公務員になるには、参考書より先に決めることが2つあります。どこを受けるかと、何を諦めるかです。出題科目は実施機関ごとにまちまちなので、志望先を決める前に手を広げても、要らない科目が増えるだけです。
公務員になるには、と調べて最初に出てくるのは「試験に合格して面接を受ける」という当たり前の答えです。知りたいのはそこではないと思います。右も左も分からない状態から、何を最初に決めればいいか。
私は大学3年の11月に勉強を始めて、春の試験で財務専門官、特別区、国家一般職に合格しました。最初に決めたのは参考書ではなく、受ける試験そのものです。財務専門官の枠で財務局に入り、1年3か月で辞めた元公務員です。 受験できる年齢の線は団体ごとに違うので、生年月日の線を公務員試験の年齢制限に数えました。
この記事は制度の全体像ではなく、その最初の判断だけを扱います。
この記事でわかること
- 公務員になるには、参考書より先に決めるべきことが2つしかないこと
- 「とりあえず全科目やる」が正解にならない理由
- TOEICは国家総合職に限り15点か25点の加点になり、履歴書に書けるという話とは別物であること
- 行政書士・宅建・簿記のうち、最初の1か月で検討する価値があるのはどれか
- 半年で専門11科目と教養を積むために、教養側で何を削ったか
この記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれています。紹介しているのは私が実際に使った本か、受験案内と出版社の情報で現行版を確認した本だけです。リンクの有無で順番を変えてはいません。
公務員になるには何から手を付けるべきか
参考書ではなく、受験先の実施要項(受験案内)を先に読むことです。公務員になるにはという検索の先には大抵、教養科目の勉強法や面接マナーの解説が並んでいますが、それらはすべて「どこを受けるか」が決まったあとの話です。
勉強を始めたとき、最初にやったのは参考書選びではなく、受けると決めた試験の実施要項を読むことでした。公務員試験の出題科目は大学受験と違って一律ではなく、実施機関によってまちまちです。科目が多いからとにかく手を広げておけ、という通説は半分しか正しくありません。科目が多いのは事実ですが、どの科目が要るかは受験先でまるで違う。志望先を決める前に手を広げても、あとから「その科目は受けない試験だった」と分かるだけです。
先に受ける試験を決めてから、実施要項に書かれている科目に入る。ここは当時からいまも変わりません。手順は単純です。受験先の候補を挙げて、それぞれの受験案内をダウンロードし、配点比率と出題科目を確認する。ここまでやってから、初めて参考書を選びます。制度の全体像そのものは 公務員試験の全体像 2024年改正後の現在地 にまとめてあるので、受験案内を読む前の下地としてはそちらを先に見てください。
受験案内は長く、読み慣れていないと何ページ目に必要な情報があるか分かりません。拾うべきなのは3か所です。試験種目と配点比率の表、専門試験があればその出題科目の一覧、申込から最終合格発表までの日程。この3つさえ拾えば、参考書を何冊買うべきか見当がつきます。逆に、受験者数や倍率の推移は最初の段階では見なくていい。倍率は年によって振れますし、高いからといって対策の中身が変わるわけでもありません。
| 最初に拾う | 後回しにする |
|---|---|
| 試験種目と配点比率 | 受験者数・倍率の推移 |
| 専門試験の出題科目一覧 | 合格者の年齢・出身校の傾向 |
| 申込から最終合格発表までの日程 | 予備校が公表する予想合格ライン |
受験案内は何校ぶん読めばいいか
残り時間で答えが変わります。3か月しかないなら、併願先を絞ってでも受験案内を読み切ることです。
残り3か月しかないなら
- 併願先を絞ってでも受験案内を読み切る
- 時間がない人ほど、受験案内を広く読み比べる余裕から先に失われる
残り時間で読み方の戦略が変わる
半年あるなら
- 専門科目のある試験の出題科目を並べ、共通して出る科目(憲法・行政法・民法・ミクロ・マクロなど)を探す
- 憲法、民法①②、行政法、ミクロ、マクロ、経営学、財政学、社会学、政治学、行政学の11科目をそろえれば併願に悩まない
配点は違うが範囲は重なる。これは複数の受験案内を並べて初めて見えます。1校で決め打ちせず、かといって手当たり次第にも広げない。その両端を避ける読み方をおすすめします。
私が最初の1か月で決めなかったこと
決めなかったのは、勉強時間の総量を積み上げることです。
公務員試験は一般に半年・800時間と言われます。ただ、この数字の出どころは公式にはありません。人事院も各人事委員会も、必要な学習時間を公表していない。法学部出身か理系出身かでも立ち上がりはまったく違います。総量を目標にすると、そこに届かないまま試験日が来たときに、実際の得点と関係なく準備不足だったと感じます。合否を分けるのは当日の得点だけです。
決めなかったこと
- 勉強時間の総量を積み上げること(半年・800時間という数字を目標にすること)
- 予備校に通うか独学かという選択
最初の1か月に決めるのは、どこを受けるかだけ
代わりに決めたこと
- 専門11科目と論文は削らない
- 教養の知識科目は範囲を絞る
論文を削らなかったのは、足切りに引っかかれば元も子もないからです。予備校か独学かは、独学のほうが優れているという話ではありません。予備校のカリキュラムには、受験案内を読み込む手間を代行してくれるという価値があります。最初の1か月に決めるべきなのは独学か予備校かではなく、どこを受けるかのほうです。
そのうえで予備校を検討するなら、公務員試験の予備校に通うべきかに費用と判断材料をまとめています。
受ける場所を先に決める必要がある
公務員になるにはという問いに対する答えは、実は受験先によって分かれます。国家系、都庁、特別区、政令市、市役所ではそれぞれ実施主体が違い、出題科目も配点も別物だからです。
大きな分かれ目は、専門科目があるかどうかです。国家一般職、国税専門官、財務専門官、都庁、特別区のように専門試験を課す試験と、多くの市役所のように教養試験、論文試験、面接試験だけの試験があります。
専門科目のない試験は出題範囲がほぼ共通しているので、志望先を1つに絞らなくても対策を使い回せます。専門科目のある試験は組み合わせが試験ごとに違うので、先に候補を絞るほど無駄が減ります。
専門科目の中身そのものは、国家一般職も財務専門官も憲法・行政法・民法・ミクロ経済学・マクロ経済学あたりが共通して出てきます。この重なりの数え方は 専門科目は11科目に収束する で扱っています。ここでは「重なりがある」という事実だけ押さえておけば十分です。
もう1つ決めておきたいのが、専門科目のない試験だけを受けるのか、専門科目のある試験も併願するのかという選択です。前者だけなら、対策する範囲は教養試験・論文・面接・適性検査のいずれかに絞られます。後者を含めるなら、専門科目の選び方が加わります。この分岐を最初の1か月で決めておくと、2か月目以降に買う参考書の数が変わります。
国家総合職を例に、受験案内のどこを見るかを書きます。総合職は第1次に基礎能力試験(2/15)、専門試験の多肢選択式(3/15)、専門試験の記述式(5/15)。第2次に政策論文試験(2/15)と人物試験(3/15)があります。
配点だけを見ると、専門記述の5/15が全種目でいちばん重い。基礎能力試験はわずか2/15です。
ここを最初に押さえておくと、教養科目をまんべんなく仕上げるという一般的な進め方が、総合職には当てはまらないと分かります。志望先を1つ決めるだけで見える情報で、参考書を読んでも出てきません。一般職や国税専門官のように専門試験の多肢選択式が配点の中心になる試験では、逆に基礎能力試験の比重がもう少し上がります。同じ「公務員試験」という言葉でくくられていても、配点構造が違えば最初に着手する科目の順番も変わります。この違いに気づくために必要なのは、参考書ではなく受験案内の配点比率の表1枚です。
人事院「2026年度 国家公務員採用総合職試験(春)受験案内」5〜6ページ。総合職受験案内PDF
試験区分ごとの出題科目・配点は人事院「2026年度 一般職試験(大卒程度)受験案内」5ページ、「国税専門官採用試験受験案内」3ページによる。一般職受験案内PDF
資格は追い風にも遠回りにもなる
結論から言うと、行政書士・宅建・簿記・TOEICのうち、最初の1か月で検討する価値があるのはTOEICだけです。理由は加点の仕組みが公式に定まっているからで、他の3つは公務員試験の得点に直接つながりません。
TOEICはとりあえず点数を持っていれば履歴書に書ける、という理解をよく見ます。私も受験した当時はそう思っていました。現行制度とはずれています。国家公務員採用総合職試験では、TOEFL iBT、TOEIC L&R公開テスト、IELTS、実用英語技能検定のスコアに応じて、総得点に加点される仕組みが明確に定められています。
| 対象試験 | 加点の対象 | 加点 |
|---|---|---|
| 国家公務員採用総合職試験 | TOEFL iBT/TOEIC L&R公開テスト/IELTS/実用英語技能検定のスコアに応じて | 総得点に15点または25点 |
この加点は、公表されている範囲では国家総合職に限った制度です。一般職や地方公務員の試験でTOEICが同じように加点対象になっているかどうかは、志望先ごとの受験案内を見ないと分かりません。ここは調べきれていないので、分かったふりはしません。総合職を受けるなら加点は確実に得点に反映される事実として押さえておき、それ以外の試験を受けるなら志望先の受験案内で個別に確認してください。
人事院「2026年度 国家公務員採用総合職試験(春)受験案内」5〜6ページ。総合職受験案内PDF
行政書士・宅建・簿記はどれも公務員試験の得点そのものには加算されません。それでも検討に値する場面はあります。行政書士は憲法・民法・行政法の出題範囲が公務員試験と重なるため、専門科目の理解度を測る副教材として使えます。ただし試験日が受験本番と近い年もあるので、日程だけは先に確認してください。簿記は財務省・金融庁・国税局など、会計知識を使う機関を志望する場合に業務理解として役立ちますが、これも得点には直結しません。宅建は公務員試験の出題科目との重なりが薄く、最初の1か月で検討する優先度は高くありません。
このあたりの資格は、勉強のモチベーション維持や、落ちて浪人になった場合の保険として語られることが多いのですが、保険として資格を取る判断は、公務員試験の勉強が軌道に乗ってから考えれば十分です。最初の1か月にやることではありません。
| 資格 | 得点への影響 | 最初の1か月での優先度 |
|---|---|---|
| TOEIC(総合職志望) | 総得点に15点または25点加算 | 高い |
| 行政書士 | 加算なし。出題範囲が一部重なる副教材 | 低い |
| 簿記 | 加算なし。会計系機関の業務理解に役立つのみ | 低い |
| 宅建 | 加算なし。出題範囲の重なりも薄い | ほぼ不要 |
私は簿記も行政書士も受けていません。専門11科目と教養を半年で積むあいだ、資格に割ける時間がなかったからです。簿記2級を取ったのは合格後、4年の秋でした。
資格を取っておけば安心、という考え方そのものは否定しません。ただ、最初の1か月にその安心を買いに行くのは遠回りに見えます。
面接対策の窓口をどう選ぶか
大学生であれば大学のキャリアセンターが使えますが、既卒や社会人はそれができません。この場合の選択肢の1つが、東京しごとセンターのような都道府県設置の就業支援施設です。
東京しごとセンター(ヤングコーナー)は、公務員の面接対策として使える窓口です。公務員の面接試験に対応したセミナーが開かれていて、求職者ひとりひとりに無料のアドバイザーがつき、模擬面接や面接カードの相談もアドバイザー以外の枠で受けられます。登録制で、登録に多少の期間がかかるので、使うつもりなら早めに登録しておいたほうがいい。
ただし、ここは正直に書きます。この記事を書いている時点で、公務員志望者向けの模擬面接講座がいまも同じ頻度で開催されているかどうかまでは確認できていません。確認できないことを確認できたことのように書くと、かえって遠回りをさせてしまうので、ここでは「窓口としての選択肢がある、内容は志望者本人が直接確認してほしい」というところまでしか書きません。
大学のキャリアセンターも既卒者向け窓口も使えない場合は、家族や友人を相手にした模擬面接でも、面接カードを書いて第三者に読んでもらうだけでも、対策としての効果はあります。窓口の名前より、誰かに聞いてもらう機会を作れるかどうかのほうが本質です。
面接対策そのものの進め方、集団討論や個別面接の形式ごとの違いは、この記事の範囲を超えるので扱いません。窓口が決まったあとにやることは別の話です。
過去問に触れる時期を前に倒した
変えたのは順番です。教科書やレジュメを読み終えてから過去問に入るのではなく、早い段階で過去問に触れるようにしました。
公務員試験は毎年の問題作成者が大きくは入れ替わらないので、出題の傾向が偏りやすい。試験委員の変更が少ない、数年ぶりに復帰した、といった継続性が傾向の安定につながっている、という分析を当時から見ていました。
傾向が安定しているなら、いちばん効くのは過去問です。ただし知識がまったくない状態で解いても意味がない。解ける程度の基礎を入れてから過去問に移る。この境目をどこに引くかが、実際の作業でした。
専門科目は逆に、絞らずに11科目そろえました。解答するのは8科目でも、当日どこかで手が出ない出題に当たったときに逃げ場が要ります。教材はスー過去1冊を回数で回して、教材そのものは増やしていません。
専門試験の行政区分が16科目から8科目を選ぶ構造であることは、いまも変わっていません。受験先が決まったあとの科目ごとの進め方や日々の配分は、スケジュールの組み方 で扱っています。
何を諦めるかも決めることになる
最初の1か月で決めるのは、何をやるかだけではありません。何をやらないかも同じ比重で決めることになります。
削ったもの(教養の知識科目)
- 歴史は範囲を絞る。日本史は江戸以降、世界史は大航海時代以降(出題の7割程度をカバー)
- 自然科学は大学入試向けの基礎本1冊で導入だけ、深追いしない
専門と教養で削る基準が違う
削らなかったもの(専門科目)
- 専門を削ると併願先そのものが減るので、最後まで削らない
広く網羅するのは、安心材料に見えて、1分野あたりにかけられる時間を薄める判断でもあります。範囲を絞って過去問を繰り返すほうが、範囲を広げて1周しかできないより手応えがありました。削ると可能性が狭まるから怖い、という感覚は分かります。ただ、私が削ったのは専門ではなく教養の知識側です。
手をつける順番
参考書より先に読むもの。専門科目の有無、配点比率、出題科目の3点だけ拾えば十分
受けないなら教養・論文・面接・適性検査に絞れる。受けるなら共通して出る科目から着手する
加点が確実に効くのは総合職。それ以外の資格は保険として、勉強が軌道に乗ってから考える
参考書を1冊ずつ仕上げる正攻法ではなく、基礎を薄く入れてすぐ過去問に移る。時間がないなら削るのが前提
公務員になるには。この問いに対して出せる答えは、勉強量でも参考書の選び方でもなく、受験先を決める順番と、何を諦めるかでした。制度が変わっても、ここは変わらないと思います。
扱わなかったことも書いておきます。科目ごとの勉強法、論文の書き方、面接での受け答え、そして地方公務員全体でSPIがどこまで広がっているかという全国規模の話は、ここには入れていません。
最後の点は、政令指定都市20市を自分で数えた数字はあっても、全国約1,700自治体まで広げられる根拠を持っていないからです。分からないものは分からないまま書きます。
最初の1か月に必要なのは、これを全部知ることではありません。まず受験先を決める。その1つだけです。
制度の全体像は 公務員試験の全体像 2024年改正後の現在地、専門科目の選び方は 専門科目は11科目に収束する にまとめています。受験先が決まったあとの短期間の進め方は 短期合格のスケジュールの組み方 を参照してください。
この記事の制度に関する数値は2026年度(令和8年度)時点の公表情報に基づきます。2027年度(令和9年度)の日程・制度は改めて公表されるため、出願前には必ず各実施機関の受験案内で確認してください。
掲載内容のうち制度部分は人事院の公表資料に基づき、体験部分は個人の受験経験に基づくものであり、合格を保証するものではありません。
