公認会計士試験の合格基準は、現行で短答式が総点数の70%、論文式が52%です。令和9年試験から動くのは短答式ではなく論文式で、52%→54%へ3〜4年かけて上がります。短答式の70%は据え置きで、変わるのは合格者数の運用です。
バランス調整で短答式が易しくなる。受験生の掲示板やSNSでよく見かける話です。半分だけ合っています。
公認会計士・監査審査会が令和7年6月に公表した資料を読むと、動くのは短答式ではなく論文式の合格基準です。短答式の70%という基準そのものは変わりません。
審査会の公表PDFに書かれている数字だけを並べて、この調整が一人ひとりの判断にどう効くかを計算します。
この記事でわかること
- 公認会計士試験 バランス調整で変わるのは論文式の52%基準で、短答式の70%基準は据え置きであること
- 短答式の合格率が上がって見えるのは基準が下がったからではなく、合格者数を増やす運用によること
- 一部科目合格の基準が「合格者の平均得点比率」から「答案提出者の上位15%」へ変わり、過去の数字が目安にならなくなること
- 審査会自身の試算で、論文式の合格率(願書提出者ベース)が30%台後半から20%台後半へ落ちること
- 調整が3〜4年かけて段階的に進む以上、いつ短答式を抜けるかで論文式の条件が変わること
公認会計士試験の合格率と合格基準は、何が変わるのか
審査会が令和7年6月12日に公表した「公認会計士試験のバランス調整について」は、論文式試験の合格基準を従前の52%から54%へ、3〜4年かけて段階的に引き上げるという内容です。短答式試験の合格基準は変えません。
審査会が挙げている理由は単純です。出願者数が10年連続で増えているのに、短答式を通過して論文式に進める人数の伸びが追いついていない。結果として、論文式の合格率のほうが短答式より相対的に高い状態が続いています。
調整の向きは、短答式の合格者を増やして論文式に進める人を厚くし、そのぶん論文式側で絞る、というものです。
短答式試験
- 合格基準「総点数の70%」は変更なし
- 合格者数を増やす運用で通過人数を厚くする
- 結果として合格率は上がる見込み
令和9年試験から3〜4年かけて
論文式試験
- 合格基準を52%から54%へ引き上げ
- 一部科目合格の基準も母集団ごと変わる
- 結果として合格率は下がる見込み
出典 公認会計士・監査審査会「公認会計士試験のバランス調整について」本文PDF balancehonbun.pdf 8〜9ページ。
短答式の合格基準は70%のまま動かない
ここが誤解の起点なので、先に潰しておきます。バランス調整で短答式の基準が70%から下がる、という理解は誤りです。
審査会の本文PDFは、短答式の合格基準の水準を変更しないと明記しています。合格率が上がって見えるとしたら、それは基準が下がったからではなく、審査会が相当と認める合格者数の運用で通過人数を厚くしているからです。
実際のボーダーの推移を見ると、この「70%を目安」という表現の幅がよく分かります。
| 試験 | 合格基準 | 答案提出者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年 第Ⅰ回 | 71%以上 | 11,401人 | 1,182人 | 10.4% |
| 令和5年 第Ⅱ回 | 69%以上 | 10,429人 | 921人 | 8.8% |
| 令和6年 第Ⅰ回 | 75%以上 | 12,100人 | 1,304人 | 10.8% |
| 令和6年 第Ⅱ回 | 78%以上 | 11,003人 | 1,041人 | 9.5% |
| 令和7年 第Ⅰ回 | 72%以上 | 12,336人 | 1,383人 | 11.2% |
| 令和7年 第Ⅱ回 | 72%以上 | 11,127人 | 1,026人 | 9.2% |
| 令和8年 第Ⅰ回 | 75%以上 | 12,533人 | 1,525人 | 12.2% |
| 令和8年 第Ⅱ回 | 70%以上 | 11,102人 | 995人 | 9.0% |
合格基準は69%から78%まで年によってばらつきます。基準が下がったから受かりやすくなった年と、基準が上がったのに合格者数も増えた年が混ざっているので、「7割取れば受かる」と丸暗記するのは危険です。直近8回のうち、令和8年第Ⅱ回だけは合格基準がちょうど70%でした。審査会が「目安」と説明する数字に、実際のボーダーがぴたり重なった回が1回あるだけで、残り7回は69%から78%まで振れています。
出典 公認会計士・監査審査会「試験結果の概要」令和5〜8年各回PDF。
論文式の合格基準は52%から54%へ
動くのはこちらです。論文式試験は偏差値に基づく得点比率で合否を決め、合格基準は「総点数の得点比率52%を目安として、審査会が相当と認める得点比率」とされてきました。これが令和9年試験から54%へ、3〜4年かけて段階的に引き上げられます。
「偏差値52」という言い方をよく見ますが、正確には52%程度であり、実際の合格点は51.5%から52.2%の範囲で年ごとに動いています。私の成績通知書3回分で得点比率の読み方を確かめた話は、偏差値の記事に書きました。
| 試験年 | 合格点 | 出願者数 | 最終合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年 | 51.5%以上 | 14,192人 | 1,360人 | 9.6% |
| 令和4年 | 51.6%以上 | 18,789人 | 1,456人 | 7.7% |
| 令和5年 | 52.0%以上 | 20,317人 | 1,544人 | 7.6% |
| 令和6年 | 51.9%以上 | 21,573人 | 1,603人 | 7.4% |
| 令和7年 | 52.2%以上 | 22,056人 | 1,636人 | 7.4% |
この表の合格率は出願者ベースなので、短答式で落ちた人も分母に入っています。論文式そのものの通過しやすさを見るなら、論文式に実際に挑んだ人だけを分母にした数字が要ります。その指標は5章で出します。これとは別に、審査会自身も試算を公表しています。合格基準を52%から54%へ動かすと、論文式の合格率(願書提出者ベース)は従来の30%台後半から20%台後半へ低下する。本文PDFにそう注記されています。
願書提出者ベースはその年に出願した全員を分母にした数字で、後述する論文式受験者ベースの指標とは母集団が別です。なお1科目でも得点比率が40%未満なら不合格になる足切りは、現行のまま残ります。
出典 公認会計士・監査審査会「令和3〜7年公認会計士試験(論文式試験)の合格点及び合格率等について」各年版、「公認会計士試験のバランス調整について」本文PDF 9ページ。
数字に置き換えると、どれくらいの規模の話か分かります。令和7年の論文式受験者数は4,665人、最終合格者は1,636人で、受験者ベースの合格率は35.1%でした。審査会の試算は願書提出者ベースなので、そのままこの数字には当てはめられませんが、仮に受験者ベースの合格率が同じ幅だけ動いて、20%台後半の下限にあたる27%まで下がったとすると、規模感は次のようになります。
35.1%
令和7年の実際の合格率(受験者ベース)
27%
仮に同じ幅だけ下がった場合(20%台後半の下限)
376人
その場合の合格者数と実際の1,636人との差
この仮定に立つなら、調整が完了した後の年間合格者は350〜400人少ない水準になります。母集団を置き換えた仮定の試算で、審査会が公表した数字ではありません。段階的な引き上げなので初年度からこの規模には達しませんし、出願者数そのものが増え続けている以上、実際の減り方はもっと緩やかになるはずです。それでも、基準を2ポイント動かすことが数百人単位の話になりうる。その規模感は、仮定込みで押さえておく価値があります。
短答式は既に1問あたりの配点調整を終えている
バランス調整には合格基準以外の対応もあります。短答式の1問あたり配点と試験時間の調整は、令和8年試験から実施済みです。
令和6年12月9日の公表で、審査会は計算問題のある科目(財務会計論・管理会計論)が1問8点、理論のみの科目(監査論・企業法)が1問5点という差を問題視しました。計算科目の1問あたり配点は理論科目の1.6倍。受験者数が増加するなかで合否に与える影響が大きくなっている、というのが審査会の説明です。
| 区分 | 配点 | 試験時間 | 問題数 |
|---|---|---|---|
| 調整前(令和7年試験まで) | 200点 | 120分 | 28問 |
| 調整後(令和8年試験以降) | 200点 | 150分 | 未確認 |
調整の中身は、計算科目の問題数を増やして1問あたりの配点を下げ、それに応じて試験時間も延ばすというものです。
大事なのは、各科目の配点合計と、計算問題と理論問題の合計点の割合そのものは変わっていない点です。財務会計論の配点は200点のまま。変わったのは点の刻み方と時間配分だけです。
問題単位でどの設問が何点かという内訳までは、審査会の確定版資料で逐語確認できていません。ここは分かりません。
出典 公認会計士・監査審査会「短答式試験の1問あたりの配点及び試験時間等の調整について」(令和6年12月9日)。
一部科目の合格基準は母集団ごと変わる
論文式は5科目一括合格が原則ですが、総合の得点比率が基準に届かなくても、個別科目で「相当の成績」を得た人には一部科目免除の資格が与えられます。この免除資格を取る基準そのものが、令和9年試験から作り替えられます。
現行の基準は「その年の合格者の平均得点比率以上」で、直近4年は55.7%から56.1%の範囲でした(令和4年56.0%、令和5年55.8%、令和6年55.7%、令和7年56.1%)。
令和9年からは、論文式の合格基準を54%へ引き上げるのに伴って、この基準が「各科目の答案提出者の上位15%の人員に当たる者の得点比率」に変わります。
母集団が変わっているので、55.7〜56.1%という過去の数字を令和9年以降の目安に使うのは無理があります。旧基準の母集団は「その年の最終合格者」で、新基準の母集団は「その科目の答案提出者全体」です。合格者は答案提出者の一部にすぎないので、上位15%が何%の得点比率に相当するかは、旧基準の水準とはそもそも比較できません。答案提出者全体を母集団にした上位15%の実際の得点比率は、審査会が令和9年の結果を公表するまで分かりません。
旧基準の水準感だけ確認しておきます。論文式の合格基準と一部科目免除の基準を年ごとに並べて差を取ると、令和4年は4.4ポイント(51.6%→56.0%)、令和5年は3.8ポイント(52.0%→55.8%)、令和6年は3.8ポイント(51.9%→55.7%)、令和7年は3.9ポイント(52.2%→56.1%)。差は3.8〜4.4ポイントでした。旧制度では、合格ラインより一段上の得点を取った人が科目免除の対象になっていたということです。
新基準では合格ラインが54%へ上がったうえで、免除の物差し自体が合格者ではなく答案提出者全体の上位15%に切り替わります。合格ラインと免除ラインの位置関係がそのまま保たれる保証はどこにもありませんし、公表文にも書かれていません。
私は論文式を3回受けています。2回目の令和3年に、監査論だけが得点比率56.30で一部科目免除の資格を取りました。その年の免除の基準は56.0%だったので、上回ったのは0.30です。3回目は監査論が免除になり、残りの4科目で合格しました。この年の監査論はほとんど勉強していなかったので、その経緯は公認会計士 監査論の記事に書いています。免除の2系統と資格・経歴による免除の一覧は公認会計士の科目免除の記事にまとめました。基準の母集団が変わる令和9年以降は、一段上を狙うか合格ラインだけを見るかという判断の材料そのものが変わります。
出典 公認会計士・監査審査会「令和4〜7年公認会計士試験(論文式試験)の合格点及び合格率等について」各年版1・3ページ、「公認会計士試験のバランス調整について」本文PDF 9ページ。
公認会計士試験の合格率は、この先どう動くか
出願者ベースの合格率はこの5年で9.6%から7.4%へ下がっているのに対し、論文式受験者ベースの合格率は34〜37%あたりで大きくは動いていません。この差が、審査会がバランス調整に踏み切った理由です。
| 年 | 出願者数(A) | 論文式受験者数(B) | 最終合格者数(C) | (C)/(A) | (C)/(B) |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年 | 14,192人 | 3,992人 | 1,360人 | 9.6% | 34.1% |
| 令和4年 | 18,789人 | 4,067人 | 1,456人 | 7.7% | 35.8% |
| 令和5年 | 20,317人 | 4,192人 | 1,544人 | 7.6% | 36.8% |
| 令和6年 | 21,573人 | 4,354人 | 1,603人 | 7.4% | 36.8% |
| 令和7年 | 22,056人 | 4,665人 | 1,636人 | 7.4% | 35.1% |
出願者数は平成27年以降10年連続で増えているのに、出願者ベースの合格率(C/A)はこの5年でむしろ9.6%から7.4%へ下がりました。一方で論文式受験者ベースの合格率(C/B)は34〜37%あたりで動いています。
これは審査会の統計から自分で計算した指標です。審査会が言う「30%台後半」(願書提出者ベース)と水準は近いのですが、母集団が同じだと確認できたわけではありません。審査会が見込むのは願書提出者ベースの低下です。論文式受験者ベースの指標がどう動くかは公表事項ではなく、この記事の推測にすぎません。それでも、この不均衡が令和9年からの改正全体の出発点になっているのは確かです。
短答式は2章の表のとおり、回ごとの振れが大きい。令和8年第Ⅱ回は9.0%で、令和7年第Ⅱ回の9.2%を下回っています。第Ⅰ回だけを追えば11.2%から12.2%へ上がっていますが、表全体で見れば上向き一辺倒ではありません。
短答式の合格基準そのものは動きません。ただ、審査会が合格者数を増やす運用を明記している以上、第Ⅰ回も第Ⅱ回も合格率は上振れしやすくなります。
短答式を抜けるタイミングで論文式の合格基準が変わる
ここが受験生の判断に直結する部分です。短答式試験に合格すると、合格発表の日から起算して2年を経過する日までに行われる短答式試験が免除されます。免除されるのは短答式そのもので、論文式の出願が直接免除されるわけではありません。
令和9年第Ⅰ回短答式(合格発表 令和9年1月22日)で合格した場合、免除の期限は令和11年1月22日。令和11年第Ⅰ回短答式が例年どおり前年12月に実施されるなら期限内に収まるので、短答式を受け直さずに令和9年、令和10年、令和11年のいずれの年も論文式に出願できます。
この場合、論文式は3回挑めます。ただし令和10年と令和11年分の実施日程は現時点では確定していないので、日程が公表されてから確定します。
この令和9年第Ⅰ回短答式は、合格基準の調整だけでなく英語による出題が始まる回でもあります。対象は財務会計論・管理会計論・監査論の3科目で、企業法は対象外。配点は短答式試験の総点数の5〜6%程度です。出題範囲や科目ごとの扱いは公認会計士試験の日程にまとめています。 短答式当日の会場や持ち物、待ち時間は公認会計士試験の当日に書きました。
論文式の合格基準は52%から54%へ、令和9年試験から3〜4年かけて段階的に上がります。段階的ということは、調整の初期に論文式へ進める人と、調整が完了したあとに進める人とでは、直面する基準そのものが違うということです。次の2つの立場を比べます。
令和9年第Ⅰ回で短答式を抜けた人
- 合格発表は令和9年1月22日、2年間の有効期間が令和11年1月頃まで続く
- 論文式は令和9年・10年・11年の3回に挑める
- 調整の1〜3年目、つまり基準がまだ54%に届いていない期間に何度も挑める
同じ実力でも、いつ抜けるかで条件が違う
調整が完了したあとに短答式を抜けた人
- 論文式に初めて挑む年には、基準は既に54%まで上がりきっている
- 審査会試算どおりなら、論文式の合格率(願書提出者ベース)は20%台後半の水準
- 2年の有効期間のうちに基準が変わる余地はもう無い
審査会は調整の年次刻み(52%からどの年に何%まで進むか)を公表していません。均等に割るなら1年あたり0.5〜0.7ポイントですが、これは私の推測で、公表数値ではありません。初年度を小さく刻んで様子を見る可能性も、後半に寄せる可能性も、公表文からは読み取れません。ここは分かりません。
ただし構造のほうは、公表された事実だけで確定します。短答式を早く抜けるほど、2年の有効期間が基準の低い時期と重なりやすい。実力の差ではなく、通過するタイミングの差です。
私は令和4年に公認会計士試験に合格しました。短答式は一発で通っていますが、論文式は3回受けています。間の2年はほとんど勉強していません。コロナで予備校が閉鎖になって、通う場所が無くなったところでモチベーションが切れました。当時は合格基準の水準そのものが調整の対象になっておらず、短答式に受かった年に「2年の余裕があるから急がなくていい」と考えることができました。今回の調整は、その余裕の中身を年によって違う物差しに変えます。短答式に受かった年が同じでも、論文式に挑む年をどこに置くかで基準が変わる。悠長に構えていい期間ではなくなりました。
なお、この時間の使い方の違いは資格そのものの選択にも効きます。公認会計士と税理士、どっちを選ぶかで比べました。短答式は年2回あるので、同じ年度内でも第Ⅰ回で抜けるか第Ⅱ回で抜けるかで免除の期限がずれます。数え方は先の例と同じです。免除の期限までに実施される短答式の回を洗い出して、いちばん後ろの回に対応する論文式まで出願できるかを見ます。
| 回 | 合格発表 | 免除期限 |
|---|---|---|
| 第Ⅰ回 | 令和9年1月22日 | 令和11年1月22日 |
| 第Ⅱ回 | 令和9年6月18日 | 令和11年6月18日 |
横にスクロールできます
第Ⅱ回は第Ⅰ回よりおよそ5か月遅く始まります。ただし令和10年と令和11年分の実施日程は確定していないので、第Ⅰ回と同じく3回に届くのかどうかは、日程が公表されてから確定します。 短答式・論文式から登録までの全体の流れは公認会計士試験の流れにまとめました。
会計専門職大学院ルートなら短答式を早く抜けられる
短答式を早く抜けるほど論文式の基準が低い時期に多く挑めるという構造を踏まえると、短答式そのものをどう抜けるかというルート選びも意味を持ってきます。会計専門職大学院を修了すると、短答式試験は財務会計論・管理会計論・監査論の3科目が免除され、企業法1科目だけになります。免除は特定資格等による免除の枠組みで、出願前に申請手続きが必要です。
この免除は、短答式に受かるタイミング自体を早められるという意味で、今回の調整と絡みます。企業法1科目だけなら、4科目そろえるより早い回で通過できる見込みが立てやすい。早く通過できれば、2年の有効期間を調整の初期、つまり論文式の基準がまだ54%に届いていない期間に重ねやすくなります。その1科目をどう抜けるかは公認会計士 企業法、足切りを避けるためにやったことに書きました。
会計専門職大学院ルート
- 短答式は企業法1科目だけに絞られる
- 2年の有効期間を調整の初期に重ねやすい
- 出願前に申請手続きが必要
時間の投じ方が違う
通常ルート
- 短答式は4科目をそろえる
- 通過する回が後ろにずれやすい
- 大学院進学の時間がかからない
ただし会計専門職大学院への進学自体に時間がかかるので、万人向けの近道ではありません。時間をどこに投じるかという選択の一つとして書いています。
出典 公認会計士・監査審査会「免除科目一覧」menjyokamoku.pdf。
背景にあるのは出願者10年連続増
なぜ審査会がこの調整に踏み切ったのか、数字で確認しておきます。出願者数は平成27年以降10年連続で増加していて、令和7年は前年比483人増でした。最終合格者数も5年連続で増えています。ただし合格者の伸びが出願者の伸びに追いつかず、出願者ベースの合格率は9.6%(令和3年)から7.4%(令和6・7年)へ下がりました。出願者が増え続けるかぎり、短答式の通過は相対的に難しくなり続けます。審査会が合格者数を増やす運用を取っているのは、この下降を止めるためです。
論文式側の基準を引き上げるのは、増えた通過者を同じ比率のまま合格させると、最終合格者数が制度の想定を超えて膨らむからだと読めます。誰がこの調整の影響を大きく受けるかも、属性の数字から見えます。令和7年の最終合格者1,636人を職業別・年齢別・学歴別に見ると、次のとおりです。
55.3%
職業別、学生の割合
61.2%
年齢別、20歳以上25歳未満の割合
39.9%
学歴別、大学在学中の合格の割合
学生が中心ということは、複数年かけて短答式と論文式に挑む時間的な余裕を持つ層が多いということでもあります。余裕がある層ほど、短答式をいつ抜けて論文式のどの年に挑むかという設計が効いてきます。論文式に合格したあとの修了考査と登録の話は合格した後の話にまとめました。
| 試験年 | 合格者総数 | CPA会計学院 | TAC | 資格の大原 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年 | 1,544人 | 786人(50.9%) | 345人 | 308人 |
| 令和6年 | 1,603人 | 973人(60.7%) | 335人 | 247人 |
| 令和7年 | 1,636人 | 1,092人(66.7%) | 313人(19.1%) | 181人(11.1%) |
これは各校が自社サイトで公表している数字で、審査会など第三者による集計ではありません。予備校を使わず独学で臨む選択肢については独学で受かるかで検討しています。それでも、CPA会計学院がこの3年で占有率を50.9%から66.7%まで伸ばし、かつて最大手だった資格の大原が3年連続で人数・占有率とも減っている傾向は、予備校選びの実質的な母集団がこの数年で大きく動いたことを示しています。バランス調整そのものとは別の要因ですが、令和9年以降に短答式・論文式へ挑む人の大半が、既にこの占有率の変化を経たあとの世代だという前提は押さえておく必要があります。
出典 公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験 合格者調」(出願者数・属性の数字)。予備校の合格実績は各社公式サイトの自己公表(CPA会計学院 cpa-net.jp/TAC tac-school.co.jp/資格の大原 o-hara.jp)。
手をつける順番
令和9年第Ⅰ回(令和8年12月13日)に挑むのか、それより後になるのかで、2年の有効期間がどの時期と重なるかが変わります
「基準が下がるから今回は楽」という前提で勉強量を削らないこと。合格率が上向くとしても、それは合格者数の運用によるものです
52%から54%への引き上げは段階的です。短答式を早く抜けるほど、論文式に低い基準で挑める回数が増えます
基準の母集団が変わるため、55.7〜56.1%という過去の水準を令和9年以降の目標得点として使わないこと
調整の年次刻みは審査会からまだ公表されていません。次に分かるのは令和9年試験の結果が出たあとです
日程と令和9年の変更点は 公認会計士試験の日程 令和9年は英語出題が始まる、関連記事は 公認会計士は働きながら短答まで 論文は辞めて専念した、制度全体の日程や英語出題の詳細は 公認会計士試験 カテゴリーで今後扱っていきます。
この記事の数値は令和7年6月12日公表の「公認会計士試験のバランス調整について」本文PDF、および審査会が公表した令和3〜8年の各年・各回の試験結果に基づきます。令和9年試験の具体的な年次刻みや、令和8年論文式試験の結果は本文書作成時点で未発表・未確認の項目があり、公表され次第更新します。
掲載内容は公認会計士・監査審査会の公表資料に基づくものであり、合格を保証するものではありません。
