令和4年の論文式試験で、私は監査論を受けていない。前の年に取った一部科目免除を使ったからで、この年に私は合格した。
公認会計士試験の科目免除は、成り立ちの違う2つの制度が同じ名前で呼ばれている。試験の結果でもらうものと、資格や経歴でもらうものだ。期間も手続きも、免除される科目の決まり方も別になる。
公認会計士 科目免除の2系統
科目免除は、試験の結果でもらうものと、資格や経歴でもらうものの2系統に分かれる。前者は出願のときに通知書の番号を入力すれば使える。後者は出願の前に免除申請をして、免除通知書を受け取っておく必要がある。
| 入口 | 免除されるもの | 手続き |
|---|---|---|
| 短答式試験に合格 | 短答式の全科目。合格発表の日から2年を経過する日までの短答式で使える | 出願時に短答式試験合格通知書の番号を入力する。事前の免除申請は要らない |
| 論文式試験で一部科目免除資格を取得 | 免除資格を取った科目。合格発表の日から2年を経過する日までの論文式で使える | 出願時に論文式試験一部科目免除資格通知書の番号を入力する。事前の免除申請は要らない |
| 特定の資格・経歴 | 資格ごとに決まった科目(次の節の表) | 出願の前に免除申請書を審査会へ郵送し、免除通知書を受け取る。期限は受験案内に書かれている |
出典は公認会計士・監査審査会「公認会計士試験Q&A」の免除の項(Q59・Q60・Q65)。
短答式に合格した人は、論文式で落ちても翌年から短答式が免除される。審査会のQ&Aの例だと、令和6年の短答式に合格して論文式で不合格だった人は、令和7年と令和8年の試験で短答式を受けず、論文式から受けられる。
公認会計士 科目免除になる資格と、免除される科目
免除の対象になる資格と経歴は、審査会の一覧で14区分ある。短答式の財務会計論だけが免除される区分から、短答式が全部免除される区分まで幅がある。
| 資格要件 | 短答式 | 論文式 |
|---|---|---|
| 商学の教授・准教授、商学博士 | 全部 | 会計学、経営学 |
| 法律学の教授・准教授、法律学博士 | 全部 | 企業法、民法 |
| 経済学の教授・准教授、経済学博士 | なし | 経済学 |
| 司法修習生となる資格を得た方(高等試験司法科試験の合格を除く)、司法試験合格者(令和4年9月30日以前に免除通知書を交付された方) | 全部 | 企業法、民法 |
| 旧司法試験第2次試験合格者 | 全部 | 旧試験で受験した科目(商法なら企業法、会計学なら会計学) |
| 税理士となる資格を有する方 | 財務会計論 | 租税法 |
| 税理士試験の簿記論・財務諸表論の合格者 | 財務会計論 | なし |
| 会計専門職大学院の修了者(見込者を含む。詳細は受験案内) | 財務会計論、管理会計論、監査論 | なし |
| 上場会社等で会計等に関する事務に7年以上従事した方 | 財務会計論 | なし |
| 不動産鑑定士試験合格者、旧不動産鑑定士試験第2次試験合格者 | なし | 経済学または民法 |
| 企業会計の基準の設定等の事務に従事し、審査会の認定を受けた方 | なし | 会計学 |
| 監査基準の設定等の事務に従事し、審査会の認定を受けた方 | なし | 監査論 |
| 旧公認会計士試験第2次試験合格者のうち、論文式で免除を受けた科目がある方 | なし | 旧試験で免除を受けた科目(商法なら企業法) |
| 高等試験本試験合格者 | 全部 | 本試験で受験した科目(商法なら企業法) |
「なし」は原表の「―」。太字は税理士試験と会計専門職大学院に関わる行。
税理士試験の簿記論と財務諸表論に受かっていれば、短答式の財務会計論が免除される。管理会計論、監査論、企業法の3科目は残る。会計専門職大学院を修了すると短答式は企業法だけになり、この道は合格基準の記事で短答式を早く抜ける手段として書いた。入試と学費は5校の要項で比べた記事にある。 短答式・論文式から登録までの流れは公認会計士試験の流れにまとめた。
免除は点をもらう仕組みではなく、その科目を採点の対象から外す仕組みだ。審査会のQ&Aによると、短答式は免除科目を除いた残りの合計得点比率で合否を判定する。財務会計論が免除されれば、200点を除いた300点満点で、70%を目安に勝負することになる。
資格の名前から思い浮かべる範囲と、一覧の範囲がずれる例もある。弁護士は税理士法の税理士となる資格を有する者に当たるが、この行の免除の対象には含まれない、と審査会がQ&Aに書いている。上場会社等で7年の行も、会計または監査に関する事務か業務に通算7年以上従事した期間が対象で、財務書類の調製に係る事務(特別の判断を要しない機械的な事務は除く)か、社内の会計監査の業務を指す。 会計士の側から税理士になる要件と手順は公認会計士の税理士登録にまとめた。
免除通知書に載った科目を、全部使う必要はない。出願のときに、免除を受ける科目を選べる。ただし短答式の全部免除を取った人は、短答式の一部の科目だけを受けることはできない。平成18年以降に免除通知書を受け取っていれば、出願のたびに申請し直す必要もない。
論文式の一部科目免除を取った人数(令和3〜7年)
論文式で合格に届かなかった人のうち、5人に1人ほどが一部科目免除の資格を取っている。令和7年は669人で、論文式を受けて合格しなかった3,029人の22.1%にあたる。
| 試験年 | 免除の基準(得点比率) | 免除資格取得者 | うち科目の延べ人数 | 論文式の不合格者 | 不合格者に占める割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年 | 56.0% | 527人 | 642人 | 2,632人 | 20.0% |
| 令和4年 | 56.0% | 504人 | 593人 | 2,611人 | 19.3% |
| 令和5年 | 55.8% | 544人 | 631人 | 2,648人 | 20.5% |
| 令和6年 | 55.7% | 605人 | 719人 | 2,751人 | 22.0% |
| 令和7年 | 56.1% | 669人 | 780人 | 3,029人 | 22.1% |
免除資格取得者は人数ベース。不合格者は、論文式の受験者数から最終合格者数を引いて私が計算した。審査会「合格発表の概要」「合格点及び合格率等について」の各年から拾った。
免除の基準は、その年の合格者の平均得点比率以上だ。令和3〜7年は55.7〜56.1%で、合格点の51.5〜52.2%より3.8〜4.5ポイント高い。総合で落ちても、1科目だけ合格ラインより4ポイントほど上を取れば免除が付く。得点比率は素点ではなく、採点した試験委員の平均点からどれだけ離れているかを表す偏差値で出す。
人数は5年で527人から669人に増えた。論文式の受験者も3,992人から4,665人に増えていて、受験者に対する割合は12.4%から14.3%の間を動いている。
論文式の免除期間と短答式の免除期間
論文式の一部科目免除は、免除資格を取った論文式の合格発表の日から、2年を経過する日まで有効だ。短答式の免除がいつ切れるかとは関係なく数える。
短答式の免除
短答式に合格した発表の日が起点。2年で切れる。切れたら短答式を受け直して合格する
起点になる発表が違う
論文式の一部科目免除
免除資格を取った論文式の発表の日が起点。短答式の期限は影響しない
審査会のQ&Aの例はこうだ。令和5年の短答式に合格した人が、令和6年か令和7年の論文式で免除資格を取ったとする。令和8年は短答式を受けて合格しないと論文式に進めないが、令和8年の出願時に、その免除は適用できる。
私の令和3年の免除は、令和3年11月の合格発表から2年を経過する日まで使える。論文式は毎年8月なので、対象は令和4年と令和5年の2回だった。
免除を使った令和4年の論文式
令和4年の論文式で、私は監査論を受けなかった。残る4科目の合計で合否が決まる形になった。
監査論が免除になって空いた時間は、普通に他の科目の勉強に使った。免除通知書の受け取りも、出願時の番号入力も、困ったことは特になかった。資格・経歴による免除は、私は使っていない。
公認会計士・監査審査会「公認会計士試験Q&A」Q36
なお、免除の適用を受けた試験科目がある場合は、当該免除科目を除いた他の科目の合計得点の比率によって合否が判定されます。
令和3年の私は、総合では合格に届かなかった。監査論の1科目だけが基準を超えていて、得点比率56.30、基準は56.0%だった。免除が付いたと知ったときは、驚きとうれしさがあった。全く勉強せずに、とりあえず受けただけの論文式だったからだ。勉強していないのに免除をもらえるのか、そんなにできたっけ、という感じだった。成績通知書の数字や、監査論の論文式でやっておけば足りることは、監査論の記事に書いた。次に読むなら、その1本を薦める。
令和9年の公認会計士 科目免除の変更点
令和9年試験から、論文式の一部科目免除の基準が変わる。審査会は令和7年6月のバランス調整の報告書で、合格者の平均得点比率から、各科目の答案提出者の上位15%の人数にあたる者の得点比率へ改める方針を示している。
令和8年試験まで
その年の合格者の平均得点比率。令和3〜7年は55.7〜56.1%
比べる相手が違う
令和9年試験から
各科目の答案提出者の上位15%の人数にあたる者の得点比率。審査会が相当と認めた得点比率以上が免除
比べる相手が合格者から答案提出者全体に移るので、56%前後という過去の数字は新しい基準の目安にならない。論文式の合格基準も、52%前後から54%へ3〜4年かけて上がる。そちらは合格基準の記事に書いた。
資格や経歴による免除は、同じ報告書で別の扱いを受けている。審査会は、免除要件の適正化を、公認会計士法を所管する金融庁に働きかけていく必要があると書いた。理由に挙げたのは、資格の専門性と免除される科目が見合わない例があることと、免除を申請したあとの受験率が低い要件があることだ。
見合わない例として脚注に出てくるのが、商学の教授などだ。短答式が全部免除され、論文式の会計学と経営学も免除されるが、商学は幅広い分野なので、会計学や経営学と別の専門の人でも免除になる。どの要件をどう変えるかは、報告書に書かれていない。
令和9年の免除の線が何%になるかは、試験が終わって審査会が基準を決めるまで分からない。令和9年の論文式の合格発表は、令和9年11月19日の予定になっている。
資格や経歴による免除の要件が、実際に法令の改正まで進むのかどうかは、確認できていない。報告書の方針が出たあとの改正の公表は、私が探した範囲では見つからなかった。
免除資格を取った人が、その後に合格したのかどうかは分からない。審査会の資料で見つかったのは、免除資格取得者の人数と科目の延べ人数までで、どの科目で免除が多いのか、免除を持った人の次の年の合格率は、公表を確認できていない。
免除を取った監査論の話と、短答式の科目別の平均得点比率は、こちらに書いた。
公認会計士と税理士の相互免除は公認会計士と税理士の比較の記事に、税理士試験側の大学院による免除は税法免除の大学院の記事にある。公認会計士試験の制度そのものについては 公認会計士試験 カテゴリーで扱っています。
免除申請の期限と、見込者の扱いは年度ごとの受験案内に書かれています。受験前には最新の受験案内を確認してください。
