公務員試験の行政法は、憲法と並んでどこを受けても出る科目です。それでいて、最初に開いたときの手応えが憲法とまるで違います。
理由は「行政法」という法律が存在しないことにあります。条文を追えば輪郭が出る科目ではありません。
私はこの科目を、大学の講義で先に履修してから受験勉強に入りました。スー過去を多めに回した5科目のひとつでもあります。独学で受かった元公務員として、やったことと、その理由を書きます。
この記事でわかること
- 行政法がどの試験にも出てくる理由と、出題数
- 分かりにくさの原因が、法律が1本も無いことにあること
- 導入本を厚めのものにする判断と、定番とされる本を薦めない理由
- 判例集を憲法と別の本にした理由
- 周回を多めに配った5科目に、なぜこれが入ったか
この記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれています。紹介しているのは私が実際に使った本か、受験案内と出版社の情報で現行版を確認した本だけです。リンクの有無で順番を変えてはいません。
公務員試験の行政法は、どこを受けても出る
行政法は、主要な受験先すべてに置かれています。避けて併願先を組むのが難しい科目です。
国家一般職の行政区分は16科目各5題から8科目を選ぶ形で、行政法はその1科目です。特別区Ⅰ類の春試験は専門11分野各5題から40題を選ぶ形で、ここにも行政法があります。東京都Ⅰ類Bの一般方式は専門試験が記述式で、10科目から3題を選びますが、その10科目にも入っています。国税専門官では「憲法・行政法」が6題ひとまとめの選択必須科目になっています。
| 試験 | 形式 | 行政法の扱い |
|---|---|---|
| 国家一般職(行政) | 択一・16科目から8科目選択 | 1科目5題 |
| 特別区Ⅰ類(春・事務) | 択一・11分野55題から40題選択 | 1分野5題 |
| 東京都Ⅰ類B(一般方式) | 記述式・10科目から3題選択 | 選べる10科目のひとつ |
| 国税専門官(法文系) | 択一・選択必須5科目から4科目 | 「憲法・行政法」で6題 |
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憲法とセットで扱われる場面が多いのが特徴です。国税専門官は科目名からして「憲法・行政法」で一体になっています。憲法を固めた流れでそのまま行政法に入るのが、どの試験でも素直な順番になります(憲法は導入本を省ける 判例から入る)。
公務員試験の行政法が分かりにくいのは、法律が1本も無いから
行政法という名前の法律はありません。行政に関する決まり、慣習、学説をまとめて呼んでいる科目名です。
憲法には憲法という条文があり、民法には民法という条文があります。行政法にはそれがない。扱うのは行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法といった複数の法律と、そこに乗っている学説上の分類です。だから最初に「これを読めば全体が分かる1本」が見つかりません。
もうひとつの分かりにくさは、同じ出来事が立場によって別の論点になることです。
飲食店に営業停止命令が出たとします。行政の側から見れば「この行政行為の内容は何か」が論点になります。店の側から見れば「取消訴訟を起こすかどうか」が論点になります。同じ命令なのに、見る位置で章が変わる。だから片方だけ読んでいると、いつまでも輪郭が出ません。
対処は民法と同じです。全体像を先に取る。範囲が広く各論が絡み合う科目は、途中まで読んでも像が結ばないので、進度不足を理解不足と取り違えやすい。民法で同じことを書きました(民法は10題ある 全体像から入る)。
導入本は、薄さより丁寧さで選ぶ
行政法の導入本は、薄いものより説明が丁寧なものを選んでください。民法とは逆の判断です。
民法では1冊で完結する簡潔な本を薦めています。分野の繋がりを何度も回して掴む科目なので、周回しやすさが効くからです。行政法は、そもそも書かれている言葉が分からないという段で止まります。周回しやすさより、1文ずつ意味が取れることのほうが先に必要でした。
たとえば普通の行政法の本を開くと、こう書いてあります。
よくある行政法の教科書の「行政庁」の定義
行政庁とは、みずからの名で行政主体のために意思決定し、対外的にこれを表示する権限を法令上与えられている行政機関のことをいう
さっぱり意味が分かりません。分からない人のために書かれた定義なのに、分からない人には届いていない。
私が導入に使ったのは『まるごと講義生中継』の行政法でした。合わなかったので、薦めるのは別の本です。藤田宙靖『行政法入門』は、元最高裁判事が入門者向けに書いた本で、同じ行政庁の説明が租税の例から始まります。国民は国に税金を納めなければならない。これを法律の言い方に直すと、国が国民に対して国税を徴収する権利を持っているということになる。ではその権利は誰のものかというと、法人格を持ち権利義務の主体になれる国のものである。ところが実際に徴収しているのは、国そのものではなく一機関にすぎない税務署長で、課税処分も督促も「○○税務署長」の名前で出ている。この税務署長の立場が行政庁である。定義を1回で言い切らず、具体例で降りてくる。そのぶんページ数は増えますが、言葉の段で止まる科目にはこちらが合います。検索すると今でも上位に出てくる本です。
ネットで定番として薦められている『まるごと講義生中継』系を薦めないのは、自分で使って合わなかったからです。民法でも同じ判断をしています。どの本が定番かを調べるより、自分がどこで詰まる科目なのかを先に決めたほうが選定は速い。
なお、ここで触れた本は受験当時の版の話です。いま書店に並んでいる版で11科目をそろえる組み合わせは参考書の記事のほうが正確です。行政法の導入本もそちらに挙げてあります。法律科目で版が古いものは、改正や新しい判決が反映されていないので、最新版を取ってください。
判例集は、憲法と別の本にした
行政法の判例集は、憲法で使ったものとは別の本を用意しました。
憲法では判例百選を使っています。行政法では『ケースブック行政法』にしました。理由は2つで、地裁や高裁の判決までカバーしていることと、行政法の判例百選が長く改訂されていなかったことです。科目ごとに最良の本が違うので、シリーズで揃えようとしないほうがいい。
公務員試験用にまとまった判例集も出ています。私はそちらに拘りませんでした。判例集は通読する本ではなく、引く本です。要らない項目は開かなければいいだけなので、余るぶんは害になりません。困るのは足りないときです。
行政法で判例が効くのは、学説上の争いが多く輪郭が曖昧な論点を、具体的な事件が固定してくれるからです。1つ例を出します。
非番の警察官が、制服を着て管轄外の地区で通行人を呼び止め、所持品検査をしたうえで発砲して殺害し、金品を奪った事件があります。行政法上の論点は、この行為が国家賠償法1条の「職務を行うについて」に当たるかどうかです。判決は、管轄外でも非番でも外形上は職務を行っているように見えるのだから国家賠償の対象になる、としました。条文の文言だけ眺めていても、この結論は出てきません。
スー過去にも判例の年月日や一部の抜粋は載っています。ただし事案の流れや判決の理由までは載っていません。知っている前提で確認するための分量です。だから導入本を読んでいて知らない判決が出てきたら、そのたびに判例集を引きました。
公務員試験の行政法は、大学の講義で先に履修した
私は憲法と行政法を、公務員試験を受ける前提で大学の講義に入れています。意図的な前倒しでした。
学部の講義は、公務員試験の対策としては遠回りに見えます。試験に出ない論点に時間を使うからです。それでも行政法については、先に講義で通しておいた価値がありました。この科目でいちばん時間がかかるのは全体像を取る段で、そこを単位と引き換えに済ませられたことになります。
大学3年の11月に受験勉強を始めて翌春の試験という日程だったので、半年しかありません。その半年のなかで行政法の導入から立ち上げるのは、かなり苦しかったはずです。どの科目を講義で前倒しできるかという話は大学の講義で前倒しするに書きました。
講義で前倒しできた場合
- いちばん時間のかかる全体像を、単位と引き換えに済ませられる
- 受験勉強はスー過去から入れる
差が出るのは前半だけ
講義を取っていない場合
- 導入本に時間を使う前半が丸ごと残る
- それでも届かない科目ではない
いま大学1年か2年で、公務員試験を考えているなら、憲法と行政法は候補に入れていいと思います。逆に、もう講義を取れる位置にいないなら、ここは気にしないでください。講義を取っていない人が届かない科目ではありません。私の場合に効いたという話です。
周回を多めに配った5科目に、行政法が入っていた
スー過去は科目によって回した回数が違います。全体では3周から5周ですが、憲法・行政法・民法・ミクロ・マクロの5科目は多めに回しました。
この5科目を選んだのは、難しいからではありません。国家一般職・特別区・財務専門官で重なる主力だからです。どこを受けても乗ってくる科目に周回を集中させたほうが、同じ時間で拾える点数が増えます。配点の重なりが、そのまま周回数になっています。
多めに回した
憲法、行政法、民法、ミクロ、マクロ
どこを受けても乗る主力。配点の重なりがそのまま周回数になった
数周で止めた
残りの専門科目
用意はするが、周回は配らない
そもそも削った
教養(数的処理と時事を除く)
ここで浮いた時間が、上の周回の原資になっている
その原資は教養を削って作りました。教養で時間を割いたのは数的処理と時事だけで、残りは専門に回しています。独学の定石は科目やテーマを絞ることですが、私が絞ったのは教養のほうでした。専門は11科目そろえています(専門科目は11科目に収束する)。
1周目のやり方は他の科目と同じです。頻出論点だけを解き、考え込まず、解いたらすぐ解説を見て、分からなければレジュメページに戻る。間違えた問題には付箋を貼り、別のノートは作りませんでした。行政法に固有の工夫はしていません。この科目に固有なのは、導入本に時間をかける前半だけです。
そのうえで1つ、よく見かける勧め方には反対しておきます。「行政法は暗記科目だから細かいことは無視して割り切れ」という説明です。出題が参考書の範囲に収まりやすいのは事実なので、助言としては成立しています。それでも割り切りから入ると、同じ出来事が立場で別の論点になる構造を掴み損ねます。割り切れるようになるのは全体像が出たあとで、最初からの態度にはできません。近年は学説と事案を組み合わせた考察型の出題も入るので、暗記で止めた分が削られます。
公務員試験の行政法に使う参考書と、周回の配り方
過去問集1冊と、導入本を1冊です。この科目は周回を多めに配った5科目に入っています。
| 役割 | 本 | 税込・発売日 |
|---|---|---|
| 過去問集 | 新スーパー過去問ゼミ8 行政法(実務教育出版) | 2,420円・2026/9/9 |
| 導入本 | 寺本康之のバイブル系(エクシア出版) | ー |
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第8版は2026年9月9日発売です。憲法・民法Ⅰ・ミクロ経済学と同じ日に出ています。専門は全科目2,420円で、第7版まであった科目ごとの価格差は消えました。
行政学と間違えないでください。行政学の第8版は11月26日で、まだ出ていません。書名が似ているので、棚で取り違えると2か月の差になります(行政学の記事)。
回し方は科目で変えていません。1周目は頻出・重要論点だけを解きます。全テーマはやりません。解いたらすぐ解説を見て、分からなければレジュメページにもすぐ戻る。考え込む時間を作らない、というのが唯一のルールでした。
周回数はここで差を付けています。憲法・行政法・民法・ミクロ・マクロの5科目は3周から5周、それ以外は数周で止めました。間違えた問題はスー過去に付箋を貼るだけで、別のノートは作っていません。勉強時間は1日3時間から6時間で、大学が無い日は多めです。
手をつける順番
法律科目の3番目に置きます。憲法で入れた判例の読み方が、そのまま効きます
薄さで選びません。言葉の意味が取れないまま進むのがこの科目の詰まり方です
事案と判決理由まで読みます。スー過去の判例欄は確認用で、学ぶ用ではありません
考え込まない。分からなければレジュメに戻ります。まず1周を終わらせます
付箋を貼った問題から2周目に入ります。どこを受けても5題ぶん乗る科目です
行政法は、入口がいちばん重く、入ってからは素直な科目でした。導入本に時間をかけることを遠回りだと思わないほうがいいと思っています。全体像が出たあとは、他の法律科目と同じ回し方で足ります。
憲法の入り方は 公務員試験の憲法は導入本を省ける 判例から入る、民法の全体像は 公務員試験の民法は10題ある 全体像から入る、科目の組み方は 専門科目は11科目に収束する 併願先の重なりから決める、講義での前倒しは 公務員試験の勉強を大学の講義で前倒しする 専門11科目、本の選定は 公務員試験の独学におすすめの参考書 現行版で11科目 にまとめています。
出題数と科目構成は2026年度(令和8年度)の受験案内に基づきます。年度ごとに変わるため、受験する年の案内で確認してください。
学習方法は個人の受験経験に基づくもので、合格を保証するものではありません。
