2017年4月に財務局へ入って、最初にもらった給与明細が手元に残っていました。給与支給総額231,930円、振込額199,135円。差し引かれたのは32,795円です。実物をそのまま出します。財務専門官として入庁した元公務員が、その明細を見ていきます。
予備校のサイトで調べられるのは初任給の俸給額までで、そこから何がいくら引かれて口座にいくら入るかは出てきません。そこを数字で埋めます。
ただし古い明細です。2017年の数字なので、いまの水準ではありません。制度側も変わっているので、どこが変わったかも最後に書きます。
この記事でわかること
- 国家公務員1年目の給与明細の実物(支給3項目・控除の全内訳)
- 給与支給総額231,930円から32,795円が引かれて、振込額が199,135円になる内訳
- 控除32,795円のうち税は4,940円だけ。削っているのは社会保険料であること
- 公務員の明細には雇用保険料の欄が無いこと(適用除外のため)
- 地域手当は俸給のちょうど15%で、勤務地だけで月26,730円動くこと
- 1年目は住民税が引かれない。だから2年目の6月に手取りが下がること
- この月は残業代もボーナスもゼロ。研修中で、賞与の基準日は6月1日だから
- 2017年の明細がいまそのまま使えない理由(地域手当の級地見直しと初任給の引上げ)
国家公務員1年目の給与明細、実物はこれ
振込額は199,135円でした。給与支給総額との差は32,795円です。
2017年4月に財務専門官として採用され、埼玉の財務局に配属されました。この明細は研修期間中のものです。財務専門官として入った1年3か月の、いちばん最初の部分にあたります。

231,930円
給与支給総額
32,795円
控除額計
199,135円
振込額
控除率にすると14.1%です。給与支給総額の7分の1が消えます。この比率は後で効いてくるので覚えておいてください。
支給の中身は3つしかない
支給欄に数字が入っているのは3項目だけで、あとは全部ゼロでした。
| 項目 | 金額 | 中身 |
|---|---|---|
| 俸給 | 178,200円 | 基本給。職務の級と号俸で決まる |
| 住居手当 | 27,000円 | 借家に住んでいたため。当時の上限額 |
| 地域手当 | 26,730円 | 俸給の15%。勤務地で決まる |
| 給与支給総額 | 231,930円 | この3つの合計 |
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ゼロだったのは、扶養手当、単身赴任手当、管理職手当、広域異動手当、特別調整額、特殊勤務手当、超過勤務手当、期末特別手当、期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、宿日直手当、通勤手当です。手当の欄は20近くあるのに、埋まるのは3つでした。
手当の名前が並んでいると収入が多そうに見えますが、1年目の若手に当てはまるのは住居手当と地域手当だけです。扶養手当は扶養親族がいる職員、単身赴任手当は配偶者と別居した職員、広域異動手当は遠い官署へ異動した職員に支給されるもので、新人には関係がありません。
地域手当だけで月26,730円動く
支給で2番目に大きいのは地域手当です。俸給178,200円のちょうど15%にあたります。
地域手当は、民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給されるもので、俸給などの月額に支給割合を掛けて計算します。人事院は東京都特別区に勤務する職員の例として月給の20%を挙げています。私が勤務したさいたま市は、当時15%の区分でした。国家と地方の給料の違いは国家公務員と地方公務員の違いの記事で比べました。
同じ俸給178,200円でも、勤務地で支給額が変わる(当時の区分)
朱は地域手当が付かない地域。同じ俸給でも、勤務地だけで年間40万円以上ちがう。
同じ試験に受かって同じ仕事をしても、勤務地だけで月に3万円以上の差がつきます。年額にすると40万円を超えます。地方勤務だと地域手当が付かない官署もあるので、そこを含めて比べないと、実際に口座へ入る額は読めません。
財務局は全国に置かれていますが、配置はほとんど埼玉・東京・千葉に寄っていました。首都圏に配属されるかどうかが、そのまま地域手当の有無に直結します。
控除の内訳。税は4,940円しかない
引かれた32,795円のうち、税は所得税の4,940円だけです。残りはすべて社会保険料と積立でした。
| 項目 | 金額 | 中身 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険料等 | 17,632円 | 控除の54%。標準報酬200,000円に本人負担分の率を掛けた額 |
| 共済短期 | 7,938円 | 民間の健康保険にあたる部分 |
| 所得税 | 4,940円 | 源泉徴収。控除のなかで唯一の税 |
| 退職等年金給付の掛金 | 1,500円 | 標準報酬200,000円の0.75%(労使折半の本人負担分) |
| 貯金経理 | 785円 | 自分で申し込む積立。保険料でも税でもない |
| 住民税 | 0円 | 1年目は引かれない |
| 雇用保険料 | 欄そのものが無い | 常勤の国家公務員は雇用保険の適用除外 |
| 控除額計 | 32,795円 | 給与支給総額231,930円の14.1% |
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標準報酬月額は200,000円で登録されていました。厚年標準が14級、退職等年金掛金と共済短期が13級です。保険料と掛金は、この等級に率を掛けて決まります。退職等年金給付の掛金が1,500円なのは、200,000円の0.75%だからです。
27,070円
社会保険料と掛金(控除の83%)
4,940円
税(所得税のみ・15%)
785円
自分で申し込んだ積立
手取りを削っているのは税ではなく社会保険料です。節税の話から入る記事が多いのですが、1年目の給与で効いているのはこちらです。しかも保険料は標準報酬で機械的に決まるので、自分で動かせる余地がほとんどありません。
民間の明細と違うのは、雇用保険料の欄そのものが無いことです。常勤の国家公務員は雇用保険の適用除外で、離職時は退職手当の制度で受けます。失業手当の仕組みが使えない代わりに、退職手当がある。辞めるときに効いてくる差です。
1年目は住民税が引かれない。2年目に手取りが下がる
この明細でいちばん注意してほしいのは、住民税がゼロであることです。
住民税は前年の所得に対して課税され、翌年の6月から給与天引きが始まります。大学を出てすぐの1年目は前年の所得がほぼないので、引かれません。
つまり、この199,135円という振込額は1年目だけの数字です。2年目の6月から住民税が乗ってきて、俸給が上がっていても手取りが減ったように見えることがあります。
初任給の記事を読んで生活費を組むと、ここで狂います。1年目の手取りは、2年目以降より構造的に多く出ます。家賃や固定費を1年目の手取りに合わせて決めると、翌年の6月に効いてきます。昇給で吸収できる額かどうかは、住民税の額次第です。
住民税が前年の所得にかかる仕組みと、天引きと自分で払う場合の違いは、税務側の記事で計算例つきでまとめました(住民税の仕組みと計算方法)。
残業代もボーナスもゼロだった理由
超過勤務手当も期末手当も勤勉手当も、この明細では全部ゼロです。理由は2つあります。
残業代がゼロ
研修期間中だったため。採用後は2か月、全国の同期と合同の合宿研修がある
配属後も残業は多い月で10時間程度だった
ボーナスがゼロ
期末手当と勤勉手当は6月1日と12月1日の在職者に支給される
4月・5月の明細に賞与が載ることはない
ボーナスの基準日が6月1日と12月1日である以上、4月採用の新人が最初に賞与を受け取るのは6月です。しかも初年度の夏は在職期間が短いぶん減額されます。「公務員はボーナスが安定している」という話は正しいのですが、入った年の6月に満額が入ると思っていると違います。
年間の支給月数は、令和7年の人事院勧告で0.05月分引き上げられて4.65月分になりました。これは現行の数字で、2017年当時はこれより低い水準です。月数の推移と仕組みは国家公務員のボーナス 支給月数・支給日と1年目の実際にまとめました。
この明細がいまそのまま使えない理由
ここまでの数字は2017年のもので、現在の水準ではありません。制度側で大きく変わったのが2つあります。
初任給が上がった
令和7年の人事院勧告は、採用市場での競争力向上を理由に初任給を大幅に引き上げている
俸給178,200円という数字は、いまの新人には当てはまらない
地域手当の区分が変わった
令和7年の見直しで級地区分が8段階から6段階へ大括り化され、支給地域の単位も都道府県を基本に広域化された
「さいたま市は15%」という当時の区分はそのまま残っていない
では、この明細に意味がないかというと、そうではありません。金額は変わっても、構造は変わらないからです。
支給で埋まるのは俸給と住居手当と地域手当の3つだけ。控除の大半は税ではなく社会保険料。住民税は1年目だけゼロ。ボーナスの基準日は6月1日と12月1日。この形は2017年でも現在でも同じです。自分の年の俸給表と地域手当の支給割合を当てはめれば、手取りの見当がつきます。
人事院は国家公務員の給与の試算ツールをExcelで公開しているので、具体的な金額はそちらで計算するのが正確です。 給与以外の収入にあたる副業の扱いは国家公務員の副業に書きました。
手取りを自分で見積もる順番
受験先を決める段階で給与を比べるなら、この順番で計算してください。
職種ごとに17の俸給表があります。行政職か公安職かでも違うので、受ける試験に対応する表を見ます
ここがいちばん大きく動きます。私の場合は俸給の15%で26,730円。特別区なら20%です
借家に住む場合に支給されます。実家から通うなら付きません。私は27,000円でした
私の明細では控除率14.1%でした。1年目はここに住民税が入っていないので、2年目はもう少し増えます
基準日は6月1日と12月1日。4月採用なら最初の夏は在職期間が短いぶん減ります
調べれば出てくるのは俸給の額までで、そこから先は自分で積むしかありません。この明細が、その積み方の実例になれば十分です。
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掲載した明細は2017年に支給されたもので、現在の給与水準および地域手当の級地区分とは異なります。俸給額・支給割合・ボーナスの月数はいずれも改定されているため、受験する年の人事院の公表資料で確認してください。
金額は1人の実例であり、職種・勤務地・扶養の状況によって変わります。
