専門官の専門記述でも経済学を選び、8割を取りました。平均は5割5分でした。教材はスー過去だけです(教養論文と専門記述の書き方)。
この話には後日談があります。財務局には1年3か月で、退職しました。専門知識を使う場面はそこそこありましたが、合わなかったのは事務の進め方のほうでした。入ってからの話は財務専門官の仕事内容に書いています。それでも、科目の中身で進路を選んだという判断そのものは間違っていなかったと思っています。
だから財政学を点数の道具だけで見ないほうがいいと思っています。5題しかない科目ですが、何に興味があるかを教えてくれる科目でもありました。受験先は配点で選んでいいし、受かったあとの進路は中身で選んでいい。両方やっていい、という話です。
公務員試験の財政学に使う参考書と、待つべき理由
この科目だけ第7版が現行です。そして、待って最新版を買うのが正しい唯一の科目です。
| 役割 | 本 | 税込・発売日 |
|---|---|---|
| 過去問集 | 新スーパー過去問ゼミ7 財政学[改訂第2版](実務教育出版) | 2,200円・2025/12/24 |
| 併読 | 速攻の時事 令和8年度試験完全対応 | 1,320円・2026/2/2 |
| 導入本 | 不要。ただしミクロ・マクロを先に通すこと | ー |
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書影と書誌は楽天ブックスのデータです。
他の専門科目が第8版(2,420円)に上がっているのに、財政学は第7版の改訂第2版で2,200円です。間違いではありません。改訂のサイクルが別なので、見つからないと思って探し回らないでください。
他の科目では「第8版を待たずに第7版で始める」のが私の答えです。民法Ⅱ、マクロ、行政学は出題の骨格が動いていないので、着手が遅れるほうが痛い。財政学だけは逆です。財政事情を含むので、古い版には載っていない論点から出ます(参考書の記事)。
回し方は主要科目と同じです。1周目は頻出・重要論点だけ。全テーマはやりません。解いたらすぐ解説を見て、レジュメページにもすぐ戻る。考え込みません。
違うのは周回数です。多めに回したのは憲法・行政法・民法・ミクロ・マクロの5科目で、この科目は数周で止めています。意図的に主力へ周回を集中させました。間違えた問題はスー過去に付箋を貼るだけで、別のノートは作っていません。
手をつける順番
経済原論、ミクロ、マクロの順です。ここを飛ばすと③が暗記になって崩れます
年末から2月あたりに寄ります。版が古いと①の論点が載っていません
公共財や外部性はミクロで見た論点です。ここで科目の輪郭が出ます
分量は多くありません。レジュメを読んで問題を解く形で足ります
時事対策と兼用になります。面接で社会情勢を聞かれたときにも使えます
財政学は、着手の時期だけが特殊な科目です。中身そのものは、経済学を終えていれば難しくありません。最新版を使うことと、順番を守ることで、ほとんど片が付きます。
経済学の順番は 公務員試験の経済学 ミクロの前にもう一段ある、科目の組み方は 専門科目は11科目に収束する 併願先の重なりから決める、本の選定は 公務員試験の独学におすすめの参考書 現行版で11科目、逆算は 公務員試験のスケジュール 試験日から逆算する計算機つき、合格後の仕事は 財務専門官の仕事内容 金融監督の現場で1年3か月 にまとめています。
出題数と科目構成は2026年度(令和8年度)の受験案内に基づきます。年度ごとに変わるため、受験する年の案内で確認してください。
学習方法は個人の受験経験に基づくもので、合格を保証するものではありません。
