都庁と特別区は、令和8年度の第1次試験が同じ4月19日でした。日程が違うから両方受けられる、という前提は年によって崩れます。採用も、都庁は任命権者へ一括提示、特別区は各区への個別提示で仕組みが違います。 団体ごとの生年月日の線は公務員試験の年齢制限に数えました。
私は特別区を受けて最終合格し、希望した区の面接まで進んで、そこで辞退しました。受けた理由は専門試験の形式で、辞退した理由は「なぜ区役所なのか」に答えられなかったことです。最終的に財務専門官を選び、財務局で1年3か月働いた元公務員です。 国家と地方の違いは国家公務員と地方公務員の違いに書きました。
都庁の一般方式は専門が記述式で、複数科目を書かせます。専門択一はありません。特別区は択一で、しかも出題分野が多い。国家一般職と財務専門官のために積んだ択一の科目がそのまま使えて、記述の対策だけを省けます。国家系を主軸にしていた人間には、この差がそのまま準備量の差になりました。 国家一般職の合格点と必要な正答数は国家一般職のボーダーにまとめました。
ただ、その前にもう一点あります。東京都Ⅰ類B一般方式と特別区Ⅰ類春試験は、第1次試験が同じ4月19日でした。得意不得意や配点を検討する前に、ここで選択肢が絞られる人がいます。
この記事でわかること
- 東京都Ⅰ類B一般方式と特別区Ⅰ類春試験の第1次試験が、令和8年度は同じ4月19日だったこと
- 「日程が違うから併願できる」という説明が、この組み合わせでは成立しないこと
- 都庁は任命権者への一括提示、特別区は各区への個別提示という、採用の仕組みそのものの違い
- 特別区は提示先の区で不選択になると振り出しに戻る可能性があること
- 配点は両方とも非公表で、比べようがない部分が残ること
- 私が第2次試験の面接で聞かれたことと、区面接を辞退した理由(科目の重なりだけで併願先を決めた結果)
都庁と特別区のどっちを受けるか、分かれ目は日程
令和8年度は、東京都Ⅰ類B一般方式の第1次試験と、特別区Ⅰ類春試験の第1次試験が、どちらも4月19日でした。同じ日に2つの会場には行けないので、この年に限れば両方を受けることはできません。
特別区の受験案内には「主な日程(全試験区分共通)」として試験日が明記されています。東京都の受験案内にも同じ4月19日が第1次試験日として載っています。別々に発表される日程が、たまたま同じ日になっていました。
| 試験 | 第1次試験日 | 最終合格発表 |
|---|---|---|
| 東京都Ⅰ類B 一般方式(行政) | 4月19日(日) | 7月10日 |
| 特別区Ⅰ類 春試験(事務) | 4月19日(日) | 7月24日 |
東京都人事委員会「令和8年度 東京都職員Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」1ページ。受験案内PDF。特別区人事委員会「令和8年度 特別区(東京23区)職員Ⅰ類採用試験案内【春試験】」1ページ。受験案内PDF。
この一致は、どちらかが相手に合わせた結果ではありません。東京都と特別区は別の人事委員会が別々に日程を組んでいて、案内文書のどこにも同日だとは書かれていない。両方の受験案内を横に並べて初めて気づく種類の重なりです。
併願の記事で扱った「申込段階で片方が閉じる組み合わせ」とは性質が違います。こちらは申込自体はできるのに、当日の会場がぶつかって実質的に選べなくなる。
「日程が違うから両方受けられる」という前提が崩れている
都庁と特別区は試験制度が別なので併願できる、という理解が広く流布しています。令和8年度の一般方式と春試験に関しては、この理解は正しくありません。
私が受験生だったころも、周囲では「都庁と特別区はどちらも受けて、受かったほうに行けばいい」という話が出ていました。年度によっては日程がずれていた時期もあったようです。
ただ、毎年その前提が成り立つとはかぎりません。令和9年度の日程は本日時点で未公表で、来年も4月19日が重なるかどうかは分かりません。
特別区には春試験のほかに早期SPI枠があります。早期SPI枠の第1次はテストセンター方式で受験者が日程を選べるため、都庁一般方式の4月19日とは重なりません。ただし早期SPI枠の第2次(プレゼンテーションシート作成)が4月19日に指定されていた年があり、こちらは都庁の第1次と同日になります。どの組み合わせが重なるかは、春試験か早期SPI枠かでまったく違う結果になるということです。
もう一つ、都庁には新方式もあります。新方式は第1次が適性検査(SPI3)のみで、テストセンター方式のため日程を自分で選べます。「都庁だから4月19日に縛られる」わけではなく、一般方式を選んだ場合に限って縛られるという点は分けて理解しておく必要があります。
同日実施は、今年たまたま起きた話ではない
都庁と特別区の第1次試験が同じ日になるのは、令和8年度が初めてではありません。この組み合わせは以前から繰り返し起きてきた構造です。
平成29年度も、都庁と特別区の第1次試験は同日でした。当時の受験生のあいだでも「今年もまた同じ日か」という受け止め方だったようです。
- 令和8年度 第1次試験が同日(4月19日)
- 平成29年度 第1次試験が同日
人事委員会が互いの日程を確認し合って調整している形跡はありません。母数の大きい2つの自治体系試験が、結果として同じ日曜日に集中しやすい。そういう状態が続いていると見るのが実態に近いと思います。
とはいえ、毎年必ず重なるとまでは言えません。確認できたのは令和8年度と平成29年度の2年だけで、あいだの年度は調べていない。重なる年もあれば、ずれる年もある。それが正確なところです。
だからこそ、伝聞ではなくその年の受験案内を自分で開く作業は省けません。
採用の決まり方も違う 都庁は一括、特別区は区面接
最終合格したあとの採用の決まり方が、都庁と特別区とではっきり違います。都庁は東京都という一つの実施主体が採用まで進めますが、特別区は23区それぞれが個別に採用可否を決めます。
東京都の受験案内には、最終合格後の流れが図解されています。東京都人事委員会が採用候補者名簿を作成し、任命権者(都知事、公営企業管理者、教育委員会等)に提示する。
任命権者は採用面談と受験資格の確認を行い、その結果に基づいて採用を内定します。ここでの任命権者は東京都という一つの主体の中の窓口で、提示されて終わりという単線の流れです。
出典 東京都人事委員会「令和8年度 東京都職員Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」13〜14ページ「7 採用、主な勤務条件等及び昇任制度」。受験案内PDF
特別区はここが違います。特別区人事委員会は、最終合格者を試験区分別の採用候補者名簿に高得点順で登載したあと、本人が希望した区を考慮して、各特別区等へ提示します。提示を受けた区が面接を行い、その結果に基づいて採用候補者に内定を出す仕組みです。もし提示先の区で不選択になった場合は、採用予定数の充足状況に応じて別の区へ再び提示されることがあり、それでも決まらなければ採用されないまま終わることもあります。
| 段階 | 東京都Ⅰ類B 一般方式 | 特別区Ⅰ類 春試験 |
|---|---|---|
| 名簿への登載 | 東京都人事委員会が採用候補者名簿に登載 | 特別区人事委員会が試験区分別の名簿に高点順で登載 |
| 提示の単位 | 都知事・公営企業管理者・教育委員会等の任命権者へ1回提示 | 希望を考慮のうえ、各特別区等へ個別に提示 |
| 面接 | 任命権者による採用面談(8月予定) | 提示を受けた区が面接を実施 |
| 不選択時の扱い | 該当の記載なし | 採用予定数の状況に応じて別の区へ再提示。それでも決まらなければ不採用の場合がある |
| 内定の時期 | 採用内定は10月上旬(予定) | 特別区等からの合格連絡をもって内定 |
出典 東京都人事委員会「令和8年度 東京都職員Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」13〜14ページ。特別区人事委員会「令和8年度 特別区(東京23区)職員Ⅰ類採用試験案内【春試験】」5〜6ページ「6 採用の方法及び時期」。受験案内PDF
都庁は、最終合格したらほぼどこかの部署に採用される設計に近い。特別区は、最終合格しても希望する区に受け入れられるかどうかがもう一段あります。
面接の回数が1回増えるという話ではなく、採用側に選ぶ権限がもう一つある。そこが違います。
私が特別区を選んだときに見ていたのは科目と出題形式だけでした。最終合格したあとに区の面接があると知ったのは、名簿に載ってからです。試験に受かった感覚と、就職先が決まった感覚のあいだに、もう一段ある。受ける前に確認しておくべき情報でした。
私の場合は希望した区が提示されましたが、区面接は受けずに辞退しました。なぜ区役所なのかは、特別区の第2次試験の個別面接で聞かれています。区の側は「特別区に受かった人」ではなく「この区の職員になる人」を選んでいます。私はもともと専門知識を生かして働きたくて国家志望だったので、区役所で働く理由を自分の言葉で持っていませんでした。科目の重なりだけで併願先を決めると、受かったあとにこの質問で詰まります。専門択一があるから特別区を受ける、というのは受験の判断としては正しくても、区面接の答えにはなりません。
これは特別区を薦めないという話ではありません。区役所で働く理由がある人には、提示と区面接という仕組みは希望を通す側に働きます。逆に私のように「試験の形で選んだ」人間は、最終合格のあとで一度止まることになる。どちらなのかは、受ける前に自分で分かるはずのことでした。特別区だけの倍率や論文・面接の形式は特別区Ⅰ類のボーダーと倍率の記事にまとめています。
都庁の受験案内には、配属先や職務内容により交替制勤務や夜間勤務、島しょ勤務の可能性がある、という注記があります。配属先は本人の希望だけで決まるわけではありません。特別区も、最初に希望した区が必ず提示先になるとはかぎらない。
希望どおりに決まらない可能性がある。ここは両方に共通しています。違うのは、その不確実性が「都内のどの局に配属されるか」で表れるか、「どの区の職員になれるか」で表れるかです。
採用予定数は特別区のほうが多いが、配属される単位が違う
数だけ見れば、令和9年度の採用予定は特別区(事務・一般事務)が1,039名程度で、都庁(事務・一般方式)の500人より多く見積もられています。ただしこの数字は、そのまま「特別区のほうが入りやすい」とは読めません。配属される単位そのものが違うからです。
| 試験 | 採用予定数 | 配属の単位 |
|---|---|---|
| 東京都Ⅰ類B 一般方式(行政) | 500人 | 知事部局、交通局、水道局、下水道局、行政委員会、学校など。単一の実施機関(東京都)の中で部局が分かれる |
| 特別区Ⅰ類 春試験(事務・一般事務) | 1,039名程度 | 千代田区から江戸川区までの23区に加え、特別区人事・厚生事務組合、特別区競馬組合、東京二十三区清掃一部事務組合。それぞれ別の実施機関 |
出典 東京都人事委員会「令和8年度 東京都職員Ⅰ類B採用試験案内(一般方式)」2ページ「1 試験区分及び採用予定者数等」。特別区人事委員会「令和8年度 特別区(東京23区)職員Ⅰ類採用試験案内【春試験】」1ページ「4 受験資格及び特別区等の採用予定」。受験案内PDF
特別区の受験案内には、23区それぞれの採用予定数まで区ごとに個別に載っています。多い区で世田谷区の100名程度、少ない区では千代田区の17名程度まで幅があります。「特別区に受かる」という言い方自体が実は不正確で、正確には「23の実施機関のどこかに受け入れられる」という話だということが、この数字の内訳からも分かります。前述の区面接での不選択が起きるのは、この母数の分かれ方が背景にあります。
配点は両方とも非公表で、比べようがない部分が残る
都庁と特別区、論文の配点がどちらが高いかを数字で比べることはできません。両方とも公式には配点を公表していないからです。
都庁
- 専門記述と論文の配点が教養択一より高いと語られる
非公式な語られ方(根拠は非公表)
特別区
- 論文の配点が教養と専門の合計を上回ると語られる
これは主に、合格者の自己申告した得点を集計した非公式な分析です。人事委員会が根拠を示しているわけではありません。
どちらの試験も、教養択一が一定基準に届かなければ論文と専門は採点されない。この足切りは公式に明記されています。ただ、その先の配点比率は分かりません。
分からないことを分かったふりで書くと、対策の優先順位を間違えます。推測できない配点を計算するより、採用の仕組みのように公表されている違いを先に見たほうが確かです。
比べられるのは、公表されている選考の形式そのものです。東京都Ⅰ類B一般方式は専門試験が記述式で10題中3題を選ぶのに対し、特別区Ⅰ類春試験の専門は五肢択一式で55題中40題を選ぶ形式です。記述式が得意かどうかは、配点の推測より先に自分で判断できる材料になります。
専門科目の範囲は9割方重なる。違うのは解答の形式
都庁の専門記述と特別区の専門択一、科目の範囲そのものはほとんど重なっています。数えると、都庁の専門記述10科目のうち9科目までが特別区の専門択一11分野に含まれています。
都庁の専門記述は憲法、民法、行政法、経済学、財政学、政治学、行政学、社会学、経営学、会計学の10科目。
特別区の専門択一は憲法、行政法、民法①(総則・物権)、民法②(債権・親族・相続)、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学、経営学、政治学、行政学、社会学の11分野です。
都庁の民法は特別区の民法①②に、都庁の経済学はミクロとマクロに対応します。都庁側の10科目のうち、会計学を除く9科目が特別区側にも同じ名前で存在します。
科目名が同じでも、聞かれ方は別物になります。都庁は10題から3題を選んで記述する形式、特別区は55題から40題を選ぶ択一式です。同じ憲法でも、記述で答案を組み立てられる理解と、五肢択一の選択肢を絞り込める理解は、必要な仕上げ方が違います。範囲の重なりをそのまま「対策が共通化できる」と読むのは早計です。
それでも、範囲の9割が重なるという事実は、まだ本命を決めていない段階では意味を持ちます。科目選びで併願先を狭める必要がなく、どちらを受けるとしても知識の土台は共有できるからです。
裏を返せば、どちらを受けるかを決める材料は、科目の共通度からはほとんど出てきません。日程の重なりと採用の仕組みのほうが、実質的な分かれ目になります。
都庁と特別区のどっちかを、勤務地の希望から決める
配点や採用の仕組みと並んで、勤務地の広がり方も都庁と特別区で違います。都庁は東京都という広域自治体、特別区は23区それぞれが基礎自治体という、そもそもの単位が違うためです。
都庁
- 本庁と出先機関を含めた全庁レベルで異動がある
- 部署によっては島しょ勤務や交替制勤務も対象
- 都市計画や環境、福祉の広域調整といった広域行政が中心になりやすい
広域行政か、基礎自治体の窓口業務か
特別区
- 採用された区の中で異動するのが基本
- 住民票、国民健康保険、生活保護、保育など
- 住民に直接向き合う窓口業務に携わる機会が都庁より多い
どちらが良いというより、「広域行政の設計側に回りたいか、基礎自治体で住民に近い実務を積みたいか」という職務の方向性の違いです。配点の推測に時間を使うより、この違いのほうが受験前に自分で判断できる材料としては大きいと感じます。
手をつける順番
令和8年度は都庁一般方式と特別区春試験が同日だった。来年も同じとは限らない
どちらもテストセンター方式で、一般方式・春試験とは別枠になる
都庁は任命権者への一括提示、特別区は区への個別提示。区面接で不選択になる可能性も含めて考える
配点比率は非公表なので推測しない。形式の得意不得意は先に判断できる
都庁と特別区のどちらが良いかという問いに、一般論としての正解はありません。冒頭で書いたとおり、私が特別区にしたのは択一の科目がそのまま流用できて、専門記述を用意せずに済んだからです。これは国家系を主軸にしていた人間の事情で、記述で点を取れる人なら答えは逆になります。ただ、日程が重なるかどうかと、採用がどう決まるかだけは、好みではなく事実として先に確認できます。
この記事を書くために両方の受験案内を並べ直して、当時は気づいていなかった数字も見つけました。
特別区の採用予定数を23区ごとに見ると、世田谷区の100名程度から千代田区の17名程度まで、6倍近い開きがあります。当時の私は特別区という一つのくくりでしか見ておらず、その内側の差を意識していませんでした。
都庁か特別区かを決める前に、特別区という選択肢自体が23の別々の判断主体でできている。そこの理解が抜けていたのだと思います。
併願を考えるうえでの日程全体は 公務員試験の併願 申し込んだ時点で消える選択肢、専門記述と論文の書き方は 教養論文と専門記述 条件から逆算する書き方、制度全体の形は 公務員試験の全体像 にまとめています。
日程と採用の流れはすべて2026年度(令和8年度)の受験案内に基づきます。2027年度(令和9年度)の日程は本日時点で未公表であり、改めて公表されます。出願前には必ず各実施機関の受験案内で確認してください。
掲載内容は東京都人事委員会および特別区人事委員会の公表資料に基づきます。個人の受験経験に基づく記述は、合格を保証するものではありません。
