国家公務員と地方公務員の違いのうち、私が比べられるのは、財務局と特別区の受験・採用の側です。違いは、試験の選び方と採用の動き出す時期にいちばん出ました。
私は国家側で、財務専門官の枠で財務局に入り、1年3か月働いた元公務員です。地方側は特別区に最終合格し、区の提示を受けて辞退しました。地方公務員として働いた経験はないので、地方の仕事の中身は聞いた話に限って書きます。 財務専門官の合格点と倍率は財務専門官のボーダーにまとめました。
国家公務員と地方公務員の違いは、試験と採用を行う組織から分かれる
国家公務員の採用試験は人事院が実施し、採用するのは各府省や出先機関です。地方公務員は、都道府県・市区町村ごとに試験を行い、採用するのもその自治体です。
| 区分 | 試験を行う組織 | 採用する組織 |
|---|---|---|
| 国家一般職・財務専門官 | 人事院 | 各府省・出先機関(財務専門官は財務局) |
| 特別区 | 特別区人事委員会 | 各区 |
| 地方上級・市役所 | 各自治体 | その自治体 |
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給与の決まり方も、組織によって分かれます。国家公務員の給与は、人事院が民間との比較をもとに毎年勧告し、それを受けた法律の改正で決まります。地方公務員の給与は各自治体の条例で決まり、人事委員会を置く自治体では、人事委員会が毎年、給料表が適当かどうかを議会と長に報告します。地方公務員法は、給与を定めるときに、生計費や、国・他の自治体の職員、民間事業の従事者の給与を考慮するよう求めています。国と自治体の給料が近い水準に収まりやすい背景です。
地方公務員のなかで、私が受けたのは特別区と市役所2つです。特別区の話を、地方全体に広げて読まないでください。国家公務員の府省庁や出先機関の数え方は公務員の職種の数え方の記事にまとめています。
地方公務員の数と給与水準は、総務省の公表値で見る
地方公務員は、2025年4月1日現在で約281万人います。総務省の定員管理調査では、教育と一般行政で全体の7割ほどを占めます。
| 部門 | 職員数 |
|---|---|
| 教育 | 1,067,557人 |
| 一般行政 | 950,628人 |
| 公営企業等会計 | 338,306人 |
| 警察 | 286,560人 |
| 消防 | 166,247人 |
| 合計 | 2,809,298人 |
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事務系の公務員が働く一般行政は、このうち約95万人です。1994年(約117万人)と比べると約19%減っています。
給与水準は、総務省が毎年、国の行政職俸給表(一)適用職員を100とした指数(ラスパイレス指数)で公表しています。2024年4月1日現在の全団体平均は98.8でした。国より少し低い水準です。団体ごとのばらつきは大きく、特別区は96.0(荒川区)から100.6(中央区)、町村は76.9(沖縄県多良間村)から103.3(京都府大山崎町)の範囲でした。 国家公務員の側で副業が認められる条件と手順は国家公務員の副業に書きました。
国家公務員と地方公務員の違いを、財務局の仕事の相手で見る
受験前の私は、国家は事業者や他機関が相手の仕事、地方は住民が相手の仕事だと考えていました。財務局の金融の部門で働いてみると、相手は事業者だけではありませんでした。
受験前の理解(国家)
対事業者のBtoB
働いて見えたこと
財務局の金融の部門
事業者に加えて、金融庁との調整が多い
私がいたのは金融監督の系統で、金融庁との調整業務が多くを占めていました。国有財産などの部門は、逆に財務本省との調整が多いと聞いています。部門によって、仕事の相手は違うようです。
受験前の理解のうち、いちばん違ったのは国家は対事業者という部分でした。財務局は金融機関などの事業者だけでなく、金融庁や財務省の本省とのつなぎ役としての仕事も多く、内側と外側の両方との調整が要ります。受験前に思っていたより厳しい仕事でした。
もうひとつ違ったのは、意思決定の重さです。組織が大きいので、ひとつの決定にも多くの決裁ルートを通します。慎重で正確ですが、スピード感に欠けると感じる場面もありました。
国家公務員の転勤は、財務局で見た範囲で書く
国家公務員は全国転勤を覚悟する職、と言われがちですが、私が入った財務局は、若いうちに1回は地方へ出ると聞いていました。地方のポストは少なく、ほとんどは埼玉・東京・千葉です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地方への異動 | 若いうちに1回は地方へ出ると聞いていた |
| ポストの場所 | 地方のポストは少なく、ほとんどは埼玉・東京・千葉 |
| 同期の異動先(聞いた話) | 甲府・前橋・宇都宮・新潟など |
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同期のなかで地方へ出た人は、甲府・前橋・宇都宮・新潟などに行っているようでした。どこも私が受けた関東甲信越の区分の中です。地方に行きたがる人が少ないので、希望すれば行けるようで、係長になってからでも一度くらいは行くようです。ここは同期から聞いた話で、私は1年3か月で辞めているので、実際の異動の内示は経験していません。
1年目の終わり頃に、次年度に向けた異動の希望調査はありました。どこに配属されたいか、どんな業務に興味があるかを書類で出す機会は、若手にも与えられていました。
国家公務員でも、出先機関によって転勤の範囲は変わります。財務局の例だけで国家全体を語ることはできないので、出先機関ごとの違いは公務員の職種の数え方の記事に書きました。
給料の差は、地域手当に出る
私の印象では、特別区と財務局の給料はほとんど同じでした。はっきり差が出たのは、地域手当です。
特別区に勤務する国家公務員の例
地域手当の支給割合は20%
地域手当の支給割合
私の勤務地(さいたま市・当時)
地域手当の支給割合は15%
財務局は関東甲信越の勤務地ごとに地域手当が決まるので、東京以外で働くと特別区より少なくなります。数字は、人事院が特別区勤務の例として挙げている20%と、私が当時勤務していたさいたま市の15%です。さいたま市の15%は当時の値です。私の1年目の明細は国家公務員1年目の給与明細の記事に載せています。
財務局の特徴として、官舎に入りやすいことがあります。財務局は国有財産を管理しているので、官舎に入っている同期を何人も見ました。私は入っていませんが、割安で住めると聞きました。建物の古さは場所によって当たり外れがあるようです。
国家公務員と地方公務員の違い 試験の形は選び方の単位が違う
試験の形でいちばん違うのは、専門科目を選ぶ単位です。国家一般職は科目単位、財務専門官は必須と選択の組み合わせ、特別区は問題単位で選びます。
| 試験 | 専門択一の選び方 | 記述・論文 |
|---|---|---|
| 国家一般職 | 16科目から8科目を選び、選んだ科目の5題を全部解く | 一般論文あり。専門記述なし |
| 財務専門官 | 必須2科目28題と、選択8科目から2科目12題 | 専門記述あり(5科目から1科目) |
| 特別区 | 11分野55題から任意の40題を選ぶ | 論文あり。専門記述なし |
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私が特別区を受けた理由は、専門科目が多く国家系の受験者に有利なことと、専門記述がないことでした。特別区は問題単位で選べるので、苦手な分野を丸ごと外して残りで40題を埋められます。
特別区の配点は公表されていません。アガルートは論文と面接の比重が高いと説明し、LECは論文のウェイトが高いことで知られていると説明しています。私も、成績の席次を見たときに、論文の配点がかなり高いと感じました。
私が受けた地方の試験と、受けなかった試験
私が受けたのは、国家の試験2つと、地方の試験3つ(特別区と市役所2つ)です。結果は次のとおりでした。
| 試験 | 結果 |
|---|---|
| 国家一般職 | 最終合格 |
| 財務専門官 | 最終合格(入庁) |
| 特別区 | 最終合格(辞退) |
| 市役所 2つ | 1つは第1次の段階で辞退、1つは落ちた |
| 都庁・県庁・政令市 | 受けていない(横浜市は検討したが、日程がほかの試験と重なるのでやめた) |
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市役所は志望度が低かったのですが、国家一般職・財務専門官・特別区・市役所2つを受ければ、どこかは受かるだろうと思っていました。日程は試験によって違い、特別区や東京都は春、地方上級の第1次は大半が6月の同じ日です。重なりやすい組み合わせは都庁と特別区の日程の記事で書いています。
国家公務員と地方公務員の違い 採用の決まり方
最終合格が採用そのものではない点は、国家も特別区も同じです。違うのは、動き出す時期です。国家は最終合格の発表より前に官庁訪問が始まり、特別区は最終合格のあとに区の提示があります。
| 項目 | 国家(財務専門官・国家一般職) | 特別区 |
|---|---|---|
| 動き出す時期 | 最終合格の発表より前から、官庁訪問や職場訪問が始まる | 最終合格のあと、名簿の高点順に、希望区を考慮して区が提示される |
| 会う相手 | 各官庁の担当者 | 提示された区 |
| 私の場合 | 財務省(一般職)・金融庁・経済産業局・特許庁を回り、財務局の職場訪問は1回で内々定 | 希望区が提示されたが、財務局と国家一般職に受かりそうだったので、区面接は辞退した |
| 結末 | 財務局を選んで入庁 | 辞退 |
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財務局の職場訪問は1回で、聞かれたのは併願先の状況でした。官庁訪問を終えた時点で、財務局が1位でした。経済産業局は倍率が高そう、金融庁と特許庁は忙しそうだと思ったからです。財務局の内々定が出たので、金融庁と経済産業局にはそれ以上行かなくなりました。
官庁訪問と特別区で、いちばん違ったのは、自分から売り込むか、呼ばれるのを待つかというスタンスでした。私が回った官庁訪問は、入りたい省庁に自分で連絡して熱意を伝える、攻めの就活でした。特別区は、最終合格のあとに「この区の面接を受けてください」と提示されるのを待つ、受けの側面が強い選び方です。区は名簿の順番で提示され、辞退するときは、名簿からの削除を申し出る手続きがあります。
専門知識を生かして働きたく、国家志望だったので、財務局が第一志望でした。区から提示の連絡を受けたときは、財務局と国家一般職に受かりそうだったので、区面接は辞退しました。決めるまで1〜2日でした。官庁訪問の流れは官庁訪問の記事に書いています。
区役所の仕事について聞いた話は、ケースワーカー関連がとても多く、生活保護や保険年金の部署を合わせると、職員の3分の1ほどがそうした部署に配属される、というものです。予備校の講師や、説明会に来ていた区の人事担当者が、体感としてそのくらい多いと雑談で話していたことで、公式の数字ではありません。
国家公務員と地方公務員の違いで迷う人へ
国家か地方かを決めるときは、行きたい部門を確かめるのが現実的です。就職先の選び方も、特別区の辞退も、私の場合は専門知識を生かして働けるか、という同じ軸でつながっていました。
地方で働いたことはないので外から見た印象ですが、国の制度や法律など、スケールの大きな仕事がしたいなら国家です。住民と直接関わって、地域を支える実感がほしいなら地方だと思います。
地方公務員になった知人からは、意外と残業があって大変だ、と聞きました。部署によって忙しさが変わる、いわゆる部署ガチャです。これは国家にも言えることです。
長く落ち着いて同じところで働きたい人は公務員が向いている、というのが私の考えです。民間に比べて、競争は少ないと感じます。ただし、部署によって忙しさは違います。迷う人は、職種や自治体の名前より先に、その部門の若手が何をしているかを確かめてください。次に読むなら、特別区の択一と論文の仕組みを書いた特別区の記事がつながります。
私は地方公務員として働いた経験がないので、地方の仕事の中身は書いていません。財務局の話は2017年4月から2018年6月までの経験で、いまの運用と違う可能性があります。転勤と官舎の話は同期から聞いた見聞、区の職員配置の話は予備校の講師や区の人事担当者から聞いた話で、公式の数字ではありません。試験の構成は令和8年度のもので、私が受けた2016年度とは違う部分があります。
職種の数え方は 公務員の職種一覧 府省庁14・出先機関12系統を数えた、特別区の採用は 特別区のボーダーと倍率・択一の選び方、財務局での仕事は 財務専門官の仕事内容と試験 1年3か月で辞めた体験 にまとめています。
試験の構成は、人事院「2026年度 一般職試験(大卒程度試験)受験案内」「2026年度 財務専門官採用試験 受験案内」と、令和8年度特別区Ⅰ類採用試験の受験案内に基づきます。給与の決まり方は、地方公務員法第24条と第26条によります(2026年10月に確認)。年度ごとに変わるため、受験する年の案内で確認してください。
