公認会計士試験は、短答式のインプットまでは独学で持ちます。崩れるのは論文式です。偏差値による相対評価なのに模範解答が公開されないので、自分の答案がどの位置にあるのかを自分では測れません。
私は公務員試験を独学で通り、公認会計士試験は予備校を使って通りました。同じ人間の中で両方の結果が出ているので、独学で受かるかという問いにはひとことで答えられます。 学生のうちに受けるかどうかは公認会計士は大学生のうちに受けるべきかに書いています。
公務員試験は独学で受かります。公認会計士試験は、短答式のインプット段階までは独学で進められますが、論文式に入ると崩れます。
この記事は、どこまでが独学で持ち、どこから予備校の機能が要るのかという線引きだけを、自分の実例で書きます。独学で受かる方法を網羅するガイドではありません。
この記事でわかること
- 公認会計士 独学は短答式のインプットまでは持つが、論文式で崩れる理由
- 公務員試験を独学で通した経験が、公認会計士試験でそのまま使えなかった理由
- 「独学不可能」という予備校側の説明と、「独学で足りる」という体験談の両方が、それぞれ半分しか正しくない理由
- 独学と予備校を分ける実際の分岐点は、勉強法ではなくフィードバックの入手経路であること
- 予備校を使う場合に、何を予備校任せにして何を自分で決めるべきか
- 在籍は大原1社のみで、論文期の教材はCPAを使っていたという実際の内訳
- 大原の答練は量が多く実践的だった一方、テキストの網羅性は論文式で足りなかったという運用面の実感
- 働きながら勉強していたのは短答合格の直前までで、論文期は専念に切り替えた理由
- コロナで予備校が閉鎖された2年で止まった経験から見えた、予備校のもう一つの機能
公認会計士試験の独学は、短答式のどこまで持つのか
短答式試験のインプット段階、つまり条文や会計基準を覚え、計算パターンを解けるようにする作業そのものは、公認会計士 独学でも成立します。ここは公務員試験と同じ構造で、テキストを繰り返し、問題集を回すという作業に予備校の関与が必須ではありません。
短答式は4科目とも配点と出題範囲が公表されていて、正解が一つに決まるマークシート方式です。財務会計論が200点で他3科目の2倍という配点も、企業法と監査論が理論中心、財務会計論と管理会計論が計算中心という性格も、公表資料を読めば分かります。この配点構成を踏まえて理論に寄せる短答式の全体戦略は短答式試験は『財務ゲー』ではなく『理論ゲー』(note・¥850)に書きました。
自分の答えが合っているかどうかを、講師を介さずに問題集の正誤で確認できる。短答式のインプットが独学で持つのは、これがあるからです。
短答式のインプット
- マークシート方式で正解が一つに決まる
- 問題集の正誤で自分の理解度を確認できる
- 公表資料だけで出題範囲を把握できる
独学でも持つか、崩れるか
論文式の答案作成
- 相対評価で、絶対的な正解が公表されない
- 自分の答案の位置を自分では測れない
- 採点基準そのものが受験生には開示されない
私は令和4年に公認会計士試験に合格しました。ただ短答式の勉強を始めた最初の数か月は、正直なところ予備校の講義をほとんど自習室代わりに使っていました。
テキストを読んで問題集を解く作業自体は独学の延長です。予備校が答えを教えてくれるから進んだのではなく、正誤が問題集自体で判定できるから進んだ。あとから振り返ってそう気づきました。この段階で予備校が担っていたのは、講義の中身よりもカリキュラムの順番でした。財務会計論、管理会計論、監査論、企業法をどの順で、どの深さまで積み上げるか。テキストを1冊ずつ渡されただけでは、この設計図は作りにくい。
独学で埋めるなら、公表されている出題範囲と配点表から自分でカリキュラムを組み立てることになります。私はこの作業が苦にならないほうでしたが、それは公務員試験で一度、同じことを自分の手でやり切っていたからだと思います。
その公務員試験も、予備校には行っていないという意味での独学です。憲法や行政法は、公務員試験を受ける前提で大学の講義を意図的に取って、指定教科書で下地を作りました。まったくの手探りだったわけではありません。
公認会計士の独学が、論文式で崩れる理由
論文式に入ると、自分の答案が合っているかどうかを自分では判定できなくなります。これが独学が崩れる境目です。
論文式は素点ではなく、試験委員の採点結果を偏差値化した得点比率で合否を決めます。合格基準は総点数の得点比率52%を目安として審査会が相当と認めた得点比率とされ、実際は年によって51.5%から52.2%の範囲で動きます。
この偏差値化という仕組み自体が、独学者には決定的に不利に働きます。短答式のマークシートと違い、模範解答どおりに書けたかどうかを自分で判定する基準がない。自分の答案が採点分布のどのあたりにあるのか、測る手段そのものがありません。
これは租税法や経営学といった科目の攻略順や配点の話ではありません(その水準の話はEZARKブログの論文式攻略記事が扱っています)。ここで言いたいのは、もっと手前にある構造の問題です。答案の相対的な位置を測る手段を持たない状態で、複数科目・数か月分の答案を書き続けることになる。これは公務員試験の論文試験とは決定的に違います。
短答式は、自分の答えが正しいかどうかを問題集の解答欄という外部の基準に照らせます。独学でも、正誤の判定は自分一人で完結する。論文式はそうではありません。採点者がどこに配点を置き、どの表現を減点するか。その基準が受験生の手元にないので、答案を書き終えた瞬間に判断がつかない状態に置かれます。実力不足の問題ではなく、判定材料そのものが手の届く範囲に存在しない、という問題です。
「予備校に通っていないと公認会計士試験には受からない」という言い方を、掲示板やSNSでよく見かけます。これは半分だけ正しい言い方です。正確には、短答式のインプットは独学でも持つが、論文式の答練とフィードバックだけは独学で代替する手段がない、というのが実態です。「全部無理」と言い切ると、短答式まで独学を諦める理由にしてしまう人が出てきますが、それは違います。
公務員試験の独学とは何が違うのか
違いは物差しの有無です。公務員試験の論文試験には代わりの物差しがありますが、公認会計士試験の論文式にはありません。
公務員試験の論文試験は、出題テーマこそ幅がありますが、公開されている過去の再現答案や、人事院・各自治体が公表する出題の趣旨を突き合わせれば、「何を書けば筋が通るか」を独学者が自分で検証できます。合否のボーダーも公表される試験区分が多く、自分の答案が最低限の水準を満たしているかを、ある程度は自分で推測できます。
公認会計士試験の論文式には、この代替物がありません。審査会は採点基準を公表しませんし、模範解答も公開されない。
公務員試験の論文試験
- 公開された再現答案や出題の趣旨を公表資料で検証できる
- 合否のボーダーが公表される試験区分が多い
- 志望先ごとに科目が分かれ、重なりを数えて絞り込める
物差しがあるか、ないか
公認会計士試験の論文式
- 採点基準も模範解答も公表されない
- 答案の型がどれだけ外れているか外から指摘されない
- 科目の重なりで負担を減らす発想がほとんど効かない
しかも科目は会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目の5つで、それぞれ求められる書き方の型が違います。独学のまま答案を書き続けても、自分の答案がどの型からどれだけ外れているのかを外から指摘してもらえない。
同じ独学という言葉を使っていても、公務員試験と公認会計士試験でまったく違う結果になったのはこのためです。私が公務員試験を独学で通せたのは、勉強量や地頭の問題である以前に、論文試験に代わりの物差しがあったからだと今は思っています。公認会計士試験は論文式の全科目に記述があり、独学は厳しいと考えて、最初から予備校にしました。
もう一つ違うのは、科目どうしの独立性です。公務員試験は志望先ごとに科目構成が分かれていて、重なりを数えながら勉強する科目そのものを絞り込めます(専門科目は11科目に収束するで数えました)。
公認会計士試験では、科目の重なりで負担を減らすという発想がほとんど効きません。財務会計論の理解が管理会計論を助けることはあっても、どちらかを丸ごと捨てて他方で埋め合わせる構造にはならない。絞り込む余地の少なさも、独学での負荷を押し上げます。論文式まで進むと話は変わり、私自身は管理会計論と監査論の勉強をほぼ止めて租税法・経営学に寄せる判断をしました。その経緯は管理会計と監査論は勉強するな(note・無料)に書いています。
独学の限界を予備校の何で埋めたか
私が予備校に払っていた対価の実質は、講義そのものより答練の採点とフィードバックでした。
短答式のインプットは独学の延長で進められました。ただ論文式の答練を提出すると、答案の型がどこまで通用するかという指摘が返ってきます。この往復が無ければ、自分の答案の位置が分からないまま本番を迎えていたはずです。
予備校を使った合格者の占有率も書いておきます。大手3社の自己公表実績を並べると、令和7年(2025年)合格者1,636人のうち本科コースの受講割合は次のとおりです。各社の定義が違うので単純合算はできませんが、合格者の大半が本科コースを受講しているのは確かです。
66.7%
CPA会計学院の自己公表割合
19.1%
TACの自己公表割合
11.1%
資格の大原の自己公表割合
この数字を根拠に独学は不可能と言い切る記事をよく見ます。正確には、短答式のインプットまでは独学の延長で進み、論文式の答練とフィードバックだけは代替が効かない、という構造の結果です。答練という機能さえ確保できれば、予備校の講義そのものに全面的に依存する必要はありませんでした。
自分の内訳も書いておきます。所属していたのは大原だけです。ただし論文式の勉強では、CPAのテキストと問題集をかなりの量使っていました。答練と採点は大原、論文期の教材はCPA、という形です。両方に本科で申し込んだわけではなく、在籍は1社で、足りない教材だけ別の予備校のものを買っています。「予備校を使う」は一社に全部任せることと同じではないという話で、ここが独学と予備校の中間にある実際の形です。答練という機能は在籍先から取り、教材という機能は品物として選ぶ。独学で崩れるのは答練のほうなので、この分け方で困りませんでした。
大原を選んだ理由は、良かった点と合わなかった点の両方に運用の中身があります。良かったのはインプットの量です。範囲が絞られていて、覚える分量そのものが少なくて済みました。そのぶん答練の量は多く、答案を書いて返ってくる経験は積めました。
合わなかったのは逆側です。答練が多すぎて、正直すべては消化しきれていません。もう一つ、テキストの網羅性が足りないと感じる場面が、特に論文式でありました。短答式のインプットなら足りる範囲でも、論文式で問われる周辺論点までは拾いきれていなかった。論文期にCPAの教材を使ったのは、この隙間を埋めるためです。
大原で良かった点
- インプットの範囲が絞られていて、勉強量を抑えられた
- 答練が豊富で、答案を書く実践量を積めた
運用面の良し悪し
大原で合わなかった点
- 答練の量が多すぎて、全部は消化しきれなかった
- テキストの網羅性が足りず、論文式ではきつい場面があった
講義の質がどうという話ではありません。量と範囲の設計が、短答式には合って論文式には足りなかった。1社に全部を求めず、足りない部分だけ他で埋めるという判断は、この運用面の実感から来ています。
出典 公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験 合格者調」(合格者総数1,636人)。予備校の合格実績は各社公式サイトの自己公表(CPA会計学院 cpa-net.jp/TAC tac-school.co.jp/資格の大原 o-hara.jp)。占有率の推移や合格率調整の詳細は公認会計士試験の合格基準が動く記事で扱っています。
予備校が閉鎖された2年で、もう一つの機能が分かった
私は短答式を一発で通したあと、論文式を3回受けています。落ちた2年のあいだ、ほとんど勉強していません。
原因はコロナで予備校が閉鎖になったことです。通う場所が無くなって、そこでモチベーションが切れました。意志が弱かったという話に落としたいところですが、起きたことを正確に書くとこうなります。答練の採点という機能は郵送やオンラインで続いていたのに、私のほうが止まりました。
ここまで私は、予備校の価値は答練とフィードバックだと書いてきました。それは2年かけて自分で反証しています。もう一つあったのは、行く場所があることそのものです。カリキュラムの順番と同じ種類の、中身ではない機能です。
この話が独学の判断に効くのは、独学を選ぶ人が自分で用意しなければならないものが、教材と答練だけではないという点です。机に向かう理由を外から与えてくれるものを、独学は最初から持っていません。公務員試験のときは大学に通いながらで、始めてから本番までが半年しかなかったので、そこが問題になりませんでした。会計士試験は年単位なので、同じようにはいきませんでした。
短答に通ってから論文に落ちるまでの2年を振り返って言えるのは、崩れるのは理解でも教材でもなく、続ける枠組みのほうだということです。独学で行くなら、答練をどう確保するかと同じ重さで、止まったときに戻る方法を決めておいたほうがいい。私は決めていなかったので、三振のリーチがかかるまで戻れませんでした。
そこから租税法と経営学に寄せる形に切り替えて、3年目に通っています。戦略を変えて受かったという話になりがちですが、実際には2年止まったあとで残り1回しか無くなったから動いた、という順番です。
短答合格の直前までは、働きながらだった
時期の話も書いておきます。職歴は財務省財務局が1年3か月、そのあと税理士法人です。働きながら勉強していたのは短答式に合格する直前までで、その勤め先は財務局ではなく税理士法人のほうです。短答を抜けてから退職して、論文期は専念しました。
- 財務省財務局に1年3か月勤務
- その後、税理士法人に勤務
- 短答式に合格する直前まで、税理士法人で働きながら勉強
- 短答式を抜けてから退職。論文期は専念に切り替えました
この分かれ方は偶然ではないと思っています。前の章に書いたとおり、短答式のインプットはテキストと問題集の正誤で自分の進み具合が測れるので、まとまった時間が取れない日が続いても積み上がります。働きながら進めるのに向いているのはこちら側です。
論文式は答練を出して返ってくる往復が中心になります。提出のペースを落とすと、そのぶん自分の答案の位置が分からない期間が延びる。兼業で削るなら短答期ではなく論文期のほうが高くつくという順序になります。
働きながら受験を考えているなら、短答合格までを兼業の射程に入れて、論文期をどう空けるかを先に決めておくほうがいい。合格者の職業内訳を数えた話は公認会計士は働きながら短答までに分けました。私の場合はそこで退職という形を取りました。これが唯一の答えではありませんが、短答と論文で必要なものが違うという構造自体は、誰が受けても同じです。
独学のまま論文式まで押し切るとどうなるか
私は論文式を独学のまま押し切ったことがないので、ここは見聞きした範囲の話です。
答練のフィードバックを受けずに論文式に臨んだ知人がいます。短答式は独学で通っていたのに、論文式では答案の型そのものが試験委員の求める水準からずれていることに気づけないまま、複数回受け直していました。
これは「地頭が足りなかった」という話ではありません。答案の型がずれているかどうかを判定する手段を独学の中に持っていなかった、という一点に尽きます。物差しを外から借りる以外に、この段階を独学で埋める方法を私は知りません。ここは分からないと書くしかない部分ですが、少なくとも自分の実例と、周囲で見た範囲の実例からは、そう言えます。
答練を独学で代替する工夫として、市販の過去の論文式問題を解いて模範解答と突き合わせる方法もあります。短答式のインプットの延長としては効きますが、限界もはっきりしています。 過去問の入手先と、短答・論文での回し方は公認会計士の過去問にまとめています。
市販の模範解答は合格レベルの一例であって、採点者が実際にどこへ配点しているかまでは示してくれません。表面上は模範解答に似ていても、配点されていない部分を厚く書き、配点されている部分を薄く書いている。この事態に独学では気づけません。
答練が返してくる指摘は、この配点の重心のずれを外側から教えてくれるものです。
独学と予備校をどう組み合わせるか
ここまでの線引きを踏まえると、判断は単純です。短答式のインプットは自分のペースで独学のまま進め、論文式に入る前後で答練とフィードバックの機能だけを外から確保する。これが、私が公務員試験と公認会計士試験の両方を通して行き着いた組み合わせ方です。
予備校を選ぶ基準も、この機能で絞り込めます。講義の分かりやすさや教材の量より、論文式の答練がどれだけ頻繁に回り、採点者からの指摘がどれだけ具体的に返ってくるか。そちらを優先して見てください。
ただ、自分の2年を踏まえると、ここに一つ足す必要があります。答練という機能に加えて、止まったときに戻る仕組みを持っているかどうか。通学の枠組みでそれを代替していると、枠組みが消えたときに何も残りません。独学を選ぶなら、はじめから自分で用意するものとして数えておくほうが安全です。
この観点での予備校比較は、実際に使った予備校を含めてnoteに書いています。組み合わせを検討するなら、現実的なのは3パターンです。
- 本科コースをそのまま通す方法。短答式のインプットから論文式の答練まで一貫して管理されるので、自己管理に不安がある人に向きます
- 短答式のインプットを独学で進め、論文式の答練だけを単科講座で組み込む方法。費用を抑えつつ、物差しの無さだけを埋められます
- 会計専門職大学院を経由して短答式の一部科目(財務会計論、管理会計論、監査論)を免除で通過する方法。短答式の負荷そのものを下げて、論文式の答練に時間を回せます
どれが向くかは、自己管理力と使える時間、費用のどこに重きを置くかで変わります。この記事だけでは決められません。
公務員試験の側で独学の設計がどこまで通用するかは、公務員試験の全体像に書きました。同じ独学という言葉でも、試験の物差しの有無で結果がここまで変わる。両方を内側から見て初めて言えることだと思います。
独学に向いている人と向いていない人
短答式のインプットを自分のペースで進められる自己管理力があり、かつ論文式に入る段階で答練だけを単科・単発で受けられる環境を確保できるなら、費用を抑えながら公認会計士 独学に近い進め方は可能です。実際、答練パックだけを提供する予備校の単科講座は存在します。
向いていないのは、短答式のインプットの段階から誰かに管理してもらわないと進まないタイプです。この場合は答練以前の問題として、短答式の通学講義から予備校に頼ったほうが早い。
独学に近い進め方が向く人
- 短答式のインプットを自分のペースで進められる
- 論文式の答練だけを単科・単発で受けられる環境を確保できる
管理を自分でできるか
予備校に早く頼ったほうがいい人
- 短答式のインプットの段階から誰かに管理してもらわないと進まない
- 答練以前の、通学講義から必要になる
私は短答式のインプットを独学の延長で進められましたが、それは公務員試験で同じやり方を一度通していたからです。初めて難関試験に挑む人が同じペースで進められるとはかぎりません。勉強法の巧拙ではなく、自分の性格を先に見極める話です。もう一つ、見落とされやすい判断材料があります。短答式に複数回挑む前提を置くかどうかです。
短答式に合格すると、合格発表の日から2年間は短答式が免除されます。独学でインプットを進めて一度通過してしまえば、その後の2年間は論文式の答練に集中できる。
逆に短答式で複数回足踏みする見通しが立つなら、最初から通学講義でインプットの速度を上げたほうが、トータルでは短くなる可能性があります。短答式に何回で抜けられそうか。独学か予備校かを決める前に、一度見立てておく価値があります。公務員試験の独学と比べて、公認会計士試験にはもう一つ厄介な点があります。撤退の判断がしにくい。
公務員試験は年に一度、決まった時期に結果が出るので、再挑戦するか進路を変えるかを短いサイクルで判断できます。公認会計士試験は短答式が年2回、論文式が年1回。短答式だけを繰り返し通過しながら論文式で足踏みする状態が、何年も続くことがあります。物差しを持たないまま足踏みが続くと、どこで方針を変えるべきかという判断そのものが遅れます。私が答練を早い段階で確保する方向に舵を切ったのも、このリスクを避けたかったからです。
独学の情報をどこまで信じるべきか
検索で公認会計士 独学と調べると、上位に出てくるのはほぼ予備校自身が運営するコラムです。これ自体は不思議ではなく、大手予備校のサイトが検索結果を占めるのは、予備校が集客のためにコンテンツへ投資しているからで、悪いことではありません。ただし読み方には注意が要ります。
予備校のコラムに共通するのは「独学の合格率は1%未満」といった数字の出し方です。
多くは、合格者全体に占める予備校利用者の割合(前章の66.7%、19.1%、11.1%といった自己公表実績)から逆算した推計です。審査会が独学者と予備校利用者を区分して公表した一次データではありません。
数字自体を疑う必要はありません。ただ、独学は不可能という結論の根拠が審査会の一次情報ではなく予備校側の推計だ、という出どころは押さえておいてください。
予備校コラムの数字
- 合格者に占める予備校利用者の割合から逆算した推計
- 審査会が独学者と区分して公表した一次データではない
どちらも出どころに偏りがある
個人の体験談
- 合格に至った少数の成功例だけが記事として残りやすい
- 短答式で撤退した人の記録は基本的に残らない(生存者バイアス)
一方で、独学合格者の体験談ブログや個人noteの側にも偏りがあります。合格に至った少数の成功例だけが記事として残りやすく、短答式で心が折れて撤退した人の記録は基本的に残りません。生存者バイアスという言葉どおりで、「独学でも受かった」という体験談を読んで、自分も同じ道を選べば同じ結果になると考えるのも危うい読み方です。
この記事の立場はそのどちらでもありません。短答式のインプットと論文式の答練を分けて考えれば、独学が効く範囲と代替できない範囲は、制度の構造からある程度まで説明できます。
合格率の数字だけで独学の可否を語る記事は、この分解をしていないぶん粗い。
手をつける順番
テキストと問題集の正誤で自分の理解度を確認できる段階なので、予備校の通学講義が無くても進められます
通学の本科コースを使うか、答練だけの単科講座を組み合わせるかを、論文式に入る前の段階で決めておきます
論文式は偏差値による相対評価です。模範解答が公開されない以上、外部からの指摘なしに答案の型を自己判定しない
短答式の段階で管理者が要ると感じるなら、その時点で通学講義から予備校に頼ったほうが早く進みます
公認会計士試験の制度そのものについては合格基準の調整を扱った記事、公務員試験の全体像は公務員試験の全体像を扱った記事で扱っています。予備校選びの詳細な比較はnoteの記事に譲っています。
この記事の制度に関する数値は公認会計士・監査審査会の公表資料、予備校の合格実績は各社公式サイトの自己公表に基づきます。個人の体験に基づく部分は、あくまで一つの実例として書いています。
掲載内容は独学・予備校いずれの進め方についても合格を保証するものではありません。
